軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

防衛戦その6

マーギンはタタタっと少しスピードを下げて走り、ズザザっと立ち止まった。

「バネッサ、付いて来てんの知ってんだぞ」

しかし返事はない。

「こんなに近くに来てるのに分からないとでも思ってんのか?いつまでも隠れてんならパラライズ掛けるぞ」

「ちっ、いつから気付いてたんだよ」

バネッサは本当にバレていると分かり物陰から出てきた。

「初めっからに決まってんだろ。勝手な行動をすんなって言ってんのがまだ理解出来んのかお前は?」

「うるせえっ。お前が何をするかちゃんと言わねぇから気になんだろうが」

「はぁ、お前は本当に子供だな。まぁいいわ。俺はハンター共の顔を知らんから、知ってるやつかどうか教えてくれ」

「何するつもりなんだよ?」

「この先の村に誰かいる。全員避難しているから住民じゃない。でも人がいる。これがどういう意味かわかるか?」

「誰か見回りに出てるんだろ?そいつらじゃねーのか?」

「見回りなら家の中を漁る必要ないよなぁ?でも気配は固まらずにあちこちの家に散らばってんだよ」

「どういう意味だよ?」

「これが火事場泥棒ってやつだ。誰も居なくなった村を漁ってんだろ。こいつらを捕まえるから知ってる奴ならどういう奴らか教えてくれ」

マーギンは一つの家の中に入っていく。

「おい、何してるんだ?」

ガサゴソとタンスを開けて物色している男に声を掛ける。

ビクッ

「へへっ、なんだよ?ここは俺の家だぜ。勝手に入ってきたお前こそだれだ?」

「へぇ、ここはお前の家か。なぜ避難していない」

「家畜を置いて逃げるわけないだろうが」

「どこに家畜がいるんだ?全部避難してるぞ」

「ちっ、うるせえやろうだ。ごちゃごちゃ抜かしてるとここでぶっ殺すぞ」

「ほぅ、俺をぶっ殺すのか。お前悪人だな」

「なんとでも言え。どうせ誰も見ちゃいねぇんだ。大人しく殺されてろ」

「バネッサ、こいつは王都のハンターだな。誰か知ってるか?」

「バネッサだと?」

バネッサはマーギンに声を掛けられて中に入ってきた。

「あぁ、知ってる。昔ロッカとパーティ

組んでたやつらだ。こそ泥に成り下るとは見下げたもんだぜ全く」

「そうか。悪者か?」

「ロッカにだけ危険な事をやらせていた挙げ句に襲おうとした悪人だ」

「そりゃちょうどいいわ」

「ちょうどいい?」

バネッサの頭に?マークが浮かんだ所にマーギンは男にパラライズを掛けた。剣を抜こうとしていた男はその場で痺れて倒れる。

「よし、次に行こうか」

マーギンは気配がしている家に入っては問答無用でパラライズを掛けて外に引きずり出した。

「こいつらをどうするつもりだ?衛兵に突き出すのかよ?」

「いや、今回は魔物討伐の為にわざわざ来てくれたんだ。任務を全うさせてやるよ」

マーギンは痺れて動けない男共の持ち物を漁り、金目の物を全てここに置いていく。

<どれが誰の物かわかりませんので、各自お持ち帰り下さい>

「よし、この手紙を置いとけば大丈夫だろ」

「こんなのまた盗まれんじゃねーのか?」

「小さい村ってのはみんな親戚みたいな関係だ。盗みをするやつなんか外から来たやつらしかおらんからな。問題はない」

「ならいいけどよ、その財布とかコイツらのじゃねーの?」

「そうか?ま、いいんじゃね?もう、必要ないから」

マーギンは追加でこいつらの財布に荷車代ですと書いておいた。

痺れている男達を荷車にドサドサと乗せてくくりつける。

「帰るぞ」

