軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お灸は自分に

ロッカ達が見学席から訓練場に降り立つ。

「金に釣られた卑しいハンター共め」

ロッカ達にそんなセリフを吐く第一隊隊長。そればかりか女ばかりのパーティに殺られる訳はないと蔑む。

「私語は慎め。陛下の御前であるぞ」

大隊長はそう窘めた。

「ロッカ、本気でやれよ。あいつらはもう後がないから殺気立ってる」

「分かっている。問題ない」

シスコは冷たい目線で隊長を見て、バネッサは右拳で左の手のひらをパンパンと叩いていた。

「アイリス、お前が狙われる可能性もある。もし狙われたら遠慮なくバーナーをお見舞いしてやれ」

「やっ、焼き殺すんですか?」

「殺すまではやるなよ。ちょいと顔を焼いてやるだけで相手は止まる。もしやり過ぎた時は俺が何とかしてやるから躊躇するな。その他は着火魔法でロッカ達の援護だ。隙があるなら人形を焼け」

「はいっ」

アイリスにはまだ自分を守りきるだけの能力はないので作戦を伝えておく。

訓練場の後方に椅子に座った人形が置かれる。あれが王様役だ。その横に騎士が立ち、他の騎士が周りを警戒する態勢を取った。ロッカ達は開始線の所で待機。隠れる所も無いので攻め側が不利なシチュエーションだ。

「では始めっ」

開始の合図と共にバネッサが突っ込み、シスコは後ろに下がりながら矢を射る。ロッカはバネッサの後に付いてダッシュ。いつものパターンだ。アイリスはシスコと同じく後ろに下がった。

低空飛行をするような姿勢で騎士に突っ込むバネッサ。

ヒュッヒュッヒュッ

挨拶代わりのクナイを投げて横に飛ぶとバネッサに隠れていた矢も騎士を襲う。

いきなり3人の騎士が今の攻撃でやられた。

これは第二第三隊の方が強いな。

先日の訓練では体力と精神力をガリガリと削られた騎士達の方が動きが良かった。それに薄暗かったあの時より今の方が動きもよく見えるはずなのだ。

体勢が崩れた騎士にロッカが襲い掛かる。

ガインっ

ロッカの剣を受けて膝を付く騎士。女だと侮るからそうなるのだ。その横っ腹にバネッサのクナイが飛んで来て撃沈。ロッカは崩れ落ちた騎士を蹴飛ばして他の騎士の体勢を崩して剣を持った手で殴る。

グシャッとか嫌な音が聞こえたけど、顔面砕けてないだろうな?

これで半分の5人が倒れた。そしてロッカとバネッサがバッとその場を離れると上空から矢の雨が降ってくる。

「くそっ。陛下をお守りしろっ」

二人が陛下人形の前に立ち、降ってくる矢を剣でなぎ払うがいくつか刺さる。隊長は陛下人形に覆い被さるようにして矢から守った。

「終わりだな」

残り二人をロッカとバネッサが倒し、残っているのは人形に覆いかぶさった隊長だけ。仕上げはロッカ…

「カエンホウシヤッ」

ゴウゥゥゥウッ

げっ、後ろから走ってきたアイリスが隊長ごと人形を焼き払いやがった。確かにやり過ぎたら何とかしてやるとは言ったけど、火炎放射なんていつの間に覚えやがったんだ。一度見せただけだぞ。

マーギンは慌てて隊長の所に走っていき、ウォーターキャノンを発射して鎮火する。

黒焦げになった隊長に治癒魔法を掛けてなんとか収まったのであった。

「ごっ、ごめんなさい」

やり過ぎた事に気付いたアイリスはマーギンからゲンコツを食らっていた。

「マーギンっ、今のはなんだっ?」

こっちに走ってくる大隊長。

「ちゃ、着火魔法デスヨ…」

「嘘つけーーーっ」

見学をしていた騎士達も今の惨状を見て引いていた。

隊長の命には別状はないと知らされた王様は真剣な顔をしているが、笑いを堪えているようだ。自分の護衛騎士が自分の身代り人形を守って丸焦げになったというのに酷い王様だ。よっぽど嫌いだったのかもしれん。

