軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第224話 ~状況整理1~

「状況を整理するぞ」

自爆特攻ワイバーンによって船の下側面部分にできた穴の損傷軽度を確認してきた後の、ドスの効いたノアの声に船に乗っていた全員が一も二もなく一斉に頷いた。触らぬ神に祟りなしという言葉が勇者召喚勢の脳裏に浮かぶ。

夜を万が一の警戒のために甲板に残して残り全員は船の中にある広めの部屋に集まった。夜には俺と繋げた『念話』で会議に参加してもらうことにする。

「まずこの空挺船の損傷だが、風向きによってはこのままでも魔族領へ着くだろうというのが私の見解だ。……この船が空に浮かんでいて良かった。船の名の通りに海に浮かんでいればまず沈んでいただろう」

ノアの言葉に俺たちは安堵のため息を吐いた。

襲撃があった時、非戦闘員の細山たちはいち早く損傷部分の確認及びどうにか修復できないかと試行錯誤していたそうだ。特攻ワイバーンが穴から船内部に居た可能性もあったのだが、幸運にも自爆した後ぶつかった衝撃で海に落ちてくれたらしい。

「……それと、神アイテルからアメリア王女への詫びを受け取っている」

どうやらノアはアイテルが憑いている状態のアメリアと会話したらしい。いつもよりもどこか様子のおかしい夜も同じタイミングでアイテルから何か言われた可能性が高いな。

「アイテル様が私の体を使われていた時の様子は私の中からはっきりと見聞きしている。それも聞いていたし、そもそも私の職業である『神子』の能力もつい先程その内容を僅かながらに知ったところ」

ダリオンも言っていたが、『神子』を通じて人間に接触する神が降りるのはこれまで“大和の国”に限定されていたらしい。それによって他の種族もアイテルは“大和の国”から出られないと勘違いをしていた。

ノアから聞くところによると、そもそも『神降し』というのはその身ひとつで実行できるものではなく、場を清めたり神子本人も衣装を身に纏って歓迎の舞を舞ってと、かなり時間と手間暇がかかるものであるそうだ。だが、アメリアは何の準備も清浄もなくその身に神を降した。おそらくアメリア自身のエルフ族としての体の耐久力や測定不能な魔力でそれらを全て補っているのではないかというのがこの世界出身者たちの見解だ。つまりは、『神降し』はアメリア本人にも予測できなかった事態ということになる。

エルフ族と人族で『神子』についての情報量も違うようだし、その辺のすり合わせも必要だろうな。アメリア曰く、アイテル神を信仰しているのはエルフ族のみであるというのに、実際に神の声を聞き神託を受けるのは人族であるというところにエルフ族の嫉妬やら妬みやらが重なって意固地になり、情報をシャットアウトしていた可能性が高いらしい。誇り高きエルフ族でもそんなことあるんだな。

「で、襲撃してきた魔族によると、神の言霊のおかげで魔物の襲撃も一時的に止むそうだな?」

ノアが確認するようにこちらを見てきたので頷いた。

「確かに、ダリオンは少なくともこの船を降りるまでは戦わないことと言っていた。魔物たちにもそう言い聞かせておくと」

「そうか。では、少なくとも一日は魔物の警戒すら不要になるかもしれんな。相手の慎重さによってはそのまま私たちがこの船を降りるまで攻撃してくることもないだろう」

つまり、事前に決めていたシフトが多少楽になるということだ。

「今更ではあるが、ここらで常識や何やらのすり合わせをしておきたい」

浮いた時間をどうするかとの問いにノアは真剣な顔でそう言う。

常識とはどう言うことだろうかと聞く前にノアは顔を勇者たちの方へ向けてしまった。

「お前たち。アキラ以外の子供たちだ。さてはアイテルのことも知らんな? そればかりかこの世界の常識も曖昧なのではないか? おいジール坊、最初の指導者はお前たちだろう。何をしている? 今時こんな世間知らずも珍しいぞ」

ノアの睨みにジールさんは苦笑いを浮かべて視線を逸らす。

世間知らずとの言葉に勇者に見えないダメージが入ったのが分かった。

「いやぁ、あの時の主君レイティス王に勇者召喚者たちには何の情報も渡してはならないと命じられていましたので。それに、ちょうど騎士団でクーデターを起こそうとしていた時期でしたし」

そういえばサラン団長から、王は王妃を亡くして心を壊して、たくさんの命を代償に王妃を蘇生させようとする計画を立てていたため、騎士団がクーデターを起こすのだと計画の大枠を聞いたことがある。

「で、お前たちは蔵書室の出入りを禁じられたことを馬鹿正直に守ってこの世界での初動が遅れたわけだな?」

叱られている勇者たちを俺はあーあという気持ちで眺めていた。こいつらに知られずに動いていた俺が言えたことじゃないが、ある程度大人の言うことは破って生きたほうが上手くいくことがある。

まあ明確に禁止されていたレイティス王城から逃げ出した後もあまり情報を集めることはしなかったそうだし、情報に対する認識もまだまだ甘いのかもしれない。

「……言い訳のしようもないな。忙しさや世界を渡ったことで慣れないことが多くて戸惑っている間に流されていたのは事実だし」

素直に勇者がノアに頭を下げて教えを乞うていた。他のメンバーも同じように頭を下げている。

これがこいつのすごいところだよな。俺は自分の欠点や過ちを認めることが怖いので、こいつのように素直に頭を下げることはできない。

「よろしい。では、まずはこの世界の名前及び誕生神話から語っていく。一応諸説あるのでそういう昔話があったんだなと思っておけ」

そう言ってノアは俺がサラン団長から聞いた神話とほとんど同じ話を勇者たちに語り始めた。やはり世界を語るには神話からなんだな。

サラン団長にあの中庭の噴水のそばで教えてもらったことをまだ昨日のことのように鮮明に思い出すことができる。

「……サラン団長に会いたいな」

大元の仇は討った。そのことを褒めてくれるだろうか。

いや、褒めてくれるわけないか。人殺しだもんな。