作品タイトル不明
織田家と徳川家の緊急評定の結果は
天正十七年(1589年)十月二十八日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「それでは、虎次郎様。拙者の家臣に文とワインの樽を預けて、安土城へ運ばせます。此度はかなりの重荷です。年内に到着したら早いと思ってくだされ」
「それは勿論!ワインの樽は小さめとはいえ、五樽もありますから、遅くなるのは仕方ないです。それでは出立させてくだされ」
皆さんおはようございます。前日のクソガキが北条家の次男で、更に家康の外孫という事で、俺も武田家も対処出来ないので、殿と大殿に丸投げしようと決めた柴田六三郎です
はっきり言って、こんな面倒くさい事この上無い案件、柴田家の領地だったら、「体力が有り余っているからこんな事をやるんだろう。走って頭の中を空にして来い!と出来ますが、
流石に、武田家の領地でそれは出来ませんから、殿や大殿に丸投げしか出来ません。家臣も出立したので、
それでは農作業に行って来ましょう
六三郎が信長と信忠へ丸投げした文とワイン樽が届いたのは、年明けだった
天正十八年(1590年)一月五日
近江国 安土城
「殿!甲斐国で働いております柴田様より文と、何やら樽が届けられました!」
「ほう。六三郎からか。文は何かしらの報告で間違いないと思うが、樽とは何じゃろうな?とりあえず父上と母上と松を呼んでまいれ!そして、樽も一つ持って来い!」
「ははっ!」
六三郎からの文とワイン樽が届いた報告を受けた信忠は、信長と帰蝶と松姫を連れてくる様、命令した。それと同時にワイン樽も一つ持ってこさせる
そして、3人が先に到着すると、
「勘九郎!六三郎はどの様な事を言っておる?」
「勘九郎殿!道乃に何かありましたか?」
「勘九郎様!虎次郎や兄上達に何かありましたか?」
それぞれが気になる事を聞いてくるが、信忠は
「今から読みますから。それでは。「殿と大殿へ。甲斐国で働いております柴田六三郎です。一日でも早く伝えないといけない事が二つも出来たので、報告します。
先ず良い報告として、甲斐国で葡萄という南蛮人が好んで飲むワインという酒の原材料が豊作になりましたので、
幼い頃に聞いた事のある作り方を試行錯誤しながら作りました
武田家家臣の皆様および、躑躅ヶ崎館の周辺の杜氏達に呑んでもらったところ、好評でした。そこで、先ずは殿や大殿に呑んでいただき、
その後に納屋衆の方々に呑んでもらい、南蛮人に売り込んで、甲斐国に銭が落ちる様にしていただきたく」と、ありますが、父上、悪い報告も今から聞きますか?」
国産ワインが完成した事の報告を先にした。そこで悪い報告を聞きたいかと信長ぬ確認すると、信長は
「そうじゃな。ワインとやらを呑む前に、悪い報告を聞いておこう!読んでくれ!」
悪い報告をしてくれと、信忠に促す
「ははっ。では、「そして、悪い報告ですが、現在、徳川様が交渉中の北条家当主の次男を含む窃盗集団が、葡萄畑に侵入し、そこで次男を捕縛しました
ですが、これで次男を斬首にしようものならば、北条家と戦になる可能性が高くなると、虎次郎殿と拙者で判断した結果、殿と大殿に判断をお願いしたく、
文を送りました。ちなみにですが、この次男の母親が徳川様の娘であると、本人が言っております。それが余計に判断を難しくしておりますが、よろしくお願いします」との事ですが、
父上、予想以上の悪い報告になりましたが、どうしますか?」
信忠に質問された信長は
「北条家も何をしておるのじゃ!何故、当主の倅を、それも正室との間の子に、その様な野盗紛いの事をさせておる!ええい!腹立たしい!」
怒りも見せつつ、呆れ果てていた。そんな状況でも、
「仕方ない。二郎三郎へこの件の文を書く。書いたらすぐに徳川家に届けよ」
すぐに家康への文を書き始め、書き終えると家臣に渡して
「一日も早く届けよ!」
「ははっ!」
家臣を即座に出立させた。歌詞が遠くなっていくのを確認した信長は
「恐らく、二郎三郎から話し合いの場を設けようと来るかもしれぬ。とりあえずはその時にどうするか決めよう!今は、六三郎が作ったワインとやらを呑んでみよう!」
現実逃避するかの様に、注がれたワインを飲んでみると、
「ほう。日の本の酒とは別物じゃな!果物の甘味がありつつも、酸味もある。そのおかげで甘ったるく感じぬ。どれもう一杯」
国産ワインが気に入った様だった。そして、信長からの文が届いた徳川家は
天正十八年(1590年)二月三日
遠江国 浜松城
「殿!織田右府様より、文が届きました」
「三郎殿からとな?何か起きたのかもしれぬな」
そう言いながら、文に目をとおすと
「はあっ!何故、この様な時に」
大声が出て、天井を見る。その様子に側に居た酒井忠次は
「殿。その様になる程、良くない事が書いてあるのですか?」
心配する言葉をかける。しかし家康は
「いや、徳川家としては捨て置いても良い事なのじゃが、儂個人としては頭が痛くなる内容なのじゃ」
そう答える。忠次は
「どうなさいますか?」
「評定を開いて、皆の意見を聞く。準備をしてくれ」
「ははっ!」
こうして、家康は評定を開くと、文の内容を家臣達に伝える
「皆!いきなりの評定で驚いたと思うが、皆の意見を聞かせて欲しい!実は、安土城の三郎殿から文が届いた!
その内容じゃが、北条家当主の婿殿と督との間の子の新次郎が、甲斐国で窃盗している所を捕縛されて、現在は武田家の牢屋に入れられているそうじゃが、
この事で北条家との交渉をどうするのか?これが、儂が決められぬ内容じゃ!孫を解放させてやるからと、餌にして。北条家を臣従まで持って行くのか?
それとも、孫を切り捨てでも、北条家との戦を覚悟するのか?皆の意見を聞かせてもらいたい!」
家康の言葉に、家臣達も簡単には言葉が出ない。その理由として、甲斐国には家康の次男の於義伊が居るからで、
北条家と戦になれば、甲斐国は間違いなく最前線になる。それは避けたいと、殆どの家臣が思っていたからこそ、簡単に意見が出せない
その様子に、家康は
「やはり、皆も儂と同じ様に答えは出ないか。ならば仕方ないのう、三郎殿と話し合い、どうするかを決めよう」
信長の予想通り、信長と話し合いで決める流れになった。