作品タイトル不明
秀吉の言葉は毛利を混乱させる策か優しさか
天正十四年(1586年)七月二十日
安芸国 某所
「羽柴様。遅くなり、申し訳ありませぬ」
「気にせずとも良い。軍勢が無傷なのが、六三郎殿が何もしておらぬ証じゃ。それに、吉川殿が同行しておるという事は、
城から共に目的地へ行き、そこから共に本陣まで行く事が、毛利家からの条件なのであったのじゃな?」
「その通りです」
皆さんおはようございます。長門国からゆっくり時間をかけて安芸国の本陣まで戻って来ました柴田六三郎です
時間をかけた理由ですが、大内家の皆さんのペースに合わせたからです。大内家には、生まれて一年も経ってない赤ちゃんが居るわけですから、無理をさせる事は出来ません。なので、行きより遅くなったのです
で、秀吉は俺の連れて来た大内家の皆さんに、
「大内家の方々じゃな。柴田六三郎殿から話は聞いておる。儂も六三郎殿と同じ、織田家家臣の羽柴筑前守じゃ。毛利家との和睦が決まったら、ちゃんと、主君の織田左中将様と、
そのお父上の織田内府様の元へ連れて行きまして、保護と武士としての養育の件をお話しますので、しばらくは本陣でゆるりと、お休みくだされ」
挨拶をしまして、亀次郎さんも
「我々の無理難題を聞いていただき、誠にありがとうございます」
お礼を聞いた秀吉は
「いえいえ。この六三郎殿は不思議な縁を引き寄せる力が強い若者なので、これもある意味必然かもしれませぬ」
と、言葉を返したあとで、亀童丸くんを見て、
「亀次郎殿。その赤子が将来的に大名になって欲しい赤子でござるか?少し抱かせていただきたいのじゃが」
抱っこさせてくれと、リクエストして来た。そのリクエストに亀次郎さんは
「はい。沙保里、羽柴様に亀童丸を」
渡す様に促すと、亀童丸くんを抱いた秀吉は
「忝い。実は、儂は出陣前に嫡男と長女が生まれたのじゃが、それが出陣の一ヶ月前だったのでな、少ししか抱いてやれなかったから
大内家の宝である亀童丸殿を抱いて、思い出すと同時に、早く子供達に会う気持ちが強くなって来ましたぞ!感謝いたす。それでは亀童丸殿を」
我が子に会いたい気持ちが強くなったと感謝して、亀童丸くんを返した。そして、大内家の皆さんを涼しい所に移動させると、吉川さんと藤四郎くんに
「それでは吉川殿と、小早川殿の嫡男の藤四郎殿。六三郎殿が本陣に戻った事を確認したら、二人の役目は終わりのはずじゃが、まだ本陣に居ると言う事は、
何か用件があっての事じゃと思うが、その用件を話してくだされ」
「何か用事があるなら話して」みたいな感じで問いかける。すると、吉川さんが
「羽柴殿。誠に申し訳ないが、しばらくの間、柴田殿を毛利家の居城である吉田郡山城にて、お借りしたい!」
俺を貸してくれと、秀吉に頼む。いやいや、吉川さん?ちゃんと借りたい理由を言いましょうよ、と、思っていたら藤四郎くんがフォローしてくれて
「次郎兄上。それでは羽柴殿に伝わりませぬぞ?羽柴殿。言葉足らずで申し訳ありませぬ。次郎兄上は、柴田殿の家臣の赤備えの方々の壮健な肉体を見て、
更に、柴田殿の弟君や、柴田家に学びに来ている他家の柴田の身の丈が人並みより高いと聞いて、主君である安芸守様の若君の健やかな成長の為の食事を
毛利家の料理番達に教えてもらいたいから、しばらく柴田殿を、お借りしたい。と言いたいのです」
ほぼ全部を説明してくれた。説明を聞いた秀吉は、
「子供の健やかな成長の為と言われると、儂も子を持つ親じゃから、気持ちは分からないでもないが、流石に無期限と言うのは、のう」
俺を貸しても良いが、無期限はダメだ!と、遠回しに言っている。その事で吉川さんが
「羽柴殿!遅くとも、師走、いえ、霜月には柴田殿をお返しします!なので、どうか!」
俺にした時と同じ様に、秀吉に平伏した。それを見た秀吉は
