軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

護衛訓練その4

食堂で飯を食うマーギンとバネッサ。

「で、今からなにやるんだよ?」

「ん?話をするんだよ」

「何の話だ?」

「それはな… えーっ、あの広場に姫様が来てんのかよっ」

マーギンはバネッサに話すふりをして声を張り上げる。

「何いきなり大声出してんだよっ」

「だって、姫様がお忍びで来てるんだろ?飯食ったら見に行こうぜ」

「だから大声出すなって言ってんだろうが」

「なんか、騎士がゾロゾロ来てるから何かなって思ってたんだよ。姫様ってめちゃくちゃ可愛いらしいじゃんかよ。さっさと飯食って見に行こうぜ。こんなチャンスは二度とないかもしれんだろ?」

「馬鹿やめろって。みんなこっち見てんだろうが」

「なんだよぉ、姫様が可愛いって言ったから焼きもち焼いてんのか?」

「誰が焼きもち焼いてんだよっ」

初めはしーっ、しーっ、と言っていたバネッサもいつものように大きな声で怒鳴りだす。

「早く行かねーと姫様見られなくなっちゃうぜ。さっさと食べろ」

「今飯が出てきたばっかじゃねーかよっ」

二人の会話にざわつきだす他の客。それぞれが姫様が来てるらしいぞと言い出し、可愛いと聞いた男の客達がそそくさと出ていったのを見たマーギンは声のボリュームを下げた。

「ここの飯も結構旨いな。ソーセージ食うか?」

と、フォークに自分のソーセージを刺してバネッサの前に出すとパクっと食った。他の客から見たらバカップルに見えるだろう。

ケッ、と羨ましいような妬ましいような目をした客も出ていく。

外では数名が走っていくので何かあるのか?と興味を示す住人達。楽しみが少ない町なので野次馬が増えていったのであった。

ー宿泊予定地ー

「貴様ら、ここには近づくなっ」

天幕を張っている所に住民がどやどやと押し寄せる。

「おい、鎧を着ているってことは本当に偉いさんが来てるんだぜ」

「あの馬車見てみろよ。めっちゃ立派だぜ。ありゃ本当に姫様が来てんじゃねーのか?」

そして住民から起こる姫様コール。

ひっめさま ひっめさま

噂で姫様ってめっちゃ可愛いらしいぞと聞いてきた男達は一目見ようとコールを続ける。

「もうバレたのか?この騒ぎに乗じて襲撃があるかもしれん。警戒を強化しろ。天幕は後でいい」

町の中に入った所で少し気が緩み掛けた騎士達はまた緊張状態に入る。

「あら、私の事を皆が呼んでるわ。手でも振った方が良いかしら?」

「姫殿下、お止め下さい。こういう時が危ないのです」

「えーっ、もう馬車の中は嫌よ。座りっぱなしでお尻も痛いし」

「もう少し我慢して下さい。騎士達がこの騒動を収めますので」

いくらコールしても姫様が顔を見せないので住民達は帰っていかない。騎士達は散れっと命令するが大人数となった今ではなかなか言う事を聞かない。

「早く散らんと不敬罪で斬るぞっ」

一人の騎士が剣を抜いた。

「うわーっ、殺されるーーーっ」

蜘蛛の子を散らすように逃げて行く住民達。

「よし、天幕を張れ」

住民達がいなくなった所で作業が再開される。

ー影に潜むマーギンとバネッサー

「よぉ、みんないなくなっちまったぜ」

「あの天幕を張り終えた時が狙い時だな」

「クナイを投げるのか?」

「いや、初めは石だ。追い払われた住民が嫌がらせに投げたと思わせるんだ。俺はあっちから投げるから、お前も俺が合図したら投げてくれ。その後こっちに来てくれ」

「わかった」

天幕を張り終えて馬車の扉が開いたのを見てマーギンは石を投げる。

ドサッ

何かが天幕に当った音がしたので、素早く扉を閉める騎士。

「今の音の原因を調べろっ」

隊長から指示が飛ぶ。

しばらくして、石が投げ込まれたようですと報告が入る。

「ちっ、追い払われた住民がやりやがったんだな」

石を投げた住民がいないか確認させた後に馬車の扉が開いたのでバネッサに石を投げさせる。

ドサッ

「ちっ、調べろっ」

ー馬車の中ー

「もうっ、早く外に出させてよっ」

ようやく降りれると思ったのを何度も邪魔されてどんどん不機嫌になる姫様。

「只今安全確認をしておりますのでもう少し我慢して下さい」

「さっきからずっと我慢しているわよっ」

そして3回目の扉が開いた時には音がしなかったのでようやく外に出られた姫様はうーんっと伸びをする。

カカカっ

その足元にクナイが刺さった。

「えっ?」

横に付いていた騎士は姫様を抱きかかえて馬車の中に飛び込んで扉を閉めた。

「敵襲っ 敵襲っ」

警戒をし続けてもずっと敵襲がなかった所にいきなり敵襲を食らった騎士達に一気に緊張が走る。

「な、な、何があったの?」

「姫様、敵襲です。命が危ないのでこのまま馬車で待機をお願いします」

そして姫様は馬車の中に軟禁される事になったのであった。

