軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

起きたら大変な事になっていた

天正十一年(1583年)二月二日

越前国 柴田家屋敷

「母上。兄上はまだ起きないのですか?初めてお会い出来ると楽しみにしていたのですが」

「京六郎。兄上はですね、少し、いえ、かなり多くのお役目を殿から任されているのです。それで疲れて倒れてしまったのです。今は眠らせてあげましょう

お話相手なら、小吉達が居ますから。皆とお話したり、身体を動かしたりしながら兄上が起きるのを待ちましょう」

「はい」

六三郎が前日に倒れて、屋敷内はパニックに陥ったものの、医者の見立てで「疲れ果てて寝ているだけ」と言われて安心したが、一日過ぎても起きない六三郎を

皆が心配していた。市に至っては信長と勝家に文を出そうとしたが利兵衛に止められて、様子を見る事にした

天正十一年(1583年)二月四日

越前国 柴田家屋敷

(あれ?俺、なんで上を見てるんだ?もしかして、過労で死んだ?いや、手や足は動くし、触った感触もあるから生きてるか、とりあえず身体を起こそう)

六三郎が身体を起こそうとして

「よいしょっ!」と声を出したら、周りからバタバタと足音が聞こえて来て

「若様!目覚めたのですか!お身体は大丈夫ですか?」

「若様!我々が付いていながら、誠に申し訳ありませぬ!」

利兵衛と源太郎が部屋に入るなり平伏して来た。それをきっかけに大野兄弟、山県兄弟、更に人が集まって来た。部屋に入らない者は中庭で待機する混雑具合だった

そんな状況でも利兵衛は

「奥方様達にお伝えせよ!若様が目覚めたと!」

冷静に市達へ伝令を走らせた。そして、市達が到着すると、

「六三郎。無理をさせて申し訳ありません。三日も寝込む程、あなたが疲れ果てていたなんて。あなたも権六様も病にかからない人だから軽く見ておりました、申し訳ありません」

市が頭を下げて来た。それに六三郎は

「母上。此度は拙者が無理をした結果です。母上が謝る事ではありませぬ」

「そう言ってもらえると気が楽です。茶々達も久しぶりの兄上に顔を見せてあげなさい」

「「「「兄上」」」」

妹達がお袋に呼ばれて駆け寄ってくる。上の茶々と初は流石に自重しているけど、下の江と文は遠慮なくタックルしてくるが、それでお袋に怒られると

「江!文!兄上を労りなさい」

「「兄上、申し訳ありません」」

「江、文、大丈夫じゃ。それから皆、心配かけてすまぬ。明日から少しずつ動ける様になるから、もう大丈夫じゃ」

「六三郎。あなたの事です。早く近江国に戻って、役目に励むつもりでしょう、ですが少しは休みなさい!

