軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第135話 〜グラム〜

「私は養子の身ですし、私が王族になったときにはグラム様は既に宰相をおろされていましたから、私もよくは知りませんが……」

リアはそう言って俺の顔をちらりと見た。

俺はそれでもと頷く。

「それでも構わない。リアから見たグラムとその印象を教えてくれ」

じっとその目を見つめると、それに負けてか、リアは観念したようにため息をついた。

俺とアメリアは椅子に深く腰掛けて話を聞く。

「グラム様は現王イグサム・ラグーンの姉の一人息子としてお生まれになりました。現王の家系は代々子に恵まれず、グラム様がお生まれになったときは大層お喜びになられたようです」

ああ、なんか話が読めてきた。

俺はテーブルの上に置いてあるクッキーのようなお菓子をつまんだ。

「そして、現王をはじめ王族の方々に可愛がられて育ったグラム様は……その、傲慢な性格に成長してしまい、世界の全ては自分のものであると錯覚されるようになったそうです」

生まれた場所が王家だったせいで、良くも悪くも自分の願いがなんでも叶えられる環境にあったわけか。

いいねぇ、生まれてからの勝ち組は。

生まれる場所が選べないとはいえ、落差がありすぎやしないか?

「現王にねだって宰相の位についた後はやりたい放題。女を侍らせ、子どもを売り、男を自らの傘下に入れる。逆らうものは自分が雇った傭兵をつかって殺す。……本当に、自分が気に入った人間以外を人間と思わないような人だったようです」

そしてそれがバレて宰相を降ろされ、ギルドマスターになったと。

リアも思うところがあるのか、静かに視線を落とした。

「ギルドマスターに任命されたあとも好き勝手して、もう王にも止められなくなりました」

俺は首を傾げる。

現王の甥といえど、そんなに権力があるものなのか?

「獣人族では甥にも権力を持たせるの?追放したのに」

俺が言いたかったことをアメリアが代弁してくれた。

そうそう、それが言いたかった。

「いえ、グラム様の持っている権力はギルドマスターであることだけ。問題はその兵力にあります」

「雇ったっていう傭兵か?」

俺の言葉にリアは頷いた。

紅茶で口の中を潤したあと、続きを話す。

「そうです。その傭兵たちは……ふがいないですが、王国の一番強い部隊でも歯が立ちません。裏で流れている違法の薬にも手を出しているため、身体能力がけた違いに上がっています。……もはや、人間ではない。言葉も話せないし、おそらく普通の生活もできないでしょうね」

唇を噛むリアの姿に、色々と察するものがあった。

どうやら、その傭兵とやらを見たことがあるらしい。

「どんなだったの?」

お菓子を口にもごもごといっぱい詰め込んでアメリアが尋ねる。

こいつ、本当に味わって食べているのだろうか。

お菓子のような高級品、そうそう食べられるものじゃないぞ。

「そうですね……私から見てですが、無理やり体を動かしているような印象がありました。たぶん、薬によってでしょう。殺戮人形になり、命令しか聞けない体になる。まだよくは分かっていないのですが、それを可能にする薬があるようです」

口調的に麻薬の類ではないようだな。

「裏に通ずる薬か……だとしたら、それを作っているやつは薬師か調合師か、それなりの職業のやつなんだろうな。普通の奴にそんな薬を作るのは無理だろう」

「ええ。国としても調べているのですが、いまだに見つかっていません」

職業というステータスは俺たちの常識を変えてしまう力を持っている。

それは、この世界に来てから嫌というほど味わってきた。

俺もクラスメイトも、日本では魔物など殺すような力は持っていなかった。

日本の俺たちと今の俺たちの違いは職業の有無とステータスが目に見えること。

これは大きな違いだ。

職業が生まれたときに決まっていれば、将来に不安などない。

そして、ステータスが見えるということは自分の得手不得手が見えるということ。

日本と違い、死の危険が付きまとうが生きやすい世の中ではある。

ただ日本と同じであるのは、そういう力を悪用する輩が必ずと言っていいほどいるということ。

人間を殺戮兵器に変えてしまう薬が作れるのなら、病にかかった人を助ける薬も作れるだろうに。

「国で見つからないのは仕方ないだろうな。裏の人間だ」

「はい。イグサム王も同じ見解です。今回のアキラ様をお呼びした件もこれに関係していると、私は推測しています」

俺は見えてきた王城を見上げてため息をついた。

はてさて、獣人族の王イグサムの呼び出しが吉と出るか、凶と出るか。

今のところ嫌な予感はしないが、王という人種を信用してはならないことは、この世界に来てからよく学んでいる。

用心するに越したことはないだろう。