軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

罰ゲーム

さっと、メイドが用意した手鏡を見てご満悦の王妃様。赤い宝石のピアスを気に入ってくれたようで良かった。

王妃の耳に穴を開けた時に全く痛みがなかった事に驚かれたが、魔法を駆使している事は秘密にした。

その後、しばらく談笑してお開きとなる頃、バネッサとアイリスが酔いつぶれていた。よくもまぁ、こんな時に潰れるほど飲めるもんだ。

「では、そろそろお開きにしましょうか」

と、帰ることに。

マーギンはバネッサを抱き上げてロッカに乗せる。

「マーギンが背負わないのか?」

「アイリスも潰れてんだよ。二人も背負えん」

マーギンは手慣れた手付きでアイリスを抱き上げてくるんと回して背負う。

「騒がしくして申し訳ありませんでした」

と、挨拶をして大隊長に連れられて馬車まで移動した。

「いーなぁー、私も寝ちゃったらあんなふうに連れて帰ってもらえるのかしら?」

「あなたが寝たらメイドが連れて帰るわよ」

と、王妃は笑ったのであった。

ー馬車の中ー

「マーギン」

「なんだシスコ?」

「男性が女性に選ぶ赤色の意味は忘れたの?」

「なんだっけ?」

「成人の儀のリボンでリッカちゃんを勘違いさせたのもう忘れたのかしら?」

「あっ…」

あなたの事が好きですとかそんなんだったな。

「俺は選んだだけじゃん」

「王様が凄い目で見てたわよ。耳飾りをマーギンが着けなかったのは正解ね」

それを聞いて自分の嫌な予感を信じて良かったと心から思うマーギン。

「王妃様とどんな話をしていたの?」

「まぁ、どこの国から来たのかとかの身辺調査みたいな質問かな。特に怒られるとかはなかったよ」

「それなら良かったわ。姫様が抱き着いた事を盾に何か難題を押し付けられてるんじゃないかと思ってたの」

<どう責任を取るおつもりかしら?>

王妃の言葉がマーギンの頭にリフレインする。

「だ、大丈夫だと思うよ…」

マーギンはシスコに誤魔化したのであった。

ー王妃私室ー

「この金貨の金の含有量及び発行した国を調べなさい」

諜報部にマーギンが持っていた金貨を調べさせる王妃。これが作り物なのか、本物であれば転移魔法の事が本当かどうかを探る手がかりになるのだ。

ー王の私室ー

「マーギン以外のメンバーの事も調べておけ」

他のメンバーも騎士隊より強かった事を疑問に思った王。特にアイリスの魔法は宮廷魔道士たちより能力が高いと驚いたのであった。

ー宴会から数日後の大隊長室ー

大隊長は大きくため息を付いた後にオルターネンとローズを呼び出した。

「お呼びでありますか」

二人が大隊長室にやってきた。

「うむ、二人の異動を通達する」

え?

ローズは護衛任務失敗を問われ、第四隊へ戻される事を覚悟した。

「まずはオルターネン。お前を特務隊隊長に任命する」

「特務隊?特務隊とはなんなのでしょうか?」

オルターネンは隊長への昇格より、聞いたことのない隊に異動と言われたことに戸惑う。

「騎士隊による魔物討伐部隊だ。特務隊はこの4月から新設する。初めは小規模部隊になるからお前が部下を選べ。そのうちもっとも大きな部隊になる可能性を持っているから、部隊が大きくなった時に自分以外にも指揮を取れるような者を選んだ方がいいぞ。騎士の中で人選が難しいようであれば軍から引き抜け。身分は問わん」

「軍からですか…」

「そうだ。これは陛下からの直接通達だ。軍にも話は通っておる。軍は魔物討伐部隊は我々に任せろと言ったようだが陛下が騎士隊でやると押し切ったのだ。軍の統括と話をするなら俺も呼べ」

「か、かしこまりました」

「マーギンは春にはどこかへ数ヶ月ほど行くそうだ。相談するなら早い方がいいぞ。オルターネンには本日を持って第三隊小隊長の任を解き、自由行動を認める」

「はっ」

「次にローズ」

「は、はい…」

「お前は第一隊への異動を命ずる」

「えっ?」

「カタリーナ姫様付きだ。姫様は今年成人され数年間は見聞を広める為の期間となる。その護衛をローズにやってもらう」

「し、しかし私は…」

「姫様付きになった後は俺の指示より姫様の指示が優先となる。大変だとは思うがこの重責をやり遂げてみせろ」

「か、かしこまりました」

二人が呼び出された用件は人事異動であった。しかも前例が無い異動内容。二人は大隊長室を出た後にお互いに顔を見合わせてどういうことだ?と驚いていた。

後日、オルターネンとローズの異動通達が騎士隊本部に張り出され、それを見た騎士達はどよめく。

「なんだ特務隊って?魔物討伐部隊だと?」

「ローズが第一隊でカタリーナ姫様付きってどういうことだ?」

二人以外にも第一隊の大幅な入れ替え、第二隊長が第一隊隊長に異動、第三隊長が第二隊長への異動、各小隊長への昇格もあり、春の人事異動で大きく騎士隊の体制が変わって行くのであった。

