作品タイトル不明
武田家が館林城に到着すると
天正二十一年(1593年)四月二十日
上野国 館林城
「北条助五郎殿!そして六三郎殿!先程、説明させていただきました事情により、我々武田家一同、高代様の護衛を兼ねて、館林城に移動する事になりました!」
「その様な事が鉢形城で起きていたとはのう。まあ、知らない儂がとやかく言わぬ方が良いな。先ずは、良くぞ来てくれた!礼を申す!」
皆さんおはようございます。館林城に虎次郎くん率いる武田家が高代と共の人達を連れて来た事に驚いております柴田六三郎です。しかも、連れて来た理由が
「阿呆の織田信雄が高代を襲おうとしたから、安全の為に俺の居る館林城に移動させた」と言うわけなのですが、いやいや待て待て!
前世で見た歴史小説や、歴史系コメディ映画でも、織田信雄は阿呆な感じで描かれていたけど、まさか大友宗麟と同じく、「家臣の嫁に手を出す」をやろうとしたとは、どれだけ見境無しと言うか、節操無しと言うか
とりあえず、挨拶が終わったら高代さんの所に行って、申し訳ないと頭を下げよう。それが良いな。でも今は虎次郎くん達にお礼を言おう
「虎次郎殿。儂が高代の側に居なかったから、この様な事になった。誠に申し訳ない」
俺の言葉に虎次郎くんは
「いえ!六三郎殿は一切悪くありませぬ!悪いのは全て織田三介にございます!なんなんですか、あの男は!誠に、内府様と同じ右府様の息子なのですか!?
まったくもって、信じられませぬ!そもそも、此度の織田家の出陣も右府様が軍勢を率いておれば、この様な愚行もなかったと思われます!
なのに、右府様は何を考えておられるのですか!?六三郎殿、教えてくだされ!」
とても、怒り狂っています。でも、虎次郎くん以上に怒り心頭なのが、
「六三郎殿。拙者も御館様と同様に、いえ、それ以上に織田三介を叩きのめしたい所にございます!雪の出産を助けてくれて、子育ての手伝いもしてくれた高代殿に手を出そうとした、あの阿呆を絶対に許せませぬ!」
五郎さんでした。この時代、出産は未来以上に命懸けだから、出産を助けてくれる人は神様の様に見えるんだろうな。それは俺も同じだ。高代さんは道乃、雷花、花江の出産を助けてくれた恩人だからな
確かに、あの阿呆に憎悪を持つなと言うのは無理だが、せめて抑えてもらおう
「虎次郎殿、そして仁科様。お気持ちは分かります。これは推測になりますが、恐らく此度織田家からの援軍に三介殿を組み込んだのは、大殿の命令でしょう
それこそ、兄君の殿は、大殿から引き継いだ天下統一事業をより、盤石にする為に日々働いております。三介殿の弟の三七様は、
伊勢国と伊賀国を中心に、海道と畿内に目を光らせ、更に三七様の弟の源三郎様は讃岐国から四国と中国地方を見ております
その源三郎様から下の弟君達も、そろそろ元服して、補佐をつけながら、半国ないし四分の一国の統治を命じられるでしょう
そんな中で唯一、元服しておきながら、これといった働きの無い三介殿に武功を挙げさせる為に、三十郎様の軍勢に組み込んだのかと。つまりは、大殿の親心でしょう」
俺の推測に虎次郎くんと五郎さんは
「親心と言われては」
「御館様の父である四郎兄上に、父上は同じ様な事をしておったから、理解は出来ますが」
半分、いや少しくらい憎悪が減った様な気がする言葉が出る。もう一押しかな
「虎次郎殿、仁科様。恐らく、此度の戦で三介殿が武功を挙げた場合、大殿は勿論ですが、
殿も三介殿を拙者からも武田家からも、遠い位置の国に幾許かの領地を与えるでしょう。
そうなれば、織田家の天下統一後は数年に一度、顔を合わせるかどうかになるでしょうから、なんとか抑えてくれませぬか?この通り!」
俺の説得と平伏のセットに虎次郎くんと五郎さんは
「六三郎殿が、そう仰るのであれば」
「それに、我々の為に頭を下げてくれたのですから」
なんとか、落ち着いてくれました
「忝い!それでは、拙者は高代の元へ行ってくるので、助五郎殿、武田家のお二人を知る為、色々と話し合ってみてくだされ。それでは失礼します」
六三郎はそう言うと、急いで大広間を出た。残った助五郎、虎次郎、五郎のうち、最初に会話の口火を切ったのは
「それでは改めて自己紹介と行きましょう。この上州館林城の城主を務めておる北条助五郎じゃが、武田家当主の虎次郎殿、そして傅役の仁科五郎殿だったな
話せる範囲で、何故六三郎殿の事をそれほど慕っておるのか、教えてくだされ」
助五郎だった。助五郎から、「武田家は何故、六三郎をとても慕っているのか?」と質問されると虎次郎から
「助五郎殿、とても長い話になります。それでもよろしいでしょうか?」
確認されると、
「ならば、飯でも食いながら聞くとしよう!六三郎殿が、広めてくれた大広間の襖を全て開けて、大人数で食べる食事を武田家のお二人も経験済みじゃろう?その席で、色々と教えてくだされ」
助五郎から、「飯を食いながら聞く」と言われて、少し遅い朝食の準備に入った
館林城がそんな感じで慌ただしくなっている頃、進軍中の上杉家で動きがあった
同日昼
越後国 某所
「平八よ、先程、進軍の道のりを変更しようと言っておったな?どの様に変更するのじゃ?土屋殿が通って来た信濃国を通る道ではないとしたら、何処が良い?」
この日の昼頃、鉢形城を目指していた上杉軍の中から兼続が進軍ルートを変更しようと提案していた。その兼続に景勝から、何処を通るのか?と聞くと兼続は
「殿。そして各々方。土屋殿の通った信濃国経由の道ならば、謀反の首謀者の松田とやらの軍勢とぶつかる事は無いでしょう
ですが、それでは到着が遅くなります!なので、松田とやらの軍勢とぶつかる可能性はありますが、早く関東に入る為に、三国峠を進みましょう!
この三国峠、上杉家の御先代の不識庵様の頃から、越後国と上野国、更には信濃国と陸奥国南部を結ぶ要衝として、上杉家と北条家が戦っておりました!
松田とやらが、その頃から北条家に仕えているのであれば、その事を知っているでしょうが、遅かれ早かれぶつかるのですから、三国峠に松田の軍勢が居た場合は、一万以上の大軍になる前に叩きましょう
居ない場合は、そのまま進みましょう!その方が速く関東に入れます!殿!御決断を!」
早く関東に入るべき理由、そしてメリットとデメリットを景勝に伝えていた。兼続の言葉に景勝は
「分かった!我々、上杉軍一万二千は三国峠を進む!土屋殿!誠に済まぬが、そう言う事に決まったので」
三国峠を進む決断をくだす。そして、一応、銀次郎にフォロー的な言葉をかけると、銀次郎は
「越後守様!拙者は一日も早く、殿の元へ戻りたいのですから、危険は承知の上ですし、越後守様が御決断なされたのであれば、ついていくのみです!」
「早く到着したいから問題無い」と伝えて、了承する。銀次郎の言葉を聞いて景勝は
「忝い。それでは皆!三国峠を通る道のりで進軍再開じゃあ!」
「「「「おおお!」」」」
三国峠を進む号令を発して、進軍を再開させた。