軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第128話 〜無力〜 佐藤司目線

本当に、一瞬だった。

一瞬で囲まれ、囲んでいた奴らは一瞬で膝をついた。

俺たちがしたのは、する必要もない警戒とただ見ていることだけ。

俺たちが手を出すまでもなかったし、ここにいる必要もなかった。

「さあ、答えなさい。あなたたちの狙いは何?グラムは今どこにいて、何を企んでいるの」

彼らが膝をついている魔法をかけている腕を徐々に下げながら、アメリアさんが尋ねる。

その目に光はなく、とても冷たい。

尋問されているのは俺ではないのに、何でも答えてしまいたくなる。

パーティーのみんなも俺と同じような気持ちなのか、その顔は青ざめていた。

俺たちはアメリアさんがか弱いことを疑わなかった。

戦っている姿を見たことがなかったし、何より戦う姿が想像できなかったから。

アメリアさんが弱く、守られる対象として認識した前提での護衛計画だった。

つまり、俺たちの計画は最初から破綻していたということだ。

晶は分かっていたのだろうか、こうなることを。

「お、俺たちは、な、なにも知らない!本当、だ!」

顔を恐怖の色に染めて、コンテストの大会委員長が答えた。

哀れにさえ思えるその顔を見ても、アメリアさんの表情は変わらないどころか、不快さに顔をしかめている。

「私がこの世で一番嫌いなこと、なんだかわかる?」

その細腕が少しずつ下がっていく。

もはやその目に光などなかった。

潰れた悲鳴を上げる彼らに、その瞳はどんな風に見えているのだろう。

「それはね、嘘をつかれることよ。知らないというあなたの言葉、嘘。私はあなたの何十倍は生きてきた。そんな相手に嘘なんて通用すると思うの?」

エルフ族は総じて長寿であるというのは、この世界の常識で、常識に疎い俺たちでも知っている。

が、戦う姿然りどうも想像がつかないのだ。

黙りな黒服たちにクロウさんが重い口を開いた。

「早めに答えることを推奨する。この王女、本気だぞ?」

つまりは、このアメリアさんはこの場で人を殺す覚悟があるということだ。

守らなければと思っていた少女にはその意思があるのなら、俺たちにそれを止めることはできない。

いや、実力で考えても俺たちでは止めることができないだろう。

彼らが何かに押しつぶされていく様を、どこか他人事のように見ていた。

「わ、分かった!!分かりました!は、話します!」

ミシミシという骨がきしむ音が響く中、一人の黒服が声を上げる。

あと数秒遅ければ、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

アメリアさんは手を少し上げたが完全に魔法を解いたりはしなかった。

「そのまま話しなさい。誰か一人でも変な動きをすれば、全員圧死よ」

アメリアさんが続きを促す中、黒服の一人がコンテストの優勝者の臓器を売っていることを話す。

その内容は津田が持ってきた情報と完全に一致した。

アメリアさんの表情がどんどん険しくなっていく。

「そう。つまりは景品というのも嘘で、私をバラバラに解体してどこかのイカれた人たちに売りさばくつもりだったのね」

無意識だろうか。

魔法をかけている手をどんどん下げているような。

「はい、ストォォォップ!!」

あわや本当に圧死するかと思いきや、その手は寸前のところで、暗がりから現れた人物に止められた。

その人物が誰なのかを理解して、俺たちはさらに警戒を強める。

「ダメじゃないか、ココは君の国とは違うんだよ?相手が裏の人間だろうと、殺すのはだめだよ!」

ラスティ、本名はラティスネイル。

コンテストに出て、アメリアさんと同じく優勝した魔族らしい。

俺は男性の部の方にいたから分からないが、奥まったところにある男性の部のステージにも歓声が聞こえるくらいの大盛り上がりだった。

「あら、ラスティ。この国では生殺与奪は相手が犯罪者に限り認められているわよ?正確には正式な決闘をした後だけれど、あちらがかかってきたのだから、これも決闘にカウントすれば大丈夫」

アメリアさんがキョトンとした顔で物騒なことを言っているが、魔族はその手を離さない。

「僕はね、例え悪人でも人間には人間の物語があって、それは他人によって絶対に奪われちゃいけないものだと思ってるんだ。だから、僕の前で人は殺させないよ」

フードの隙間から見える紫色の瞳はこの瞬間だけ静かに凪いでいて、口調もどこか厳しかった。

その変化への驚きからか、アメリアさんの手から力が抜ける。

それに合わせて魔族もアメリアさんから手を離して、いつものように飄々と笑った。

「ま、そんなに殺したいなら僕が見てないときにどーぞ!僕は正義の味方だけど、だからって目の届かない場所にいる人まで救えるわけじゃないからねー」

二カッと笑う魔族に毒気を抜かれたのか、逃げられるようになったはずの黒服たちも動かなかった。

クロウさんが国の役人に黒服たちを引き渡しているところを見ながら思う。

……結局、俺たちは何をしにここへ来たのだったか。

晶に認めてもらうためだったが、実際は来ただけで終わってしまった。

したことといえば、晶を祭りに誘って、必要のない警戒をして、必要のない護衛計画を立てていただけだった。

いや、何かを守るなんて今の俺にはできそうにもない。

己の無力さを痛感した。