作品タイトル不明
露天風呂で交渉の詰めを終えたら出発
天正十二年(1584年)八月四日
近江国 長浜城近く
「父上!この露天風呂とやらは最高ですな!」
「はっはっは!そうであろう!勘九郎よ、これは日の本に広めるべきじゃ!土佐守と弥三郎!お主達はどうじゃ?」
「最高です!見事な絶景を見ながら、肩まで湯に浸かる。それがこれ程の気持ちよさを生み出すとは」
「土佐国と阿波国のどちらかに、この様な素晴らしい物を作れる様にしたいです!」
皆さんおはようございます。朝から織田親子と長宗我部親子の朝露天風呂に付き合っております、柴田六三郎です。昨日、長宗我部親子が来た時点で秀長さんが、
職人さんに湯船を急ピッチで作らせていた様で、長宗我部親子の湯船が既に完成しておりました。殿の分は家康が先に帰ったので、家康用の湯船を使っておりますが、
余程気に入ったのか、それとも疲れが溜まっていたのか、寝ているんじゃないか?と思うくらい静かです
そんな状況ですが、前日に酒を飲みながらの臣従交渉の詰めを行なっている様で、
「さて、土佐守よ!織田家に渡す讃岐国じゃが、「織田家の一門が治める」が希望なのじゃな?」
「はい。家臣の方が治めても良いと思いますが、やはり長宗我部家の家臣にも一目置かれるお人が居てくれた方がありがたいですし、そのお人が内府様のご兄弟か、
ご子息のどなたかであれば、伊予国の河野を始めとした反抗的な勢力も抑えられると思いますので」
「ふむ。六三郎が提案していた内容と同じじゃな。勘九郎!お主の考えを聞かせよ!讃岐国は誰が治めた方が良い?」
「父上。源三郎が治めた方が良いでしょう」
「三介ではなく、源三郎を推挙するか。その理由は、大体想像出来るが、申してみよ」
「父上、三介が南伊勢でやっていた事を、讃岐国でやってしまったら、間違いなく一揆が起きます。そして、最悪の場合、三介は一揆を起こした百姓達に殺されるでしょう
そして、殺されなかったとしても、一揆鎮圧の為に土佐守は軍勢を出したのにも関わらず、三介に叱責されるでしょう。それこそ、南伊勢でやっていた様に、
「自分は織田家の者だぞ」と横柄な態度を取るでしょう。そんな三介よりは、六三郎と共に近江国の開発と穴山征伐を経験した源三郎の方が、讃岐国の統治者に相応しいと判断したからです」
「儂の予想通りじゃ。息子達には、出来るかぎり同じ子育てをしたつもりなのに、何故に三介だけ我慢の出来ない阿呆に育ってしまったのか。
三七は名目上は伊勢国だけが領地じゃが、実質的には伊賀国を治めておるも同然な程、民達から慕われておる。これでは三七を讃岐国に動かせぬから、
三介と源三郎のどちらかになるが、やはり源三郎が良いか。土佐守よ!」
「ははっ!」
「お主、勘九郎と共に安土城に戻る際、源三郎に会っておけ!源三郎は六三郎や弥三郎と同い年じゃから、変に緊張する事も無かろう!そして、勘九郎!
朝廷に行き、源三郎が讃岐守の官位を手に入れられる様に動け!お主の当主として最初の仕事じゃ」
「父上、かしこまりました」
「今の源三郎ならば、守らねばいかぬ嫁が居るのじゃ。それに、六三郎や紀之介と共に内政や土地開発の経験もある。誰かしらを短期で側に置いてやれば、
ちゃんとした統治者になるじゃろうな!しかし、源三郎が一国を統治するとは。源三郎から下の子達の事も考えないといかぬ時期じゃな」
「父上。確かに弟妹達の事も考えないといけませぬが、父上にもまだまだ働いてもらわないと困りますぞ?だから健康には気をつけてくだされ」
「分かっておる。まだ色々と話したいが、勘九郎と土佐守。そろそろ出るとしよう。弥三郎がのぼせておる。お蘭と六三郎!弥三郎を助けてやれ!」
「「ははっ!」」
大殿の命令で、のぼせた弥三郎さんを助けて、身体を拭いてから、涼しい場所に寝かせて、とりあえず臣従交渉の詰めは終わりになりました
しかし、源三郎様が讃岐守か〜。讃岐国って確か、うどん県こと香川県だったよな。水不足が続くから、米よりも、乾燥地域で育つ小麦粉生産に切り替えて、
更に美味しさを追求する為に、瀬戸内海の魚介類を出汁に使った結果、香川県全域にうどんが広がった説が出る様な、水不足が多くて長い土地らしいけど、
まあ、大殿が短期間の補佐をつけると言ってるし、それは俺じゃないよな?だって、今年年内は絶対に無理だからな。来年でも、来年以降ても無理だ!俺以外の誰が、頑張ってね!
六三郎がそんな事を考えている間に、時は進み
翌日
「それでは勘九郎!源三郎の官位の件と、土佐守を皆に会わせる事、忘れるでないぞ!」
「勿論です!父上もお気をつけて!」
「そして土佐守!弥三郎をしっかりと鍛えてやる!その間、土佐国と阿波国の統治者として、しっかり頼むぞ!」
「ははっ!弥三郎の事、お願いします!」
「うむ!六三郎よ!越前国へ行くぞ!帰蝶は先に出立しておるし、十兵衛の娘と勝蔵の妹も、そろそろ着いている頃じゃろう!それでは出立じゃ!」
「ははっ!」
こうして、信長は戦をせずに四国の4分の3を手に入れた。そんな幸運が起きたので、信長は上機嫌だが、六三郎はと言うと
(浅井長政の遺児の虎夜叉丸の事、お袋は絶対に今回で言うよなあ。万が一、大殿が「殺せ」と言ったら、どうしたら良い?)
確実に起こる未来の対応に頭を悩ませていた。