治癒魔法は欠損部位まで治せる訳ではない。火傷は治せたが、失った頭髪、眉毛、まつ毛は元に戻らない。

「大隊長…」

ビクッ

ツルンとした隊長に一瞬ビビる大隊長。

「うむ、完敗であるな。では約束通り、いち騎士から出直し及び報酬の3000万Gの支払いをザカースに命じる。時期は追って通達する。小隊長もいち騎士からやり直せ」

こうして第一隊は訓練失敗の責任を取らされたのであった。ちなみに第二、第三隊にはお咎めはなく、大隊長のみ一ヶ月の減給という軽い処分であった。

ー訓練場を後にした騎士達ー

「大隊長があいつらが手加減していたってのは本当だったんだな…」

「あぁ、俺達に飛んできたのは小さな火の玉だったからな」

「あの攻撃魔法を食らったら護衛もへったくれもないだろう。馬車ごと焼き尽くされて終わりだ」

騎士達の中ではアイリスの「カエンホウシャ」のインパクトが強すぎて、マーギンの誘拐やロッカ達の活躍のイメージは薄れていたのであった。

ー訓練所控え室ー

「マーギン、アイリスは攻撃魔法を使えるのか」

「いや、あれは本当に着火魔法なんですよ」

「あんなもの何を着火する時に使うと言うのだっ。人か?人を燃やす時に使う着火魔法かっ?」

「も、燃えにくい木とかかな…」

「お前が教えたんだな?」

「俺は見せただけで教えてないんですよ。教えたのは着火魔法を飛ばすとかそんなんだけで…」

「着火魔法も飛べば攻撃魔法だろうが」

「攻撃魔法ほどの威力はありませんよ。あくまでも着火ですから」

「お前の常識は非常識だと理解しろっ」

「はひ…」

大隊長に怒られるマーギン。

「ちなみにお前の攻撃魔法とはどんなのだ?ちょっと見せてみろ」

「いや、危ないですよ」

「もう他の奴らは戻ったから誰もおらん」

「いや、この訓練所ぐらいは燃え尽きてしまうので…」

「は?」

「一度森を燃やし尽くした事がありまして、めちゃくちゃ怒られたんですよ。それから使わないようにしています」

「森を焼き尽くしただと?」

「い、いや。途中でやめてちゃんと消火しましたから、焼き尽くしたというのはちょっと言い過ぎたといいますか…」

「殆ど燃えたのだな?」

「はい…」

「加減してやれないのか?」

「今なら可能かもしれませんけど」

「ちょっと見せてくれ」

というので訓練所に戻ってスズメ程の大きさのフェニックスをだす。

「炎の鳥か… 本来はどれぐらいの大きさなんだ?」

「見学席を除いた訓練所ぐらいです。それが空に舞い、炎の雨を降らすんですよ」

「なっ… 防ぐ方法はあるのか?」

「強烈なウォーターキャノンを何発もぶつけたら消えるかもしれません。自分より魔力が多い人だと可能かと」

「お前より魔力の多い人間はいるのか?」

「多分いないカナ…」

「お前、絶対にそれを使うなよ」

「だから、一度使ってからやってないって言ったじゃないですか」

「本当に使うなよ」

「使いませんって」

何度も大隊長から使うなよ言われるマーギン。あの魔法は厨二病全開の時に開発したもので、見てくれは格好良いが効果が強すぎて使い所がない魔法なのだ。

「色々とご迷惑をお掛けしましたので、そろそろ失礼いたします」

さらっと、王様との焼き肉バーティから逃げようとしたマーギンはむんずと大隊長に頭を掴まれる。

「逃さんぞ」

ちっ、バレてたか。

ー王城中庭ー

じゅうじゅうと肉の焼ける音と良い匂いが辺りに充満している。

「オッホー、これは旨いのぅ」

「お口に合われたようで何よりデス…」

姫様も来ると思ってはいたが、王妃まで来るとは誤算だ。しかも周りにはズラッと第一隊の面々とメイドや執事達がいる。なぜこんな中で焼き肉を食わにゃならんのだ。

ちょっと酒でも飲んで…

「どうぞ」

グラスに手を伸ばしたら取ってくれるメイドさん。

「あ、アリガトウゴザイマス…」

肉の追加を網に乗せようとすると、執事が肉の乗った皿を持ってくれる。

「す、スイマセン…」

物凄く居心地が悪い。ちょっと動くとサササッとメイドか執事が寄ってくるのだ。王様、王妃様、姫様はそれが当然のようで気にもしていない。大隊長はともかくシスコも平気そうだ。驚いたのがアイリス。姫様とキャッキャッウフフしながらそれを受け入れている。血筋か?血筋がそうさせるのか?

