軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

安芸乃姫は動きまくっていた

天正十六年(1588年)一月十日

近江国 安土城

毛利家の人質一行が安土城へ到着して、2ヶ月。年明け早々、安芸乃は信忠と松姫に自作のある物を渡していた。それは

「あらあら、安芸乃ったら。勘九郎様と私の馴れ初めを書物にしてくれるなんて」

2人の交際の始まりからスタートし、織田家と武田家の手切れによる別れ、そこから美濃屋での再会とプロポーズまでを書いた物で、松姫は上機嫌だったが、信忠は

「儂達の馴れ初めは人に見せたりするものではないと思うのじゃがなあ」

と、恥ずかしがっていたが、安芸乃は

「松姫様、左中将様!お二人の馴れ初めは、百年後や二百年後の、結ばれない可能性の高い男女が読むべき物語として残し、販売すべきです!

だからこそ、私が作者として、書き残しております!織田家の天下の後、戦無き世になった時、間違いなく大名の嫡男に町娘が嫁入りする可能性もあります

そんな時、嫡男は家臣の方々、更には両親からも反対されるかもしれません!そんな時に、お二人の馴れ初めの話をしたら、納得させられる可能性があります

それこそ、「天下を治める織田家の嫡男が愛する武田家の姫の為、軍勢を率いて捜索する」という、

芝居の演目の一つとしても、盛り上がる内容ですから!」

2人の馴れ初めを格差のある男女の為に残すべき!と力説する。安芸乃が力説する理由として

(こんなイケメンと美人の悲恋物語と思わせて、一発逆転のラブストーリーなんて、絶対売れるわ!

だからこそ、書物に残して、織田家は勿論、実家の毛利家にも印税が行く様にして、「織田家と毛利家に銭をもたらした素晴らしい姫」の地位を確立してみせるわ!)

野心と下心が最大の理由だった。安芸乃に力説された信忠は

「安芸乃の言う事に納得出来るか、やはり、儂と松の事しか無いのは嫌じゃな!そうじゃな、安芸乃よ

儂の弟二人の事も書いてくれるのであれば、その書物を販売する事を許そう」

信孝と信房の事も書くのであれば、販売しても良いと条件を出す。それを聞いた安芸乃は

「左中将様!誠ですか!それならば、是非とも御舎弟様の事を教えていただきたく!」

信忠に弟達の事を教えてくれと近づくと、

「待て待て。儂以上に弟達の事に詳しい者が、近々父上と共に堺から帰ってくる。その時に、その者から聞いてみよ」

信忠は、安芸乃を戻す為に、六三郎の名前を出さずに安芸乃のテンションを上げさせて、元の位置に戻す

「分かりました。そのお方が一日でも早くお戻りになる事を願っております」

安芸乃はそう言いながら、部屋に戻る。安芸乃が去った大広間で信忠と松姫は

「まったく、安芸乃の奴、初対面の時の無愛想が嘘の様じゃな、松よ」

「確かにそうですねえ。ですが、安芸乃は義父上にも気に入られるでしょうし、織田家と毛利家の為に働いている事は良い事です。安芸乃としては、勘九郎様と私の馴れ初めを販売して銭を稼いでおきたいのでしょう」

「銭を稼ぐところだけを見たら、六三郎と同じじゃな。まあ、その六三郎から三七と源三郎の話を聞けば、更に書物を書く筆は進むじゃろうな」

「完成したら、一番に見せてもらいましょう」

「そうじゃな。その時は一番に見せてもらおう。松の事が、どれ程美しい女子と書いてあるか楽しみじゃ」

「もう、勘九郎様」

新婚当時と変わらないラブラブ度合でイチャついていた

そんなやり取りから5日後

天正十六年(1588年)一月十五日

近江国 安土城

「大殿がお戻りになられました!」

信長が堺から安土城へ到着する。その報せを聞いた毛利家の人質一行は、大広間に集まり、信長に謁見する

信長は一行を見て、

「既に安土城での暮らしに馴染んでおる様じゃな。良き事じゃ!皆が毛利家に戻れるかどうかは、九州での戦次第と言っておく!

九州で戦が起きない平和が続けば、ここでの暮らしも続くが、直ぐに戦が起きる事は無いのじゃから、ゆっくりしたら良い」

予想外の優しい言葉をかける。そんな信長に対し、信忠は安芸乃の事を話す

「父上。ひとつよろしいでしょうか?」

「何じゃ勘九郎?何かあるのか?」

「ええ。毛利家一行の中に居る、安芸守の娘の安芸乃の事なのですが、実は、ある書物を書いておりまして、その書物を販売して、織田家と毛利家の銭を増やしたいと言っておりまして」

「ほう。どの様な書物じゃ?」

信長に聞かれた信忠は恥ずかしがって答えられなかったので、

「義父上、安芸乃は勘九郎様と私の馴れ初めを書物に書いているのです」

松が答える。それを聞いた信長は

「勘九郎と松の馴れ初めか。安芸乃よ、勘九郎と松の馴れ初めは、書物に残す程に素晴らしいのか?」

安芸乃に質問し、安芸乃は

「はい!それこそ」

信忠と松姫に力説した内容を、信長にも力説する。その中で、

「内府様。その件で、左中将様から御舎弟様の事も書くのであれば、販売を許す。と言われましたので、

更には、御舎弟様の嫁取りの事で、左中将様以上に詳しいお方が居るとも伺っております。そのお方を是非とも紹介していただきたく!」

「詳しい人を寄越せ」とオブラートに包みながら、伝えると信長は

「それならば、ほれ。そこに居る柴田六三郎が、三七と源三郎の嫁取りを達成させた張本人じゃ!

詳しい事は、六三郎から聞けば良い!六三郎、細かく教えてやれ!」

「は、ははっ!」

六三郎を名指しする。名指しされた六三郎は内心

(ええ〜?安芸乃姫って、俺の事が大嫌いだろ?知ってる事は話すけど、「そんな事、あるわけ無いだろ!話を盛るな!」と言われたら、

教えるもなにも無いんだけどなあ。でも、金儲けするつもりらしいし、なんだかんだで、聞いてくれる事を祈るか)

軽く不安になっていた。