マーギンとバネッサは素早くその場を去る。暗視魔法を使っているので、闇で見えない騎士から逃げるのは容易い。

「さ、バネッサの出番はこれで終わりだ」

「もう終わりかよ?」

「あぁ。良くやった。これでしばらくは護衛団の緊張は解けないからな。明日は夜が明ける前にロッカとボアを探して中間ポイントに追い込んでおいてくれるか?」

「あれやんのか?」

「そう。馬車がこの町を出たら薬を馬車に当てる。お前らがボアを追い立ててくれたらそのうち馬車が襲われるだろ」

「あれ、本当にボアがめっちゃ寄って来るんだからな」

「それは楽しみだ」

宿に戻ってシスコを起こしてバネッサと交代。

「私は何をやればいいわけ?」

「天幕に火矢を放つ」

「まさか焼き殺すの?」

「物騒な事を言うなよ。消火作業に勤しんでもらうんだよ」

マーギン達は広場から離れた所で身を潜める。

「この距離で天幕の屋根に届くか?」

「弓なりなら届くわよ。でも火矢を射ればここの場所がバレるんじゃないかしら?」

「俺が途中で着火するから大丈夫だ。3本くらい当てれば大丈夫だろ」

シスコになるべく大きな曲線を描いて飛ぶように指示する。これで途中から火をつけてもこの場所がバレる事はない。

ー馬車の中ー

「もういやーーっ。外に出してっ」

「姫様、安全が確認されるまで我慢して下さい」

「さっきからずっとそれじゃない。扉を開けたり閉めたりしてるけど何もないじゃないのっ」

もう姫様の我慢の限界だと第二隊長に伝えてもらう。

「もう大丈夫そうだな。お前が先に出て姫様の前に立て」

「はっ」

中に居た騎士は先に出て姫様を背中で守るようにした。矢の攻撃を受けても良いように面頬で隠されているため視界が狭い。

「姫様、決して私から離れませぬよう」

「わかったから早く出して」

仁王立ちになって姫様を守るが襲撃はないようだ。

カチャカチャと慎重に馬車から降りる。

「シスコ、今だ」

マーギンの合図とともに火矢が放たれる。

大きな弓なり軌道を描いた矢が下向きになった所を着火。

ボウッ トスッ

「敵襲ーっ 敵襲ーっ」

1本目で気付いた騎士が大声上げる。姫様の護衛はまた姫様を抱き抱えて馬車の中へ。

「もうーーっ、何なのよっ」

そう叫ぶ姫様。

姫様付きの護衛騎士はトスッ トスッとどこから飛んできているのかわからない火矢が天幕を燃やすのを見ていた。

「消せっー 消せっーっ」

天幕には雨が漏らないようにロウが塗られているため火矢で燃え出した。大きな天幕は火を消そうにも人の手は届かない。やむを得ず天幕を倒して消火活動をするしかなかったのであった。

「お疲れ様。これで今日は終わり」

「もういいのかしら?」

「俺も寝たいからね。飯はどうする?」

「マーギンが何か持ってるならそれでいいわよ。ハンバーグとか」

ちゃっかり作り置きのハンバーグをシスコに強請られて宿に戻ったのであった。

ー護衛団ー

「消火完了致しました」

「引き続き警戒体制を取れ」

「はっ」

町から消火の為の水をバケツリレーで汲んで来た騎士達はヘロヘロだ。しかし、毎回少し気を抜いた瞬間を狙われているので、交代で休む事も出来ないまま、朝を迎えるのであった。

「出発っ」

夜明け前に出発する姫様一行。結局姫様も馬車に乗りっぱなしであった。姫様は不機嫌を通り越してダウンする。ろくに寝られていないので、ガタゴトと大きく揺れても寝てしまった。

そして騎士達もそれは同じ。1日中ほぼ休みなく小走りを続けた挙げ句に仮眠も出来ず、ずっと警戒体制で緊張しっぱなしだったのだ。体力と精神をガリガリと削られてヘロヘロだ。

一人の騎士がふぁぁっとあくびをした瞬間に何かが飛んで来てガチャンと馬車に当った。

「敵襲ーーっ」

眠気と疲れを吹き飛ばして臨戦態勢に入る騎士達。

「ちっ、たるんだ所を見抜かれている」

第二隊長は歯ぎしりをした。ほんの少しでも緩むと襲撃があるのだ。いっその事本格的な襲撃であれば対応出来るのに、嫌がらせ程度にしか攻撃をしてこないのだ。被害は燃えた天幕だけ。誰も怪我はしていないからと油断した時に本格的な襲撃があるのだろうと予測する。

「襲撃に備えよっ」

第二隊長はそれしか指示が出来ない状態が続くのであった。

町を出て1つ目の休息ポイントには水たまりがない。それを見た騎士達はホッとする。

「気を緩めるなっ。何もないと思わせておいて罠を張ってある可能性もあるんたぞっ」

気が緩み掛けた騎士に注意をする。毎回こういった瞬間を狙われているのだ。

そしてまたろくに休息を取らずに出発する。鍛え抜かれた騎士達の意識がだんだんと早く終わってくれという気持ちに傾いていく。

そして、次の休息ポイント近くに来たところで異変が発生する。

ドドドドッと何かがこちらに来ている音がした。

「抜刀っ、襲撃に備えよっ」

抜刀した騎士達が見たのは興奮したボアの群れであった。