メイドか執事に何かされる度にモジモジしているのは俺とロッカとバネッサ。バネッサは不敬罪に問われるんじゃないかと思っていたが借りてきた猫のようになっている。焼き肉を口に入れたときに顔にタレが付いたりしたらササッと拭かれている。

「マーギン、どうした?腹が減ってないのか?」

大隊長はいつもと変わらず食べている。

「ハイ、もうマンプクです」

腹と言うより過剰サービスで胸がいっぱいなのだ。

「マーギンっ、私を助け出した時に何をしたのかしら?」

「カタリーナ、お前は拐われたのじゃぞ?助け出されたとはなんじゃ?」

「だって、マーギンが助けに来ましたって言ったもの。ねーっ?」

「さ、拐いに来ましたって言いました…」

これ以上怖がらせてはいけないと思って助けに来ましたと言ったのは確かだ。しかし、これはまずい流れのような気がするので誤魔化す。

「絶対に助けに来ましたって言いましたっ。それで手を出して私を抱き上げたんじゃないっ」

「い、いえ、引っ張り出して連れ去っただけデスヨ…」

姫様の言葉に第一隊の面々から殺気が飛んで来ているような気がする。

「私もマーギンさんによくおぶってもらいますよ」

アイリス、余計な事を言うんじゃない。

「えーっ、アイリスはもう成人してるよね?私と同じ歳なんだから」

「疲れちゃった時とか、お酒を飲んで眠くなった時はいつもおぶって連れて帰ってくれますよ。ねぇ、マーギンさん」

「そんな事してまセン…」

「そういえば、バネッサもよくおんぶされているわよね」

シスコ、今はだって面白いじゃないをする時ではない。余計な事を言うな。

「さ、されてねえっ。あれはうちにセクハラしてやがんだっ」

「セクハラ?」

と、王樣と王妃樣と姫様が聞き返す。

「背中に当たるうちの胸の感触を楽しんでやがるんだよこいつは」

バネッサ、本当にいらんことを言わないでくれ。

「ふーん、そんな事をしているのね?」

「シテマセン…」

どんどん追い詰められていくマーギン。なぜお前らはこんな場でそんな話をするのだ?その後もバネッサが白蛇にやられた時の事を喋りやがる。胸に顔を埋めたとか、尻を触ったとか。お前、さっきまで借りてきた猫みたいになってたじゃねーかよ。

「じゃあマーギンは私を抱き上げた時にお尻の感触を楽しんでたのかしら?」

姫様がそう言うと王様がピクッと動く。それに連携するように第一隊の面々からも殺気が飛んで来る。

「必死だったのでそんな余裕はありませんでしたよ…」

思わず尻を触っていた事を肯定するような発言をするマーギン。

「あっ、分かった」

と、姫様が突然立ち上がってこっちに来る。

「な、何が分かったんですか…」

とっても嫌な予感がするマーギン。

そして姫様はマーギンを後ろからギュッと抱きしめた。

「マーギンは胸派なんだよね?こっちの方が良かったんでしょ?私も最近大きくなってきたんだぁ。ね、当たってるの分かる?」

「殺すっ」

ツルンとした第一隊隊長が剣を抜き、王様からもギロリンと睨まれる。

「ひ、姫様。お戯れはお止め下さい。私が殺されてしまいます」

「カタリーナ、はしたない事はお止めなさい」

その場を収める鶴の一声が王妃様より飛ぶ。

た、助かった。

「マーギンさん」

「は、はい」

「この責任はどう取られるおつもりかしら?」

「は?」

マーギンは王妃から責任を問われ、サーッと青ざめるのであった。