作品タイトル不明
六三郎の出陣を知った親子は話し合う
天正十三年(1585年)八月二十日
播磨国 某所
「官兵衛!お主に伝えておかねばならぬ事がある!ここへ座れ!」
「父上、どの様な事でしょうか?」
声の主の2人のうち官兵衛と呼ばれた男は 黒田官兵衛孝高(くろだかんべえよしたか) 、
そして父上と呼ばれた男の名は 黒田甚四郎職隆(くろだじんしろうのりたか)
史実での官兵衛は秀吉に臣従して、中国方面軍に参戦していて、本能寺の変が起きた時、天下取りの好機であると進言して、中国大返しを実行させて、
山崎の戦いで明智光秀の軍勢を打ち破り、秀吉を勝利させる等、秀吉の天下取りに大きく貢献したが、その才覚を秀吉に警戒されて、九州の豊前国へ領地は増えたが、中央の畿内から距離を置かれる措置を取られただけでなく、
秀吉の死後、一か八かの天下取りに挑むが、家康の天下取りの大一番の関ヶ原で息子の長政が多大な貢献をして、自身の天下取りの野望が潰えた。という、
色々とタイミングの悪い武将だったが、この世界線では、中国方面軍ではなく、山陽方面軍として佐久間信盛が進軍していた為、黒田家の主家であった小寺家が
史実で秀吉に対して抱いていたとされる「百姓上がりに屈するなど出来ぬ」と言う感情も、家格だけは立派な佐久間家には抱かずに、織田家へ臣従したが、
佐久間の軍勢が、毛利に押し返された事を知らされると、小寺家中でも、「毛利に寝返る」と「このまま織田に着く」で意見が割れていた。そんな中で黒田家は
父である職隆が官兵衛との重要な話し合いを開いていた
「官兵衛。佐久間様が毛利から反撃を喰らい、進軍を押し戻された事は知っておるな?」
「はい。その事で毛利から小寺家に寝返りを誘う文が届いたそうですな。父上は毛利に寝返る事を勧めますか?」
「最後まで話を聞かんか。その押し戻された佐久間様への援軍を織田家が出陣させたのじゃが、その援軍の総大将がな、何とも不思議でな」
「織田家の中で名をあまり知られていない者が総大将なのですか?」
「いや。名は多少なりとも知られておるのじゃが」
「父上。勿体ぶらずに、いったい誰が総大将か教えてくだされ」
「重臣の柴田家当主じゃ」
「ああ。鬼柴田と呼ばれるお方ではないですか。別に不思議な事は」
「官兵衛。実はな、手の者を使って分かった事なのじゃが、その柴田家は嫡男に代替わりしているそうじゃ」
「そうですか、って。父上?確か、鬼柴田と呼ばれるお方の嫡男は確か」
「そうじゃ!柴田の鬼若子と呼ばれる若武者じゃ!しかも、お主の嫡男の 吉兵衛(きちべえ) と然程歳の変わらぬ若武者じゃ」
「歴戦の武将が多く居る織田家が、その様な若武者に総大将を任せる程、期待の若武者も言う事ですか?」
「それもあるだろう。だが、柴田の鬼若子とやらは、自身もそうだが、家臣にかなりの知恵者が居る様で、鬼若子とやらも人の意見を聞く事の出来る、
器の大きな若武者の様じゃ。その鬼若子がおよそ一万五千もの軍勢で援軍に向かう。これをお主はどう見る?」
「佐久間様の軍勢が出陣時点で一万八千でしたので、毛利に反撃を喰らい、多数の討死が出たとしても、一万四千は居ると思いますので、
そこに援軍の一万五千が加わるとなると、毛利家中に戦上手が居ても、数で押せば、織田家の勝ちは揺るがないかと思います」
「そこまで話を理解出来ているなら、話は早い。官兵衛!儂はな、織田家に臣従するが、柴田家の与力にしてもらおうと思う」
「それは何故ですか?」
「それはな、話に聞く柴田家が不思議な事極まりない家なのじゃ。先ず、柴田の鬼若子の正室が、滅んだと思われた美濃斎藤家の傍流の娘で、
更に弟も居るそうじゃ。織田内府様はおよそ十年かけて、その弟に武士として鍛えて、最近斎藤家を再興させたそうじゃ。
他にも色々と訳ありな家の者達を見つけて召し抱えているそうじゃ。その様な不思議な家ならば、小寺家の様に堅苦しいしきたりなんぞ無いと思えぬか?」
「まあ、話を聞く分には、拙者もそう思います」
「官兵衛。儂の直感じゃが、毛利は此度の戦で織田に屈する。そして小寺家は、どっち付かずな態度を咎められた結果、良くて領地を減らされるか、最悪の場合、領地没収じゃろう
そして、これが最も重要な事じゃが。戦乱の世もやがて終わるじゃろう。何も無ければ織田家の天下統一でな。だが、官兵衛よ。織田家の天下統一後に起きる事は分かるな?」
「家臣達の勢力争いですな?」
「そうじゃ。その中で、佐久間家は当主が率いる軍勢が敗れたのにも関わらず、嫡男が援軍として出陣しない時点で、織田家の新たな当主である左中将様は、
佐久間家に期待しておらぬ証じゃ。そして、自身の兄弟や一族の者を動かさずに、柴田の鬼若子に援軍の総大将として出陣させる。
これは期待の証でもあるじゃろう。つまり官兵衛よ。このまま進めば、織田家の天下統一後、家中の一番手は柴田家になる事は間違いない!
そして、これから織田家の三代目が家督を継いだ時、間違いなく柴田の鬼若子が、家宰として腕を振るうだろう!官兵衛、ここまで言えば分かるな?」
「柴田家との縁を今の内に作っておけ。そう言う事ですな?」
「そうじゃ!小寺家への義理は、充分果たしたと儂は思う。だからこそ官兵衛!吉兵衛を連れて、柴田の鬼若子の元に行き、共に毛利と戦って来い!」
「ははっ!」
「佐久間様が小寺家が臣従した事を知らせておると思うが、儂は独立した黒田家の当主として、左中将様へ文を出す。安土城へ呼ばれたならば、赴く
だから官兵衛よ、吉兵衛を連れて、柴田の鬼若子の元へ行き、共に戦って来い!」
「ははっ!」
こうして、また六三郎の元に有名人が行く事になった。ちなみに、この世界線の官兵衛は荒木村重に幽閉されてないので、足に障害は無く、元気に走り回っている。