軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

誕生の宴と命名

天正十年(1582年)一月十二日

近江国 長浜城

「皆!盃は持ったか?」

「「「ははっ!」」」

「では、藤吉郎と寧々の間に嫡男が産まれた事を祝し、乾杯!!」

「「「乾杯!」」」

皆さんこんばんは。寧々さんの半日超えの出産から1日明けて、殿や秀吉の体力が回復したので仕事を終えたら、秀吉の嫡男誕生の宴会が始まりました。当然ですが寧々さんは休んでおりますので、不参加です

俺?俺は殿から「宴会に相応しい料理を作れ!」と言われたので現在、下準備をしております。

ほとんど動いてない俺とは対照的に、宴会をしている皆さんの中で、主役の秀吉は、皆に酒を注いでもらいながら、

「皆!儂みたいな成り上がり者について来てくれただけでも有り難いのに、嫡男の誕生をこれ程喜んでくれる事、誠に感謝しかない!誠に!誠に!」

「殿、何を仰いますか!殿のこれまでの働きを大殿が認めてくださったのですから、お袋様の見舞いも兼ねて来てくれたのですから」

「そうですぞ!そうでなければ、大殿が若君誕生の宴を開いてくださりませぬ」

「うう、ううう。今日ほど、織田家に仕えて良かったと、思う日は無い!儂は、誠に果報者じゃ!」

一杯飲んでは大泣きして、更にかけられる言葉で大泣きして、を繰り返した結果、最早盃の中は酒か涙かどっちだ?みたいな状況になっていた

そんな状態の中、殿が秀吉に酒を注ぎに来た

「藤吉郎!改めてじゃが、嫡男の誕生おめでとう!儂の孫より後に産まれたのは、儂とお主の関係と奇しくも同じじゃな!しっかりと育てて、お主の後を継ぐに相応しい若武者にするのだぞ!」

「ははっ!」

「うむ!それでは、飲め!」

「殿。元服前の殿に仕えておよそ三十年。今日ほど、織田家に、殿に仕えて良かったと思う日はありませぬ!そして、今日の酒は、人生で一番忘れられない酒でございます。うう。ううう」

「はっはっは。藤吉郎!誕生で大泣きする事は分かるが、これより先、嫡男の元服の時、嫁を取った時、更に言うなら孫が産まれた時も大泣きして、身体が干からびてしまうぞ」

「殿。その様な事は言わないでくだされ。考えただけで涙が止まりませぬ」

「はっはっは!少しずつ慣れていけ!儂も通った道じゃ!」

「は、ははっ!」

「うむ。それでは、そろそろ六三郎に頼んだ料理を持って来てもらおうではないか!藤吉郎!誰ぞ、台所に行かせよ」

「ははっ!助作!六三郎殿の元へ行って来い」

「ははっ」

秀吉に命令された助作さんか俺の所に来た。料理も出来上がっていたので、運ぶ人数が増えてありがたい

それじゃあ、持って行きましょう!子供が産まれた喜びを食べてもらおうじゃないか

「お待たせしました。此度の宴会に相応しいであろう料理にございます」

「おおお!六三郎!これは、宇治丸を丸々一匹ではないか!それに、この黄色い物がのっている飯も鮮やかじゃ!これらの料理には、意味があるのであろう?説明せい!」

「ははっ!では、説明させていただきます。丸々1匹お出しした宇治丸は、「長い生き物を食べて、長生きを」という意味を込めました

黄色い物は雉の肉と卵を同じく雉の骨から取った出汁から味付けした物で、「親子共にどんどん出世していただきたい」という意味を込めて親子丼と仮の名を付けました」

「はっはっは!長生きして、親子共にどんどん出世しろか!洒落が効いておる!正しく、藤吉郎と子供の為の料理じゃな!藤吉郎!お主と子の為に作った料理じゃ!しっかりと食べてやれ!」

「ははっ!喜んでいただきます」

秀吉が親子丼をかき込みながら、時々ウナギを食べる。食べ始めて間もなく、

「うっ、ううう。六三郎殿が、長浜城に来て、我が子が産まれて、どれ程感謝をしても、し足りぬのに、更に拙者の長生きと子と共に出世する事を望んでくれるとは」

泣きながらの食事に変わっていた。それを見た殿も、

「さあ、藤吉郎の家臣の皆も食べよ!箸が止まらぬ美味さじゃぞ!」

殿の号令で、皆が一斉に食べると、

「美味い!これが宇治丸とは信じられぬ!」

「親子丼とやらも、優しい味じゃ!かき込んで一気に食えるのも良い!」

「若君誕生でこれ程美味い物が食えるとは」

皆さん楽しみながら、食べていますね。それじゃあ、〆のお吸物を飲んでもらいますか

「それでは殿、羽柴様。最期に食す物としてお吸物を作りました。ちゃんと意味を込めておりますので、汁椀の蓋を開けてくださいませ」

「うむ。どの様な汁物じゃ。ほお、肉に何かを挟んだ物が入っておるな。六三郎、これはどの様な食材を使って、どの様な意味があるから、作ったのじゃ?」

「はい。先ず、肉は鹿の肉です。そして、小口で食う為に餅を入れました。つまり小餅を鹿の肉で合わせまして、「子を持ち幸せ」と、餅が伸びて、幸せな日々が長く続いて切れない様に。との意味を込めました」

「はっはっは!子を持ち得た幸せを噛み締めながら食うに適した料理ではないか!喜びで昆布を使わないあたり、やはり六三郎は定石を好まぬ様じゃな!

だが、今の藤吉郎には最適じゃ!藤吉郎!しっかりと噛み締めながら食べよ!」

「ははっ!いただきます」

秀吉がお吸物に口をつける。じっくりと味わって飲むと

「とても美味しく、そして優しい味です。子を持ち幸せである事が続く様に祈りを込められている。それだけで、拙者は、拙者は」

と大泣きしました。殿も家臣の皆さんも、秀吉を見て涙目になりながら、静かにお吸物を飲んでいました。静かになったので、そろそろお開きかと思っていたら、秀吉が

「殿!この場を借りて、お頼みしたい事が」

「何じゃ?申してみよ」

「拙者の嫡男の幼名を付けていただきたく」

幼名の名付けを殿に頼んで来ました。お袋から殿のネーミングセンスは酷いと聞いているから、どんな名前が付くかと思っていたら

「儂が名付けて良いのか。ならば、長く待ち望まれた子じゃから、 長望丸(ちょうぼうまる) と名付けようではないか!」

「長望丸。素晴らしき名を付けていただき、ありがとうございます!これから、長望丸が健やかに育つ様に励んで参ります」

「うむ。六三郎の家臣の子が産まれた時にも言った言葉じゃが、子に恥じぬ親になれ!この先、辛い事も出てくるであろう。だが、子が産まれた日、そして皆で祝った日を思い出せば、大抵の事は乗り越えられるはずじゃ!」

「ははっ!殿の言葉を胸に刻み、これからも殿の為、織田家の為に働いていきます!」

「うむ。それでは、これを持って、藤吉郎の嫡男誕生の宴を終了とする!最期に、藤吉郎!おめでとう!」

「「「おめでとうございます!」」」

こうして、良い雰囲気で宴会は終わったんですが、俺はいつまで長浜城に居たら良いのでしょうか?