軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2人の老将の最期

武田軍八千が壮絶な覚悟で突撃してくる事を見ていた織田徳川連合軍の若武者達は

「武田が無謀な突撃をしてくるぞ」

「先程と同じく様に種子島を撃ち続けたら、止まるじゃろう」

と、余裕を見せていたが、鉄砲隊を指揮していたこの男だけは違った

「これは、いかん!お主達!急ぎ種子島を撃つ準備をせよ!此度の突撃は、今までとは違う!」

叫んだ男は前田又左衛門利家。これまで数多くの戦場を経験した男の直感が、武田軍の空気が変わった事を感じ取った。

しかし、若武者達は

「前田様。何をそんなに慌てておるのですか?」

と、油断していた。

「そうですぞ。いくら、武田が突撃の人数を増やして」

若武者がそう言うと

パーン!パパパーン!

銃声が武田側から鳴り響く。利家は、咄嗟に体勢を引くした。

ドサッ!ドサッ!

利家の身体に何かが覆い被さる。

「な、何が」

利家がどかした「何か」は先程、油断していた2人の若武者の死体だった。最前線である1番下の鉄砲隊は、武田軍の鉄砲隊の攻撃を受けて死傷者が多数出ていた

その様子を見ていた武田の決死隊八千のうち、三千を率いる馬場信春は

「正面からの攻撃が止まったぞ!!突撃せよ!」

「おおお!!」

馬場隊の士気が最高潮に上がった。正にその時、

ターン!ターン!ターン!タターン!

2段目の鉄砲隊が火縄銃を休みなく撃ち続けた。

そして、その内の1発が

「殿!!」

「馬場様!!」

大将の馬場信春を撃ち抜いた。撃たれた馬場はもんどりうちながら、落馬した。

馬場の元に家臣達が集まると馬場は、

「何を、して、お、る。儂の、事、よ、り、も突、撃を続け、よ」

息も絶え絶えになりながらも命令を下した。命令を受けた家臣達は

「分かり、申した。殿!御免!」

涙を流して別れの挨拶を行ない、突撃していった。残された馬場は

「ふっ。これ、まで、幾、多の戦、場を、渡り、歩い、た、が、最期は、新しい、武器、で、討、死か。

古い、時代、の、武士、の、儂、らし、いか。お、館、様。今、そち、ら、に行き、ます、る」

そこまで言うと馬場は息を引き取った。多くの戦場を渡り歩いた老将の最期は、火縄銃という最新鋭の武器で、

名もなき足軽に討ち取られるという、新たな時代の象徴とも言える出来事だった。

馬場が討ち取られても、残った決死隊の戦は続く。中央を馬場隊が攻めていると報告を聞いていた内藤は迂回して、側面から突撃していた

「側面の守りは薄いぞ!このまま突き進め!!」

「うおおお!!!」

内藤隊の気迫に一部の若武者達は足がすくむ。それを見た内藤は

「どけ小童ども!戦場で怯えるならば、家に帰って母御の乳でも吸っていろ!」

凄まじい咆哮を聞かせ、家臣達と共に若武者達を蹴散らしていく。順調な進軍に内藤は

「このまま突撃して織田と徳川の首を取るぞ!」

「おおお!」

家臣達の士気を更に上げる。しかし、そんな時、

「殿!我々の後方から敵襲でござる!」

「何じゃと!?ええい!そ奴らの相手をしておる暇はない!捨ておけ!狙うは織田と徳川の首だけじゃあ!」

後ろの敵よりも前への突撃を取った。しかし、

「殿!後方の味方が次々と討ち取られて、ぎゃああ!」

後ろの敵は、内藤隊を討ち取りながら一気に大将の内藤昌豊の元まで進んで来た。

味方が討ち取られ続けた内藤隊は大将の内藤昌豊含む残り200名になっていた。

突撃を止められた内藤は

「貴殿が我々を止めた軍勢の大将か!我が名は内藤修理亮昌豊。貴殿の名は、何と申す?」

「我が名は柴田権六勝家じゃ!」

「あの武名高い「鬼柴田」殿か!これは良い!貴殿を討ち取れば、織田の士気も下がるはずじゃ!槍合わせ願おう!」

内藤の指名は周囲に聞こえていた。それを聞いていた利家は

「親父殿!受けてはなりませぬ!相手は死を覚悟した死兵ですぞ!槍合わせなら、儂が」

勝家の代わりをやろうとした。しかし勝家は

「又左!!まるで儂が討ち取られるかの様な物言いじゃな。そんなに儂は信頼出来ぬか?」

後ろの利家に背中越しに聞いた。聞かれたら利家は

「い、いえ。その様な事は」

「ならば種子島の部隊をまとめて、他の敵襲に備えておけ」

「は、ははっ」

利家が引いた事で勝家は内藤に向き合い、

「待たせたな内藤殿。改めて槍合わせ、お受けいたす。いざ、尋常に!」

勝家の言葉に内藤は思わず笑顔になり、

「参る!行くぞおおお!!」

宣言すると馬を叩き、一気に加速する。内藤と同じく騎乗している勝家も

「此方も参る!!うおおおおお!」

馬を叩き加速する。そして、

「「うおおお!」」

内藤は槍を正面から、勝家は上段から相手に向ける。槍が届く距離になった瞬間

ゴンッ!

と鈍い音が聞こえた。互いに馬の向きを元に戻すと、内藤は

「お見事」

と言いながら落馬した。落馬した内藤は右腕が鎖骨の所から折れた様で、

「人生最期の一騎打ちが、柴田殿の様な名のある武士で満足じゃ。そんな柴田殿に一つお頼み申す。拙者の首で、家臣達を見逃してくれぬか?

敗戦の責は、大将である儂だけが背負う。なので」

内藤の頼みに勝家は

「良かろう」

了承したが、

「親父殿。殿の了承を得ずに」

「殿は御理解してくださるはずじゃ!武士に二言をさせるな!」

利家が異議を唱えたが、勝家は退けた。そして、

「内藤殿。介錯は任せよ」

「忝い。お頼み申す」

「では。ふん!」

勝家は内藤の首を一刀で落とした。その後、内藤の家臣達に

「殿の御前にお出しした後、ちゃんと、首はお返しいたす。内藤殿の最期を無駄にしない為に、降伏なされよ」

降伏する様に言い、家臣達も言葉に従った。

こうして内藤隊も一応、全滅した。

残りは山県昌景率いる赤備えだけになった。