軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第114話 〜入場〜

興味の引かれる屋台に寄りつつ、コンテスト会場であるマリに着いた。

アメリアが食べたことのない食べ物の屋台で足を止めたり、上野や和木がゲーム屋台で時間を食っているうちにコンテストの時間ギリギリの到着となってしまった。

本当はもっと余裕を持って着く予定だったんだがな。

……ところで、上から見ていて思ったのだが、アメリアの胃袋はブラックホールか何かなのだろうか。

両手に抱えていた食べ物は誰の手も借りずにアメリアに吸収されたし、アメリアに声を掛けようとしていた男たちが退散するほど、屋台で食べ物を買っていた。

俺に言われたからか、アメリアの隣に守るようにして立っている京介の表情も、若干引きつっているように思う。

「遅かったな」

マリまで来るとあれほど押し合い圧し合いしていた人たちは散り、見通しが良くなった。

いるのはコンテストに出場する人とその付き添いの人だけだ。

大したゲートもなかったため、出場しない人も何人かいるかと思ったが、マリには屋台があまりないためか、コンテスト関係者以外の姿は見えない。

それだけでもすごい人数だが、前から歩いてくるクロウとジールさんが分かるくらいには空いていた。

「ん、いいじゃない。お祭りなんだもの。羽目を外して遊ぶものでしょう?」

一番楽しんでいたアメリアが、持っていた食べ物の最後の一口を飲み込みながら言った。

俺はアメリアの隣に着地して『気配隠蔽』を解除した。

「ともかく、コンテスト会場に入ろう。ここは視線を集めすぎる」

突然現れた俺への勇者たちの驚きの視線を感じながら、コンテストの受付をしているところに促す。

現在アメリアは何も食べてないため、その美貌がまんま表に出ている。

そのため、先ほどからコンテスト出場者と思わしき女性たちからの絶望的な視線と、コンテストに出場する女性たちの付き添いでマリに入っているだろう男性たちからの熱い視線がアメリアに突き刺さっているのだ。

本人は注目されることに慣れているから恐らく気づいていないが、アメリアと付き合っている俺からすると許容できるものではない。

「……ところで、誰が出るんだ?」

一応確認を取っておくと、アメリア、細山、上野、勇者が手を挙げた。

「こんなん滅多にないやん?楽しそうやなーと思うてさ!」

「元々モデルとか興味があったから」

「景品獲得の確率が三倍に増えた」

元気よく言う上野とモデル体型の細山は置いといて、景品にしか目がないアメリアはどうなんだ。

しかも、上野や細山が優勝しても景品は貰う気満々である。

流れでチラリと勇者を見ると、勇者は恥ずかしそうに鼻の下を擦った。

「お、俺も興味あったからな!それに、男性の部もささやかだが景品が出るらしいし、もし食べ物だったらアメリアさんにあげるさ」

その言葉に目を輝かせるアメリア。

「本当!?」

「あ、ああ」

アメリアの食い意地には勇者も苦笑してタジタジだ。

コンテストの受付が俺たちの番になった。

「では、こちらに出場される方の氏名を記名の上、身分を確認できるものをご提示ください。付き添いの方も同様にお願い致します」

受付の女性の言葉に、全員が冒険者ギルドのドッグタグを見せる。

手っ取り早い身分証だ。

……しかし、氏名の記入と身分証の提示だけとは、意外と警備はガバガバか?

受付嬢が一人一人確認していく中、アメリアのドッグタグを見て固まった。

「あ、え?ああ、あの、少々お待ちくださいませ!」

まぁ、エルフ族の王女が来ていたらそうなるか。

慌てて上の人間を呼びに行った受付嬢の後ろ姿を見てそう思う。

獣人族領ではアメリアの美貌こそ注目されたが、アメリアがエルフ族の王女であると気づいた者はいなかった。

エルフ族は元々フォレスト大陸に引きこもっているし、知名度は低いのかもしれないな。

名前と職業は広く伝わっているらしいが。

「お、お待たせ致しました、アメリア王女様」

しばらくして、受付嬢の代わりに今にもスリスリしそうな手をした、責任者らしき者が寄ってきた。

辛うじて笑みは浮かべているが、アメリアのことを見定めるようにジロジロと視線を動かしている。

「大変失礼ではございますが、御身がエルフ族の王女であることを証明できるものが他にございますでしょうか?警備は年々厳しくしておりますが、あらゆる手を使って他人に成りすます輩が増えておりまして……」

つまり、このアメリアが、無粋な輩が成りすました偽物か疑っているらしい。

外見だけの雌雄を決する場所なのに、知名度は必要なのか?

「そんなことして意味があるのか?」

京介も同じことを思っていたのか、首をかしげて男を見る。

脂汗を額にびっしりと浮かべた男はヘラヘラと笑った。

「は、はぁ、私どもも不思議ではあるのですが、コンテスト時に一人一人お名前をお呼びするので、名前の知名度が高ければ注目はされますねぇ」

この人数を一人一人見る観客も大変だが、名前を呼ぶ運営側も大変だろうな。

「なるほど、これでいい?」

アメリアが出したのは、リアム宛にエルフ族の王から持たされた手紙の封筒だった。

裏の封蝋にはエルフ王の紋章が刻まれている。

それを見た途端、男は顔色を変えて頭を下げた。

「た、大変失礼いたしました!どうぞごゆるりとお楽しみください!」