作品タイトル不明
風魔衆は行動範囲がとてつもなく広い
天正二十一年(1593年)一月十日
武蔵国 某所
鉢形城で比左が三つ子を出産してから、およそ1ヶ月、風魔衆は頭領の小太郎を中心に
幻庵からの命令の、「松田の手の者を殺せ」を、鉢形城から小田原城へ続く、主要な道で遂行し終えていた
仕事を終えた小太郎は
「さて、これで松田の手の者達は全員殺したと見て良いかのう!まったく、柴田殿に言われたとは言え、幻庵様も人使いが荒いというか、だが、分からんでもない
柴田殿は、幻庵様を通じて、我々風魔衆が中心となって松田達をかき回せと言っておるのだからな、
だが、その様に求められるなど初めてじゃ!いつもは、敵の武器庫や食糧庫を焼くなどの裏方仕事ばかりであったが、此度の様に表に出て働く事
時々はやっても良いかもしれぬな!まあ、我々が目立つ事はあまり良くないから、その回数は少ない方が良いが」
そんな事を、思わず呟いていた。そんな小太郎に配下の1人が
「しかし、頭。柴田様の家臣で越後国に行った土屋殿と、出羽国に行った原殿にそれぞれ護衛をつけましたけど、
あの二人は特に健脚でしたから、護衛についた奴らは、置いて行かれているんじゃないかと思うんですが」
銀次郎と新左衛門が体力バカ過ぎて、護衛の風魔衆が置いて行かれてないかと心配する。しかし、小太郎は
「まあ、確かに。それは不安じゃが、あの二人も柴田殿の目的を果たす為に、護衛は必要であると分かっているはずじゃ。流石に置いて行く事はしない、はず」
銀次郎と新左衛門が脳筋過ぎて、護衛の風魔衆を置いて行く可能性を否定出来ない。それ以上に
「二人の護衛につけた者達以上に、松田の側に潜入させた、弟の小次郎の方が心配じゃ!五千の軍勢相手に、どれだけ撹乱出来るのか」
松田の軍勢に潜入させている弟の小次郎の事を心配していた
そんな小太郎の心配のひとつである、銀次郎と新左衛門の護衛のうち、少しだけ距離の近い越後国へ向かっていた銀次郎達はと言うと
天正二十一年(1593年)一月二十日
越後国 某所
「ほれ!風間家の方々!遅くとも、今月には信濃国から越後国へ入りたいのじゃから、その様に疲れ果てていたら、松田との戦に参加出来ませぬぞ!?」
「つ、土屋殿。もう少し、遅くとも」
銀次郎達は、小太郎の心配どおり護衛の風魔衆が疲れ果てていたが、そんな風魔衆に対して銀次郎は
「ええい、仕方ないですな!それでは、一刻の休息を取りましょう!」
風魔衆の要望を受けて、休息を取る事にした。銀次郎達は、信濃国ルートから入ったので、上杉家の屋敷には比較的近い位置にいる
そんな銀次郎達とは逆に、出羽国を目指していた新左衛門達は
天正二十一年(1593年)二月一日
越後国 某所
「風間家の方々!このままでは、松田との戦に、間に合わないですぞ!急いでくだされ!」
「は、原殿、もう少し、進みやすい道を行きませぬか?」
新左衛門達も、小太郎の心配どおり、護衛の風魔衆が疲れ果てていた。しかし、新左衛門は
「あと一里進んだら、休息を取る!そこまで頑張ってくだされ!」
風魔衆達に休む場所を伝えて、そこまで頑張らせるスパルタで、最上家の屋敷を目指していた
まだまだ到着に時間がかかりそうだが、それでもしっかり進んでいた
天正二十一年(1593年)二月二日
上野国 某所
銀次郎と新左衛門がそんな状況の中、小太郎の弟の小次郎は、松田の軍勢の中で苦悩していた
(幻庵様と兄上。五千の軍勢を口だけで足止めしたり、館林城から遠ざけるなど、そう簡単に出来るとは思えぬのですが?しかも、儂ひとりで実行しろとは、
無茶苦茶過ぎませぬか?それこそ、他の風魔衆も援軍に寄越して欲しいですぞ!)
内心は、「1人でこの策は無理だよ!」と言う気持ちだった。そんな状況ではあるが、どうにか松田の手の者を撹乱させようとする気概は失っていなかった
何処も彼処も、戦況を一変させるだけの働きをまだ出来なかった。そんな中で、小田原城へ三十郎率いる織田家の軍勢が到着する
天正二十一年(1593年)二月十日
相模国 小田原城
「北条相模守殿。此度、織田内府様及び織田右府様の名代として、参戦させていただきます織田従五位下尾張守三十郎にございます!そして、隣に居るのは、
右府様の次男であり、内府様の弟の織田三介にございます。三介、挨拶を」
「織田三介にございます」
「北条相模守じゃ。二人共、此度の出陣、誠に感謝しますぞ!」
氏政は2人に挨拶を返して、早速本題に入る
「さて、早速じゃが。本題に入るとしよう。此度の謀反の首謀者である松田左衛門佐じゃが、現在のところ上野国北部の征圧地域を広がる為に、進軍しておる
上野国北部に居るうちに討ち取る事が出来たのであれば、北条家の問題で終わりになるのじゃが、南部に進まれたら、武田家の領地に北条家の謀反人が入った事になり、
武田家に迷惑をかけてしまう。既に徳川家も出陣しているから、松田の軍勢との差は無いはずじゃか
それでも不安は尽きぬ!織田家には既に、柴田殿にとても世話になっておるのに、申し訳ない!」
氏政の言葉に、三十郎が反応して
「相模守殿。六三郎はどの様な事をやったのですか?」
六三郎のやった事を質問すると、氏政は
「あの若武者はとんでもない事をしてくれた!」
そう言いながら、笑顔になって、鉢形城からの文を見せていく。