「吉川殿。お気持ちは分かった。だが、何故に六三郎殿の料理が良いと思ったのか、教えていただきたい」
俺の料理を選んだ理由を聞く。聞かれた吉川さんは、
「実は、安芸守様もそうじゃが、若君も時折、体調を崩して寝込む時があるのです。安芸守様は、大人ですから、飯を食べて寝ていたら、体調は回復するものの、
若君はまだ元服どころか、十歳にもなっておりませぬ。なので、不安が付きまとうのです。だからこそ、柴田殿の料理を覚えた料理番達が、若君が健やかに育つ為の料理を作れる様になれば!と思った次第なのです」
秀吉に、俺を借りたい理由を伝える。秀吉は、
「理由を聞いて納得出来るが、反対する者が出てくると思いますが?それこそ、吉川殿の弟の小早川又四郎殿あたり、停戦中とはいえ、敵を城の中に入れる事を反対すると思うのじゃが」
小早川さんが反対するのでは?と指摘をする。すると、吉川さんが
「羽柴殿。又四郎は絶対に反対しませぬ。何故なら、又四郎は幼い我が子を、病で失った過去があるのです。二十一年前の事です。それ以降、又四郎は
子作りをせずに、役目に励み、その間に正室も亡くなりました。その結果、末の弟の藤四郎を養子に迎え、嫡男に据えたのです。そんな又四郎だからこそ、
若者が健やかに育つ為の料理を教える柴田家殿を城に入れる事を反対しないでしょう!」
と、まさかの小早川さんの昔話をしてくれた。それを聞いた秀吉は、
「成程。吉川殿、分かり申した。六三郎殿。長くてとも、霜月までの間、毛利家に行ってくれるか?」
俺に聞いて来た。まあ、約3ヶ月だし、いいかな。ただ、何も無いだろうけど赤備えの皆は連れていこう
「ええ。構いませぬ。ですが、赤備えの皆も共に行く事が条件です。吉川殿、藤四郎殿。それでよろしいですかな?」
俺の言葉に2人は、
「それくらいならば問題無いでしょう!むしろ、赤備え達と共に、家臣達を鍛える良い機会です!」
「拙者も、肉体が強くなっている事を実感しておりますから、赤備えの方々とまだまだ共に訓練をさせていただきたい!」
了承してくれたので、決定ですね
「羽柴様。そう言う事に決まりましたので」
「うむ。毛利家の料理番達に、六三郎殿の作る、とてつもなく美味い料理を教えてやってくれ。そして、戻って来たら、儂達にも作ってくれ」
「ははっ」
で、俺や吉川さんが立ちあがろうとすると秀吉は、
「それから吉川殿、少しよろしいかな?」
「何でございますかな?」
「又四郎殿の事じゃが、まだまだ子作りを諦めてはならぬと思うぞ!」
「お気持ちはありがたいですが、又四郎に嫁は居ませんし、もう今年で五十四歳ですから、流石に」
「何を言っておる!嫁は毛利家中で働く女子の誰かしらでも良いではないか!それに、年齢は子作り出来ない理由にはならぬぞ!そこの六三郎殿の父上の、
柴田越前守殿、儂達は親父殿と呼んでおるが、その親父殿は五十五歳以降に子を二人ももうけたぞ!それこそ、六三郎殿の弟君が末の子じゃが、生まれた時の親父殿は五十九歳だったのじゃからな!」
秀吉の話を聞いた吉川さんは、
「六三郎殿!今の羽柴殿が話した、お父上の話は誠でござるか!?」
興奮しながら聞いて来たので、
「はい。本当です。そもそも、拙者も父上が四十五歳の時に生まれましたので」
説明したら、思いっきり肩を掴まれて
「柴田殿!その話を、是非とも又四郎にしてくだされ!藤四郎の弟や妹が多く出来れば、それだけ毛利本家を支えられます!詳しい内容は、城の中で!」
強い圧を感じたので、
「は、はい」
と、返事をしたら、
「それでは、羽柴殿!柴田殿と赤備え達をお借りいたす!丁重に扱いますので!」
「うむ。お頼みしますぞ」
「次郎兄上が騒がしくて、申し訳ありませぬ」
あっという間に、毛利家の居城、吉田郡山城への出立になりました。