作品タイトル不明
師は教え子の背中を押す
「水野様。少し、よろしいでしょうか?」
「おお。六三郎殿、入って構わぬ」
「失礼します」
水野様の部屋に行ったら、昌幸さんと碁で戦っておりました。どちらも同じくらいの碁石の数だったので、実力伯仲と言ったところでしょうか。それよりもだ、
「水野様。少し相談したい事が、それと喜兵衛殿。喜兵衛殿にも少し関わる事なので、何か良い意見があれば遠慮せずに言っていただきたい」
「分かりました」
「それで六三郎殿。どの様な事じゃ?」
「はい、実は」
俺は殿からの文の内容を伝えた。すると、
「ふむ。三吉を元服させてそのまま初陣という事か。六三郎殿は三吉を赤備えの皆と共に行動させたいのか?」
「三吉は赤備え達の訓練をやっていないので、共に行動するのは無理です。そもそも、帰蝶様の一族である三吉は誰かしらのお膳立てで武功を挙げても許されると思うので、先陣に入れるのは違うのでは?と思っております」
「ふむ。六三郎殿が三吉に対して思う事は間違ってないと、儂も思う。喜兵衛殿はどうじゃ?」
「拙者としても、三吉様はお飾りでも良いと思いますな。ですが、ずっと本陣に居たままでは侮られると思います。なので、形的に六三郎様達が三吉様の指揮下に入っている様に見せたら良いと思います」
おお!流石、戦国時代でトップクラスの謀将!誤魔化す形まで考えているとは!この案を採用しよう!
「喜兵衛殿!良き考えを教えていただき、忝い!それから水野様。そろそろ小吉も元服させて戦場を一度くらいは経験させようと思うのですが」
「六三郎殿。小吉に戦場を経験させる考えは良いが、小吉は武芸は芳しくないから前線に出すのは、どうかと思うぞ?」
「はい。勿論、兵糧や矢弾の管理をさせるのです。そして、喜兵衛殿。その小吉や武器や兵糧を護衛する役目として、源三郎殿と源二郎殿に働いてもらいたい」
「よ、よろしいのですか?息子達はまだまだ赤備えの方々の訓練を終えた後、苦しんでおりますが」
「あの坂道を走る体力がついているなら、最低限の働きは期待出来ると儂は判断した。そして喜兵衛殿本人にも働いてもらうぞ?」
「誠ですか?どの様なお役目でも働いて、必要な存在である事を示してみせまする!」
「殿や勘九郎様と話し合って、どの様に進むかにもよるが、信濃国を少しずつ甲斐国へ向けて進軍していく筈じゃ。そこで信濃国出身の喜兵衛殿に、敵を誘い込むならば此処、や、敵の攻撃から身を隠すなら此処。
と言った場所を指示しながら、采配を振ってもらいたい。信濃国には真田家になら従う。という地侍とかは居ますかな?」
「少しは居ると思いますが」
「少しでも良い。その地侍達を使って、被害少なく征圧出来るなら、それに越した事はないからな」
「手の者を使い、調略の準備を進めておきます」
「それとじゃ喜兵衛殿!柴田家の武士や武将として出陣するのじゃから、喜兵衛殿、源三郎殿、源二郎殿は勿論、小吉にも赤備えの甲冑を贈呈しようと思う」
「ま、誠ですか?拙者達はまだまだ何の役にも立ってないどころか、働きもしてないのに。その様なご配慮を」
「これから働いてくれたら、それで良い。そこでじゃ、2人を連れて大広間へ来てくれ!甲冑を作る為の採寸を行なう。何か甲冑に入れたい紋様とかはありますかな?それも含めて贈呈しましょう」
「では、真田家の旗印の六文銭を甲冑に付けていただきたく」
「3人の甲冑には六文銭じゃな!分かりましたぞ。それでは、2人を連れて来てくだされ。拙者は大広間に先に行っておきます。水野様も良い意見をありがとうございます」
こうして六三郎は大広間に行った。残った信元と昌幸は
「水野様。六三郎様は誠に不思議な若武者ですな」
「喜兵衛殿。確かに六三郎殿は不思議な若武者ですが、人を見る目はあの歳にしてはある方かと。そして、少し甘いかもしれませぬが、出来るかぎり味方の被害を少なくしようと考えているところもありますから」
「死んで来いと言わない主君の為ならば、赤備えの方々は喜んでその身を敵陣に投げ込むでしょうな。それ程に得難い主君は、日の本広しと言えど、六三郎様以外居ないと思います」
「儂もそう思う。あっ!喜兵衛殿、此度は儂の負けじゃ。見事な碁の腕じゃな」
「たまたまです。次もよろしくお願いします」
昌幸はそう言いながら、信元の部屋を出て、訓練中の信幸と信繁に声かけしてから、広間へ向かった。大広間には既に三吉と小吉が座っていた
信幸と信繁が居ない事に昌幸は後ろを振り返る。すると、
「ち、父上。六三郎様、に呼ばれた、とは一体?」
「な、何か、やらかし、たの、です、か?」
柱や壁を使わないと歩くのもやっとな状態で2人か大広間に来た。それを見た昌幸は
「お主達。今から六三郎様からお役目を託されると同時に、とても喜ばしい事があるのだから、その様な情けない姿を見せるな!」
「も、申し訳ありませぬ」
「よ、喜ばしい事とは」
「六三郎様から直接伝えるから、待っておれ!」
そして、しばらくすると六三郎、利兵衛、源四郎、光三郎の4人が来た。利兵衛と源四郎と光三郎の手には巻き尺が準備されていた
「六三郎様?何をするのですか?」
三吉か質問すると
「三吉、安土城の殿から三吉を元服させて、斎藤家再興の第一歩を始めるとの文が届いた。その際に小吉も共に元服させて、側に置いておこうと儂は決めた
そして、喜兵衛殿と源三郎殿と源二郎殿。3人も柴田家の武士及び武将として、三吉と小吉と共に武田征伐へ出陣してもらう!そこでじゃ!柴田家の者として
赤備えの甲冑を贈呈する。その準備として、利兵衛達に皆の身体を採寸してもらい、その採寸記録を甲冑を作る職人に渡して作ってもらう。喜兵衛殿の希望で、
真田家の旗印の六文銭を甲冑に付ける事は決まったが、2人は何か付けたい希望はありますかな?」
「はい!牛の角を付けていただきたく!」
「これ!源二郎!」
「源二郎殿は牛の角か、牛の角は2つあるから、源三郎殿は麒麟の様な一本角で良いか?」
「え?拙者は希望は出しておりませぬが、良いのですか?」
「なに、武田の赤備えと間違えられない為にあえて付ける物。くらいに思ってくれたら良い。喜兵衛殿は六文銭以外でありますかな?」
「息子達にご配慮いただいただけで充分でございます。簡素な赤備えの甲冑で構いませぬ」
「分かった!では、利兵衛、源四郎、光三郎!採寸を開始してくれ」
「「「ははっ」」」
こうしてまた、職人さん達に無茶振りする事になったけど、これか終わればしばらく無茶振りしないから職人さん達、頑張ってください!