ー職人街ー

「進んだ?」

しばらく顔を見せなかったマーギンがやってきた。

「おう、マーギン。樹脂を色々と試してんだが難航しててな」

「まぁ、簡単に出来たら誰も苦労をしないよ。何かを混ぜるのがうまくいってないのか?」

ガラス工房のリヒトと植物を研究しているゼーミンが樹脂研究をしている。ガラス工房は他の者に任せっきりになっているようだ。

「こいつがうまく使えればいいんだけどよ」

「どんな問題があるんだ?」

「この繊維と樹脂を混ぜれば刃物でもなかなか切れなくなるぐらいの強度を持つんだが高熱を加えると脆くなりやがる。なんとかプレスの熱に耐えられるように出来ないかと行き詰まってんだよ」

「へぇ、刃物でも切れない繊維か。面白そうな素材だね」

と、マーギンは見せてもらい、試しに切ってみるが魔鉄で出来た包丁でもなかなか切れない。

「これ、防具に使えるんじゃない?」

「防具に使うにゃ固めにゃならんだろ?」

「いや、服にすればいいんじゃないかな?シャツみたいにして着たら斬られる事を防げる。衝撃は防具で防いでも防具の隙間を斬られる事があるからね」

「斬れなくても、衝撃は食らうぞ」

「いや、斬られないってことは大量出血を防げるからね。治癒魔法使いがいれば死ぬ確率がぐんと減る。血を失うと治癒魔法でもどうしようもないから」

「なるほどな…」

「これで服を作れたらハンター以外にも騎士や軍に需要があると思うよ。騎士とかに話を持っていくなら俺が口を利いてやるから」

「本当か?」

「あぁ、騎士隊と軍に採用になったら専用工房作らないといけないぐらい注文が入るんじゃないかな?」

「ゼーミン、それをやろうっ。魔道具以外の売りが出来るぜ」

「こ、これが本当に儲かるものになるのでしょうか…」

ゼーミンは自分の研究が商売になりそうなのと、国に貢献するような物になりそうな事が信じられないようだ。

「その心配より材料が注文通りに入手出来るか心配したほうがいいぞ。国絡みの仕事は注文がきました、出来ませんは通用しないからね」

「そうか、なら素材は採取じゃなしに栽培しないとダメですね」

「この繊維は木から取れるのか?」

「いえ、草なんです」

「草?すぐに栽培出来そうか?」

「はい、株分けしてやれば増えます。ただ、それをやる人員と土地の確保が私には…」

「んー、それはちょっと考えてやるよ。その前に一度試作品を作ってみようか。それで実験して、物になるなら騎士隊に需要があるか聞いてみる。それから土地と人員の確保する方がいいね。多分需要はあると思うけど、全部作ってからいりませんと言われたら困るし」

ということでそっちの開発もすることになった。

「それは良いけどよ、樹脂の方が片付いてないぞ」

「俺は長い繊維でなくても良いと思うんだよね。防具ほどの強度は必要ないんだし。紙になる繊維とかでいいんじゃない?」

「紙の原料ですか?」

「紙も厚くなればある程度の強度があるだろ?樹脂と混ざれば十分な強度を保てるんじゃない?」

「そっ、そうかもしれませんっ。リヒトさん、試してみましょう」

次に話し掛けて来たのはジーニア。魔道具の回路師だ。

「マーギン、特許制度が正式に決まったぞ。受付は4月1日からだそうだ」

「へぇ、早かったね」

「回路以外にも道具とか色々なものに適用されるらしい」

「それは良かった。せっかく作っても真似されて安く売られたらたまらんからな。受付日に今の奴を登録出来るように用意しとけよ」

「分かってる。基本的なやつはここの職人組合として登録するつもりだ。それ以外は開発したやつの名前で登録する。基本的な奴は登録無理かもしれんけどな」

「まぁ、俺がいた国もすでに出回っているものは特許対象じゃなかったからね」

「お前の魔導インクを作れる魔道具のお陰でたくさん実験が出来るから、回路師達は助かってる。きっと良い物を作ってみせるよ」

「おぉ、どんなのが出来てくるか楽しみにしてるわ」

うむうむ、まだ商売に繋がってはいないけど活気があって宜しい。上手く進むといいな。

マーギンはそれからマジックドレインペンダントを完成させてヘラルドで実験。魔力を吸い続けることはなかったが、溢れた魔力だけを吸い取るかどうかまでは確かめられなかった。

