作品タイトル不明
走って走って走りまくる為に
「それでは、出立するとしましょう!」
「「「ははっ!」」」
六三郎達は出立の時間になったので、移動を開始した。季節は秋だった事もあり、六三郎、源次郎、銀次郎、新左衛門の4人は順調に走っていた
ペースにして、1キロ4分ほどだが、六三郎達からしたら、休みを挟みながら走って、1日で8時間を走りに費やして30キロを目安という、
中国超大返しに比べると楽なペースを取っていた。だが、そのペースはあくまでも「六三郎達にとって」楽なペースであった為、風魔衆の面々はというと
「お主達!距離が離れ過ぎじゃ!それでは護衛の意味が無いではないか!」
風魔衆の頭領、風魔小太郎が叱責する程、六三郎達とは大きな差が開いていた。そもそも風魔衆50人の面々のうち、
走りに自信があると参加したのは、小太郎含めて20人だったのだが、六三郎達のペースに着いていけたのは、
僅かに5人だけで、残りの15人はなんとか差を10メートル以上離されない様に着いていくのがやっとだった
こうして、1日目の走りを終えて、野営で休む事に決めたが、小太郎は遅れて来た面々に対し
「自信満々に走り抜けると言っておきながら、何じゃ!このザマは!柴田様達が最期の方で、走る速度を落としてくださったから、離れていた距離が縮まったのだぞ!明日は気合いを入れて走れ!良いな?」
部下の風魔衆を叱責していた。その様子を見ていた六三郎は
(やっぱり、この時代の人は家臣が不甲斐ないと感じたら、叱責するんだな。それを踏まえると、俺が赤備えの皆を叱責した記憶は無いな。まあ、皆が叱責される様な事をしてないからだろうけど、
改めて、柴田家が異質な家だと分かるなあ。ただ、風間家の家臣の皆さん、足がプルプルしてるし、明日の出発に響いたら嫌だし、とりあえず風間殿を止めて、あれをやろう!)
また、何かやろうと決めた様だった。そして、
「まあまあ、風間殿。拙者の家臣達も最初は、その様になっておりましたから」
小太郎に実績を止める様に声をかける。かけられた小太郎は
「柴田様がそう仰るのであれば。お主達、柴田様に感謝せよ!」
「「「柴田様!ありがとうございます!」」」
風魔衆への叱責を止める。風魔衆も六三郎へ感謝を述べる。こうして小太郎達のやり取りが終わると六三郎は
「それでは、家臣の皆様。誰か1人、この布の上にうつ伏せになってもらえませぬか?少しばかり、やりたい事がありますので」
そう言って、風魔衆にうつ伏せになる様に頼む。すると、
「では、拙者が」
少しばかりガタイの良い風魔衆の若者がうつ伏せになる。すると、六三郎は
「それでは、少し身体を揉みほぐしますぞ!」
言うと同時に、脹脛を揉みだす。それを見た小太郎は
「し、柴田様!その様な事をするなど!」
慌てて止めようとしたが、六三郎は
「風間殿。我々は、1日も早く甲斐国へ到着したいのです。そして、その為に必要な人間は1人でも多い方が良いのですから!
その為に疲労を抜く為の按摩をやるくらいは、大した事ではありませぬ!これをやって、無事に走り切れるのであれば、喜んでやりましょう」
「明日も走ってもらう為に必要な事だから」と言いながら、脹脛と太腿を徹底的に揉みほぐす。六三郎の腕が余程素晴らしいのか、疲れていたからなのか、風魔衆の若者は
「ぐお〜!ぐお〜!」
大イビキをかいて寝ていた。部下の醜態に小太郎は
「寝るな!」
叫びながら、拳骨を落とす。拳骨の衝撃で目覚めた若者は
「はっ!?も、もう夜が明けたのですか?出立の準備を」
日付が変わったと思うほど、寝ぼけていた。そんな若者に小太郎は
「たわけ!お主が柴田様から按摩を受けてから、半刻も過ぎておらぬぞ!」
再び、叱責し始めた。それを見た六三郎は
「風間殿。叱責は、後にしてくだされ。拙者は明日以降も走り抜く為に、必要な事だと言いましたぞ?
叱責する体力があるのであれば、少しでも家臣の方の疲労を少しでも取る事を優先してくだされ」
「余計な事をやるなら、明日も走る為に休ませてやれ!」と圧を出しながら、遠回しに小太郎に伝える。
その圧を察した小太郎は
「わ、分かりました。家臣達それぞれに按摩をやらせて、明日以降も走れる様にします」
部下達に対して、マッサージをやらせる様に決めた。それを聞いた六三郎は
「それならば、よろしくお願いします」
圧を消して笑顔になる
部下達にマッサージをやらせながら、そんな六三郎を見た小太郎は
(儂の配下の者に仏の様な優しさを見せたかと思えば、目的の遂行を邪魔する形になった儂に対して、一瞬だけとはいえ、鬼の様な圧を見せて来た
それでいて、目的は忘れていない。熱くなる事はあれど、冷静沈着である。まるで若い頃から戦場を渡り歩いた老将の様ではないか
やはり、柴田殿は面白い!これは、相模守様が婚姻で縁を結びたいと思われる気持ちも今なら少しは、分かるかもしれぬ!
今はまだ若武者だが、二十年後、新次郎様が北条家当主になった時、柴田殿の姫君を新次郎様の嫁に求めておるのじゃろうな
おっと、今はそれよりも松田の阿呆を討伐する為に武田家に向かう事に集中せねば。しかし、この按摩はとても心地良い)
六三郎の為人を面白がり、北条家の未来を予想しながら、マッサージを堪能していた。