作品タイトル不明
ワインのせいで安土城が混乱した結果
天正十九年(1591年)七月二十五日
近江国 安土城
「殿!北条左京大夫様と相模守様からの文でございます!」
「ほう。北条親子からか。同盟締結に関する事かのう?父上を呼んで連れて来てくれ!」
「ははっ!」
六三郎が北条家へワインを贈呈してから2ヶ月半後、北条家から信忠と信長へ文が届いた。信忠は、信長にも知らせておく必要があると判断して、家臣に連れて来る様、命令すると
「勘九郎!北条からの文が届いたそうじゃな!どの様な内容じゃ?」
かなり早く信長が到着した。到着早々に、信長は文の内容を聞くが、
「今から読みますので、お待ちくだされ」
信忠は信長を待たせる。信長も
「仕方ない。少しばかり待つとしよう」
大人しく待つ。そして、
「それでは読みます。「織田内府殿、そして右府殿。北条左京大夫と北条相模守にございます。先ず、拙者左京大夫から同盟締結に関しまして、誠に感謝しております
我が子、新次郎の行ないを誰の首も取らずに、領地の一部を割譲するだけで済ませていただき、改めて感謝しかありませぬ
話は変わりますが、五月の上旬に甲斐国で働いております柴田播磨守殿から、同盟締結の祝いの品として。南蛮人が好んで飲むワインを十樽、受け取りましたが、
前年に安土城でいただいたワインよりも、別格のワインでした。柴田殿曰く、「約二年熟成させた物で、現在日の本に出回っているワインの中で最上の物」との事です
その様なワインを、同盟締結の祝いの品として贈呈していただき、誠にありがとうございます
ここからは、父の相模守に変わります。織田内府殿、そして右府殿。北条左京大夫の父の北条相模守にございます
ワインの件は、倅が感謝の意を示しましたが、拙者からも、誠にありがとうございます。それでは本題に入りますが、
前年の師走に倅が孫の新次郎を武田家の屋敷に迎えに行った際、武田家当主の虎次郎殿から
柴田播磨守殿のお父上が、還暦を超えてから子をもうけたと教えてもらいましたが、その事で、拙者の弟達の中で、
まだ嫡男が産まれていない者が居ますので、弟達に今から嫡男が産まれる様に、
指導役として、柴田殿を派遣していただけないでしょうか?弟達に嫡男が産まれて無事に育てば、北条家の内部も落ち着くと思います
どうか、前向きに考えてくだされ」と、ありますが、父上?」
信忠が読み終えると、信長は不満そうな顔になっていた。その理由は
「勘九郎!今から甲斐国へ行って、六三郎を叱責してくる!何故に、儂や勘九郎よりも先に日の本で最上のワインを北条に呑ませておるのか、問いたださないといかぬ!」
現在の日の本で最上のワインを自分ではなく、北条家に先に呑ませた事に不満を覚えていたからだった
そんな信長に信忠は
「父上。そうは言っても、父上が武田家へ書いた文が届くのは、卯月の終わり頃ですし、その頃余っているワイン樽は、一昨年に仕込んだ物しかないのも当然と思います。
それに、思い返してくだされ。北条家からの文には、「約二年熟成された」と書いてあります
それは、今年の冬には完全な二年熟成のワインが甲斐国から届けられるという事ですから!
それを待ちましょう!それに、現在六三郎は桃を使った新たな酒作りに挑戦していると、玄蕃が言っていたではありませぬか!
その新たな酒作りを、相模守殿の弟達の城や屋敷でもやらせたら、完成する可能性も高いでしょう!なので、北条家へ恩を売って、更に働いてもらう事を落とし所としましょう!
とりあえず、六三郎には一昨年に仕込んだワインは、織田家からの贈答品と堺で販売する為に使うから、それ以外は門外不出にする様に文を出しますので、どうか、落ち着いてくだされ、父上」
今後の展望を話して、2年熟成ワインが手に入る手立てを取る事を伝えると
「分かった。それで、とりあえずは甲斐国へ行く事はやめよう。それでは、六三郎を相模守の弟達の元へ行かせると決まったのであれば、一日も早く行かせようではないか。勘九郎、北条家と武田家と六三郎への文を」
何とか落ち着いて、信忠に文を書く様、促す。信忠も
「ははっ!すぐに書きます!」
すぐに筆を取り、文を書き出す。こうして、完成した文は、その日のうちに出立した家臣の頑張りで、かなり早く目的地へ届き、
天正十九年(1591年)九月十五日
相模国 小田原城
「父上!織田内府殿と右府殿、両名から柴田殿を派遣しても良いとの文が届きましたぞ!」
「これで、なんとか源三に男児が産まれたならば、北条家は安泰じゃ!柴田殿には頑張ってもらおう!そして、我々は甲斐国の復興を全力で助けよう」
北条家は盛り上がり
天正十九年(1591年)九月二十五日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「桃を使った酒作りが最終段階に入っているこの時期に、六三郎殿が甲斐国を離れるのは辛いが、内府様と右府様の両名からの命令とあれば、仕方ないか」
「せめて北条も数年、待ってくれたなら」
「六三郎殿、出来るかぎり早く、事を成し遂げてくだされ」
武田家は暗く盛り下がり、当人の六三郎は
「まあまあ、行く場所でも酒作りをする様に。との事ですから、何とか同時進行め頑張りたいと思います」
明るく振る舞ったが、
(チクショー!やっぱり、殿と大殿の悪ノリが出たじゃないか!しかも、今度は「嫡男を!」なんて、同時クエストだけじゃなく、酒作りもやる、トリプルクエストじゃないか!
こうなったら、北条氏政の弟達が泣き言を言っても、妊活に集中してもらおう!もしも、邪魔してくる大バカ野郎が居たら、北条家の全軍を使ってもらって、
その大バカ野郎を討ち取ってもらおう!俺は早く実家に帰って、ゆっくりしたいんだー!)
内心、3つも同時進行で仕事を進めないといけない事にやる気と嫌気が喧嘩していた。