軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

通達された毛利家と探りを入れる北条家

天正十五年(1587年)五月三十日

安芸国 吉田郡山城

場面は変わり、秀吉と寧々が越前国へ移動している頃、信忠から輝元へ、ある文が届けられていた

その文に目を通した輝元は

「とうとう決まったか」

と、呟くと側に居た小姓に対して

「次郎叔父上、又四郎叔父上、四郎叔父上を呼んで来てくれ」

元春と隆景と元清を呼ぶ様、命令する。小姓が3人を連れて来ると、輝元は

「叔父上達。集まってもらい、忝い。集まってもらった理由じゃが、織田家から遂に領地変更の文が届きました。その内容として、半年以内に羽柴筑前殿が

備中国に入るので、それよりも早く、全ての家臣を安芸国ならびに周防国へ移動させる様に。との事です

時期を同じく、尼子家も新たな領地の出雲半国に入るとの事、更には、そろそろ人質の者達を安土城へ連れて来いとあります」

文の内容を伝えると、元春は

「これでも融通してもらった方じゃ。その様に言われるのも仕方あるまい」

と、言い、隆景は

「恐らく、新たな領地の配分や公方の扱いに頭を悩ませていたのじゃろう。だから、この時期まで色々とずれ込んだに違いない」

織田家もバタバタしていたかもしれないと推測し、元清は

「それでは、そろそろ藤四郎達を安土城へ連れて行くとしても、出立はいつ頃に?儂は、梅雨が過ぎてからが良いと思うが」

人質達が安土城へ行く時期の話をする。輝元は

「叔父上達。色々と考えておりますが、安芸乃や藤四郎といった安土城へ行く者達は、文月の終わりから葉月の中頃に出立させましょう。

そして、藤四郎の正室になった周は、安芸乃の身の回りの世話を行なう侍女の一人としましょう」

そう提案する。3人は

「それが無難じゃろうな」

「殿。その旨、織田家へ忘れずに伝えてくだされ」

「あとは、各地の者達を移動させるか、出奔してもらうか。じゃな」

それぞれの考えを話す。それ以上の話し合いの議題は出なかったので、今日の話し合いはお開きになった

同時期、関東でも動きがあった。

天正十五年(1587年)六月五日

相模国 小田原城

「大殿。甲斐国ならびに信濃国に潜入させている風魔の者から、気になる報告がありましたので、報告に参りました」

殿と呼ばれたのは、小田原北条家の四代目当主北条従五位下相模守氏政である。小田原を本拠地とし、関東250万石を領地とする大大名である

三代目当主の父、氏康の頃から甲斐国の武田家の事は気にしている様で、氏政の頃になっても、それは変わっていなかった

現在は、家督を嫡男の新九郎氏直に譲っているが、実質的には氏政が、北条家の最高権力者である。

そんな氏政は現在、氏直の正室、督姫の実父である徳川家康からの織田家への臣従交渉で頭を悩ませている所である。そんな氏政への報告とは

「申してみよ」

「ははっ。何でも、信濃国との西側の境における周辺地域の米が豊作になったそうで、調べてみたところ、川の水の流れが、早くなっていたとの事です」

コンクリート製のハーフパイプを設置した事を含めた内容だった。それを聞いた氏政は

「ほう。信濃国は舅の信玄公の時代どころか、その父である信虎公の時代から、米が多く収穫出来るとは知っておる

だが、その近くとはいえ、甲斐国で米が豊作とは。川の水の流れが早くなるだけで、それ程、米の収穫に影響するのか?」

報告して来た家臣に質問したが、

「申し訳ありませぬ。百姓仕事に関しては、詳しくないものでして」

家臣は正直に話す。氏政も

「それに関しては、儂もじゃ。詫びずとも良い。だが、米が豊作になる理由が分かれば、領地で広めたいのう」

家臣を咎めない。しかし、米が豊作になる理由を知りたいと、本音を口にする

氏政の言葉を聞いて

「ならば殿。誰ぞ、更に近くに潜入させてみては?」

提案する者が現れる。その者は、

「 幻庵(げんあん) 翁。可能なのですか?」

氏政の祖父、北条家二代目当主北条氏綱の弟、 長綱(ながつな) で、現在は出家して幻庵と呼ばれている、北条家の長老である

その幻庵が、更に近くに潜入して、米が豊作の理由を探る事を提案するが、氏政は懐疑的である為、幻庵は

「ほっほっほ。殿、風魔は勿論、他の手の者も使った経験から言わせてもらいますが、戦に関する事ならば、秘匿されるでしょう。ですが、どうやら武田は、

隠す必要が無いと判断したから、堂々とやっているのでしょう。まあ、武田以外の者達が参加しておる事は気になりますが、それも含めて、近くに潜入させて、調べてみては?」

「戦に関係無い事だから、武田も隠さずにやっているに違いない。だから近くに潜入させてみよう」

と氏政に言う。幻庵の言葉に氏政は、

「わかりました。幻庵翁、誰か、良き者は居ますか?」

出来るのかと、問いかけるが、幻庵は

「ほっほっほ。殿、この北条幻庵、だてに八十年も生きておりませぬぞ?百姓に扮しても違和感の無い者達を見繕い、武田の者達の近くに潜入させてみましょう」

自信満々に、出来ると言ってのけた。そして、

「これで、織田から無理難題を言われて、戦になったとしても、領地の米を始めとした食糧が豊富になれば、織田に対して、

北条家が有利な条件で和睦を結べるかもしれませぬ。間違っても、正体が露見する事、小競り合いで死人が出ない様に気をつけます」

氏政に対してそう伝えて、氏政も

「それでは幻庵翁、その方向で動いてくれ」

「ははっ」

幻庵に許可を出す。こうして、六三郎達の元か、選抜組の元かは分からないが、北条の手の者が近づく事になった。