そして、産まれた時以来顔も見てない京六郎と会って遊んであげなさい!京六郎来なさい。兄上が起きました」

「はい!!」

お袋に呼ばれた京六郎は、江や文よりも元気よく俺にタックルして来た

「おお。大きくなったな京六郎。と言っても、産まれた時に見た以来じゃ。京六郎は儂の事をあまり分かっておらぬのではないか?」

「父上と同じ顔なので、直ぐに分かりました!拙者もいつか、父上の様に人の上に立ち、兄上の様に慕われる武士になりたいです」

「そうか。そう思うなら、先ずは食べ物の好き嫌い無くしっかり食べて、身体を動かして、長く眠るのじゃ。健やかな身体を作る為には必要な事じゃ」

「はい!他には何をやったら良いでしょうか?」

「利兵衛や源四郎から内政を学べ。身体の強さと同じくらい頭も賢くないといかぬぞ?」

「はい!頑張ります!」

「うむ。少しずつで良いからな」

「さて、京六郎。母は兄上と少し話をしたいです。皆も、利兵衛と私と六三郎だけにしてください」

「「「ははっ」」」

おや?お袋が俺と利兵衛だけにするとか、明らかに内向きな話だろ?そうとしか思えないんだが

俺がそう考えていると、皆出て行って俺達3人だけになった。そしてお袋から

「六三郎。今から話す事は、兄上と徳川様からの文で私と利兵衛しか知らない事です。内容はあなたに関する事です。しっかりと心を落ち着かせて聞いてくださいね」

「は、はあ。お願いします」

「では。あなたの正室候補の徳川様の娘の於古都姫ですが、あなたに嫁入りする事を拒んでおりまして、その事で徳川様から「一時の迷いだから」と

この話を破談にするのを待って欲しいと文が届いており、兄上からは「六三郎が決めたら良い」と、あなたに判断を委ねる旨の文が届いております」

「そうですか」

「そうですかじゃありません!六三郎!あなたは、私と権六様の再婚によって織田家の一門に入ったのですよ!

それなのに、この様な扱いを受けて良い訳がありません!於古都姫の心を取り返そうとは思わないのですか?」

おおう。お袋の怒りが俺に来ている。でも、あくまで仮の正室候補だったんだから、話が無くなっても良いと思うんだよね。

でも、一応話だけでも聞いておくか、於古都ちゃんにそこまで惚れられたのは誰か興味あるし

「母上。とりあえず於古都姫が誰の嫁になると言っているのか、教えていただきたく」

「徳川様の家臣の水野藤兵衛殿の嫡男の藤十郎という若武者だそうです」

鬼日向さんか!いや、面白、じゃなく大変な事になってるだろうなあ

「ああ。国松殿の事ですか」

「六三郎!あなたはその若武者を知っているのですか?」

「ええ。元服前に徳川様の領地である遠江国の浜松城で会いまして、将棋で戦った顔馴染みです。まあ、あの頃から国松殿、元服して藤十郎殿は良き男でしたから」

「相手を褒めてどうするのですか!六三郎!あなたは」

お袋が更にヒートアップして来たので利兵衛が止めに入る

「奥方様。若様は倒れて三日間寝ていたのですから、起きて直ぐに頭を使わせては」

「利兵衛の言う通りですね。仕方ないですが、今日は六三郎に伝えるだけにしておきます。ですが六三郎!

仮と言えど許婚を奪われたのですよ?憤慨して、兄上を通じて徳川様に抗議の文を送っても良いのですよ!」

「母上。先ずは考えるくらいでお願いします。それにあまり怖い顔をしては、京六郎が怯えてしまいますから」

「分かりました。とりあえず私は部屋に戻りますが、ちゃんと考えてくださいね」

そう言ってお袋は部屋を出た。残された俺と利兵衛は

「若様。涼しい顔をしておりますが、あまり気に留めてないのですか?」

「利兵衛。母上の手前、少しは考えたが歳頃の女子は遠くの兄の様な存在の男より、近くの側に居てくれる男に惚れてしまうのも仕方ないと思っておる

それに仮なのじゃから、破談になっても儂は気にせん。徳川様の娘じゃ。徳川様が縁を繋ぎたい家に嫁入りさせるか、家臣に嫁入りさせた方が、要らぬ問題も起きないはずじゃ。

だから儂は、殿の文にあった「儂が決めたら良い」という事であれば、破談で良い。母上からは叱責されるだろうがな」

「若様が御決断なされたならば、拙者も従います」

「さあ、この話は一旦終わりにしよう。利兵衛、すまぬが飯を食いたい。昼頃ではあるが、遅い朝食といこう。飯を持って来てくれ」

「ははっ」

利兵衛は飯を取りに部屋を出た。しかし、鬼日向さんと於古都ちゃんがねえ。今頃鬼日向さんの親父の藤兵衛さんは真っ青な顔で家康に頭を下げているか、

真っ赤な顔で鬼日向さんに鉄拳制裁をやってるか。どちらかだろうな。とりあえず、流れに任せるか