軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最優先にすべき事と致し方ない事

元亀三年(1572年)十月五日

美濃国 柴田家屋敷にて

「紫乃殿、道乃、三吉。夜遅くに済まぬな。これより大事な話があるから聞いてくれ。明日の朝一番に、この屋敷を出て岐阜城に移動して城内に居るであろう儂の父上にこの書状を渡してくれ」

皆様こんばんは。現在夜中に大事な話をしている柴田吉六郎です。武田が攻めてくるか分からないけど、利兵衛が言ってた「攻めてくる事を念頭に入れておいた方が良い」と言う事で、この三人の命を守る事を最優先にしないといけないので岐阜城に避難する様に話してる最中です

「もしや、戦が起きるのですか?」

紫乃さんが質問してきたけど、やっぱり大人は何かしら勘づくんだろうな。こんな時は隠してもしょうがないか。

「近くの城を武田が攻め落とした。もしかしたら此方にも来るかもしれぬ。そうなった時に逃げても遅い!それに儂は利兵衛爺から「其方達を守ってくれ!亡き主君道三公の血筋を守ってくれ」と頼まれた。

その事を織田家に隠さずに話して了承も得た。なのにも関わらず、其方達を死なせては利兵衛爺との約定も守れぬ人間になってしまう。

だからこそ万が一を考えて、岐阜城まで行ってくれ。

道中の安全の為に共の者もつかせる。だからこそ頼む」

俺は頼みながら頭を下げた。すると道乃が

「吉六郎様はどうなるのですか?」

質問してきた

道乃の声が涙声だけど、ここはちゃんと答えてやるか

「儂は父上の代理でこの土地を治めておる。上に立つ者が逃げては皆が信頼してくれぬ!だからこそ、儂は逃げてはいかぬ!戦になったなら戦う」

「そんな」

「道乃。儂の事を心配してくれる事、誠に有難い。しかし、其方達が生きているなら儂は安心出来る。だからこそ母である紫乃殿の言う事を聞いて岐阜城に行ってくれ」

「•••••分かりました」

道乃は分かってくれたみたいだな。なら次は三吉か

「三吉よ」

「はい」

「明日からしばらく住む場所が変わるが、ちゃんと母上と姉上の言う事を聞くのだぞ?」

「はい!吉六郎様」

うん。ちゃんと勉強してるからか、受け答えもしっかりしてる。これなら書状に書かせた事を親父達に任せても大丈夫だろう

「さあ、明日は早いぞ。ちゃんと眠って出立してくれ」

俺はそう言って三人を部屋に帰した

元亀三年(1572年)十月六日

美濃国 柴田家屋敷にて

「それでは吉六郎様、父上。行って参ります」

「「行って参ります」」

皆様おはようございます。昨日伝えたとおり、紫乃さん達家族を岐阜城へ送り出している吉六郎です。朝早くなので眠いですが、代理とはいえ当主が居ないのは宜しくないので頑張ってます

「うむ。道中の安全を祈っておる!気をつけて行ってくれ」

俺がそう言うと、三人と共の者が屋敷の門を出て行った。姿が見えなくなった事を確認すると

「利兵衛、お主も三人と一緒に行って良かったのだぞ。誠に儂と共に残るのか?」

「若様。某は若様が織田の大殿に詳しく話している時の顔を見て、若様をお支えしていく事が巡り巡って孫達の安全につながる。と分かったのです。だからこそ若様と共に残ると決めました」

そう言う利兵衛爺の顔は覚悟を決めた武士の顔だった

「そうか!ならば、もう細かい事は言わぬ。戦になったら、お主の経験からの采配を期待しておるぞ」

「はは」

そう言って俺達が屋敷に戻ろうとすると

「若様ー」

俺を呼ぶ声がした。振り向くと

「若様。刀鍛冶の孫六です。不躾ながら、ひとつよろしいでしょうか?」

美濃加茂村の隣に有る柴田家の領地の関川村の若い刀鍛冶の孫六だった。腕が良い刀鍛冶らしく若くして独立したけど、

独立して間もない十七歳くらいの令和や平成ならまだ高校生の若いにーちゃんだ。その孫六がどうしたのかな?

「どうした?」

「実は、自分の鍛冶場の外に置いていた刀を打つ用の鋼が盗まれたのです。それで、柴田家に話が伝わってないかと思いまして」

「いや、未だその様な話は伝わってないが。その鋼はどの様な形なのだ?」

「その鋼は、自分が山の中を歩いている時に見つけたものから取り出した筒みたいな形の鋼なんです。これは鉄が多いから良い玉鋼になると思って、錆び取りを頑張ったので、とても悔しくて」

おいおいおい。それって、あの火縄銃もどきの筒の事だよな?いや、多少の窃盗疑惑はあったけど、

状況が状況だけに「そんなの関係ねえ」とスルーしてたんだけど、返した後に万が一武田と戦になったら、全滅する危険がある。こうなったら

「そうか。そんなに良い鉄だったのか?」

「はい。あれなら素晴らしい刀になると思う程の良い鉄でした」

「ならば、これで別の鉄を買って、我々に刀を打ってくれぬか?」

そう言うと俺は懐に入れていた金を孫六の手に渡した

「若様。自分は」

「分かっておる。盗まれた鉄を探して欲しいのであろう?勿論探す事はするが、お主程の腕の者が認める程の鉄じゃ。

もしかしたら既に玉鋼になっておるかもしれぬし、刀になっておるかもしれぬ!そうなってしまっては取り返す事は不可能!

なればこそ、我々柴田家から鉄を買う金も、刀が出来た時の金も出す。もし見つからなかった場合を考えて、受け取ってくれぬか?」

俺が孫六の手を強く握りながら頼むと

「若様にそこまで言われては仕方ありません。分かりました」

そう言うと孫六は帰って行った。孫六の姿が見えなくなってから利兵衛が

「若様。孫六の言っていた鉄とはもしや」

「利兵衛。そこから先は言うな!今は戦になった場合、あれが必要なのじゃ」

正直、金にものを言わせるやり方は嫌いだ。だけど、今火縄銃もどきが無ければ、全滅の可能性がある。綺麗事だけではやっていけないよ

「さあ、利兵衛!屋敷に戻って武田が攻めてきた時の準備じゃ」