「ヘラルド、こっちは魔力を吸い続けるもの。いわゆる危険物だね。新型の効果が無かったらヘラルドがこの危険物を使って治療してあげればいい。でもヘラルドがうっかり持ち続けて死んでも責任はとれんよ」

「わかっとるわい。マーギン、これがあれば助けられる奴が出てくる。感謝するぞ」

「うん、頼んだよ」

と、旅に出る前の仕事を終えていく。

後は飯のストックを作っていくだけだな。

マーギンは買い物をしてはおかずを作り、ご飯を炊いていく。パンは毎朝焼いてもガキ共が食い尽くしストックが出来ないのでパン屋でハードパンを仕入れていく。そんな日々が続いた後にオルターネンがやってきた。

「あれ?非番?」

「マーギン、相談があるんだが良いか?」

「いいけど」

マーギンはオルターネンを家に入れて話を聞くことに。

「え?騎士隊に魔物討伐専門部隊が出来るの?」

「そうだ。特務隊の初代隊長に任命されたのだ」

「出世…だよね?」

マーギンは恐る恐る聞く。騎士隊は貴族や王族と王城を守る職位。それが魔物討伐とか先日の訓練失敗の罰ゲームかと心配したのだ。

「当たり前だ。陛下自らのご提案なのだ。前例のない部隊だから少数精鋭で始める事になっている」

「何人ぐらいでスタート?」

「俺を含めて6人だ」

やっぱり罰ゲームなんじゃなかろうか?ハンターのパーティ結成と変わらん。

「メンバーは?」

「俺が好きに選ぶことになっていてな、どのようなタイプを集めれば良いか相談をしたいのだ」

「あぁ、各担当ってことね。基本は斥候、剣士、魔法使い、盾役、治癒師の5人。で、そこにもう一人遠距離攻撃の出来る弓師か魔法使いを加えるのが一番バランスがいい」

「マーギンが昔組んでいた仲間はどうだったんだ?」

「斥候、剣士、バトルアックス使い、魔法使い二人に治癒師だよ。盾役はいなかったけど治癒師がプロテクションを使えたから問題がなかったんだ。まぁ、特殊なパーティだったから同じようなものは無理だよ」

「マーギンが補助役に徹していたのか?」

「そう命令されてた。攻防どちらも出来たからね」

「お前、特務隊に入るか?」

「ご冗談はよしこさん。もうそういうの嫌だって言ったじゃん」

「まぁ、そうだな。ちょっと聞いてみただけだ。それと、俺がメンバーを選んだら、魔法書を売ってくれるか?」

「それは商売だからいいよ」

「アイリスの使った炎攻撃魔法の魔法書はあるか?」

「あれは大隊長にも言ったけど、本当に着火魔法の応用なんだよ。アイリスは魔力が多いのと、火魔法の適性が高いから出来ただけ。凄く性能の良い剣を素人に渡しても使いこなせないだろ?それと同じ。誰でも使えるわけじゃない」

「そうか…」

「騎士隊の中に魔法使いっていなかったよね?」

「あぁ、今回の人選は軍からも引き抜いて良いことになっている。特務隊は騎士隊ではあるが身分も問わないとも言われている」

「本当は今すぐ戦力として必要ならロッカ達が適任なんだろうね」

「俺もそう思う。あいつら誘ったら騎士になるかな?」

「どうだろうね?普通のハンターなら喜ぶと思うけど、今までみたいに自由がなくなるだろうし、命令に従わないといけないってのもなぁ…」

星の導き達はもう金には困ってないのだ。それに女性だから前線で活躍出来る期間も結婚とか考えたら残り少ないだろう。

「まぁ、聞いてみるだけ聞いてみたら?でも、初代メンバーって後々の指揮官とかになるとか考えてないの?」

「そうだ。それも考えておけと言われている」

「後々、ロッカ達が指揮官になっても騎士が素直に従うかな?」

「そこなんだよなぁ」

オルターネンは全てを理解した上でマーギンに話を聞いて欲しかっただけのようだ。

「まぁ、ロッカ達には魔物討伐の指導依頼とか出すだけの方がいいかもね。メンバーは騎士か軍から選ぶしかないよ。軍人はともかく騎士で魔物討伐したい人とかいるの?」

「多分おらん。大隊長から通達があればやるだろうけど、心境はなぜ自分が魔物討伐に?と左遷のように思うだろう」

俺もそう思う。

「だがな、特務隊の存在意義はどんどん高まると俺は思っている。身分より実力が物を言う部隊だ。訓練の結果がすぐに出るというのも良い」

「そうだね。ローズとかやりたがってないの?ちい兄様もそうだけど、身に付いた実力を試したいタイプでしょ?」

「ローズは第一隊に配属になった」

「え?この前の第四から第三に上がったばかりなのに第二を飛ばして第一隊に?凄いじゃん」

「しかもカタリーナ姫様付きだ」

「えっ?罰ゲーム?」

とマーギンは本音を漏らしてしまったのであった。