軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 茶で戦を終わらせた男

天正七年(1579年)五月十日

摂津国 石山本願寺周囲にて

「行けー!徹底的に攻撃するのじゃあ!」

「「「おお!」」」

場面と月日は少し戻り、此処は五月の頃の摂津国の石山本願寺を攻撃する織田軍本陣

何としても本願寺本拠地を陥落させたい羽柴秀吉は、朝も早くから、苛烈に攻撃していた

しかし、本来の織田軍総大将の佐久間信盛と家臣達は、相変わらず凡戦しかしておらず、本願寺の予想以上の抵抗と、佐久間との足並みの揃わなさに秀吉のイライラは募っていった

そんな日々の中、遂に

「佐久間殿!いつになったら、真面目に戦うのじゃ!このまま儂の軍勢しか戦わない状況が続くのであれば、儂は軍勢をまとめて領地に戻りますぞ!」

と秀吉から最期通告が出たが、当の佐久間は

「藤吉郎よ。本願寺はそこらの大名よりも強い。茶でも飲みながらじっくりと攻撃したら良いではないか。ほれ、一杯飲んでいかぬか?」

秀吉の主張を理解しながらも、茶を飲みながら聞いていた。それを見た秀吉は

「もうよい!」

強い言葉を残して、佐久間の元を去った。それを見て佐久間は、

「儂達だけで本願寺を屈服させる事は無理なのだから、殿達が来るまで、今は囲むだけでも良いと思うのだがなあ」

茶を飲みながら、呑気に呟いていた。秀吉と佐久間のそんなやりとりがあった2日後、

「殿!た、大変です!羽柴様が!」

「何じゃ?藤吉郎がどうかしたのか?」

「家臣を全員引き連れて、領地に戻られました!」

「ま、誠か!?」

「羽柴様の本陣に行きましたら、一人だけ残っていた家臣から、羽柴様が撤退した事を伝えられ、羽柴様が書いた文を渡されたのです」

「その文をを見せてみよ」

佐久間が文を手に取り、読み出すと

「佐久間殿へ!貴殿と本願寺にあたっていたら、兵がどれだけ居ても足りぬ!それに、やる気の無い者が側に居たら、士気にも関わる!なので、儂は領地に戻らせてもらう!

殿に何か言われたとしても、佐久間殿と共に戦う事は無理じゃ!もう、貴殿だけでどうにかしろ!」

と、書いており、それを見た佐久間は、

「藤吉郎が儂に怒り心頭で領地に戻ったか。とりあえず、この文は殿へ渡して藤吉郎をどうするか、決めてもらおう

しかし、苛烈に攻撃しておった藤吉郎の軍勢が居なくなったとなると、本願寺は勢いづくじゃろうなあ。こうなったら、怒りを鎮めてもらう為に茶の席に本願寺の者達を誘ってみるか」

「いやいや、殿。それは流石に」

「やるだけやってみようではないか!本願寺の者達に一切攻撃せずに、「茶でも飲まないか?」と矢文を毎日、送り続けよ」

「あまり期待しない方が良いと思いますが」

「口惜しいが、本願寺はそこらの大名よりも強い!ならば、強行策以外もやってみよう。それに、倅は儂以上に藤吉郎に嫌われておるし、

殿からの評判も少しばかり良くない。ならば、儂が改易や放逐された場合を考えて、皆が生きて次の仕官先に行ける様にしないとな」

「殿。そこまで考えていたのですか」

「まあ、儂の事は良い。前線の者達を下げよ。下げ終えたら矢文を送るのじゃ」

佐久間の命令で兵達を全員下げて、しばらく経ってから本願寺へ矢文を送る。本願寺は攻撃が無くなった事を警戒しながら、矢文を受け取り、顕如へ届ける

「法主様!織田から矢文が送られて来ました!」

「何か裏がありそうですね。まあ、先ずは矢文を見てみましょう」

顕如はそう言いながら、矢文を開いて読みだす

「本願寺の方々へ。拙者は織田家家臣の佐久間半介と申します。これまで戦をしておりましたが、此処で戦を一時的に止めて、茶でも飲みませぬか?

本陣にて、茶の席を準備しております。勿論、攻撃など絶対しませぬ。なので、一度、お考えください」

「何じゃこれは?戦を一時的に止めて茶を飲もうとは。何か罠でもしかけておるのじゃろうか。お主、どう見る?」

「某としても、罠の可能性は高いと思います。ですが、何もせずに放置するのも外聞的に良くないと思いますので、先ずは信者に代理として行かせてみてはどうでしようか?」

「様子見としては、それが最適でしょうか。とりあえず、それで行きましょう。それでもしも、信者が殺されたならば、攻撃したら良いだけです」

「では、その様に準備します」

顕如の側近が準備にとりかかり、信者を佐久間の本陣へ向かわせ、事情を話すと

「疑われても仕方ないですからな。少しずつ信頼していただけたなら、それで良いのですよ。ささ、先ずは一献」

と、佐久間は茶を振る舞った。それを続ける事、2ヶ月

「法主様。どうやら、佐久間殿は誠に茶を共に飲みたいだけの様です。このニヶ月の間、茶を飲んで体調不良になった信者、攻撃を受けた信者、一人も居ません」

「お人好しかもしれませんが、そこまでして私と茶を飲みたいと言っている人の茶を飲まないのは、失礼にあたりますね。佐久間殿の元へ行き、茶をいただきましょう」

こうして、遂に戦ではなく茶で本願寺のトップを動かした佐久間は、そこから顕如と茶を飲みながら過ごす事、1ヶ月。とうとう

「佐久間殿。一度、織田殿と話してみたい。佐久間殿の話を聞いていると、織田殿が巷で言われる様な、

己の野望の為だけに戦を行なう人間には思えませぬ。そして、織田家が天下統一を目指す理由も聞きたい

織田殿への取り次ぎをお願いしてもよろしいですかな?拙僧が納得出来る理由ならば、本願寺は織田家との戦を終える事を御約束しましょう」

「きっと顕如殿も、殿のお人柄に惚れてしまいますぞ」

「その時は、共に茶でも飲みたいですな」

「はっはっは。意外と早く、その時が来るかもしれませぬぞ」

こうして、本願寺との長い戦い、所謂、石山合戦が一気に終わりに近づいたのは、戦ではなくまさかの茶である事を信長は後々に知ると、大笑いした