「何をするつもりかちゃんと説明しろよ」

「こいつらは餌だ」

「餌?あの騎士達と同じ事をさせるのか?」

「騎士は夜には回収される。だからまだ餌が必要だったんだよ。コイツらが悪人で良かった。生贄になっても心が痛まんからな。さ、走るぞ」

マーギンはバネッサにそう説明して、荷車を曳きながら出発するぞと言った。

「本気で走るからちゃんと付いて来いよ」

「荷車を曳いたマーギンに負けるかよ… って、もういねぇ。お前は馬かよっ!」

マーギンは荷車がガッコンガッコン跳ねるのも構わずダッシュしていく。バネッサも付いていくのに必死なのであった。

ロッカ達のいる村に戻ると、暴れ荷車にくくりつけられていた男達は縄が食い込んで血が出ていた。

「マーギン、コイツらは…」

ロッカはかつてパーティを組んでいたメンバーが酷い有り様で運ばれて来たことに戸惑う。

「おう、いい餌を捕まえてきた。程よく血も出てるからちょうどいい」

マーギンは人とは思えないような事をしれっと言う。

「ロ、ローズ達が動けなくなった騎士を回収に来てるぞ」

「随分と早かったな。それだけ住民の避難誘導がスムーズに行ったってことか。大隊長は?」

「回収作業を見守っているぞ」

マーギンはローズ達の様子を見に行く。

「ローズ、ありがとう… ありがとう」

すでに雪の中から回収された騎士達は涙を流してローズ達に感謝の言葉を言っていた。

「マーギンっ、貴様本当に騎士を魔物の餌にするつもりだったのかっ」

怒るローズ。

「そうだよ。騎士の覚悟を邪魔したら申し訳ないだろ?」

「騎士の覚悟は餌になる覚悟ではないっ」

「それぐらいしか使い道なかったからしょうがないじゃん。己の技量も把握せずに自分は強いと自惚れて、自尊心を満たす為に他に迷惑を掛けたんだから」

「そ、それは…」

「本当に強いなら討伐に加わってもらっても良かったんだけどね。こいつらは俺に威圧されただけで動けなかっただろ?討伐に参加してたら真っ先に食われてたよ。で、ここは簡単に餌が取れる場所だと魔物に判断されてより多くの魔物が集まる。そうなりゃ他にも犠牲者が増えるし、預かった家畜も守れない。ローズはそうなった時にその責任を取れる?」

「それは…」

「何かを失ってからの責任なんて誰も取れないんだよ。ローズは作戦決行したにも関わらず、こいつらが離反した時に処罰すべきだったんだと俺は思うよ。大局を見ればあの時に斬っても良かったと思う。俺が上官ならそうしていた。そうしないと守るべきものを守れなくなるからね」

「騎士は一連託生なのだっ。あれぐらいの事で斬り捨てるわけないだろっ」

「あれぐらいのことねぇ… ローズ、そんな考え方をしているなら要人警護の担当にはならない方がいいな。要人を見殺しにする事になるぞ」

「何っ」

「まぁ、別に俺の考え方を押し付ける気はないからあとは自分で考えて」

ローズはそれ以上何も言わず、スッと引いたマーギンに悔しさと怒りと不安を感じた。

「おい、お前ら。ローズ達が助けに来てくれてどう思った?」

マーギンにそう聞かれても答えない餌にされていた騎士達。

「怖くて寒くてどうしようもなかっただろ?ここの住民達はそんな思いをしてたんだよ。で、憧れの騎士様が助けに来てくれたんだ。それがどれぐらい嬉しくて心強かったか理解出来たか?お前らも騎士が助けに来てくれたんだからな。お前らはその任務を下らないと言って放棄したんだ。それを自覚しとけ」

マーギンはそれだけを言って、次の作業に取り掛かった。

村の家の屋根から狙撃しやすい位置に足場を固めていく。

「マーギン、次は何をやろうってんだよ?」

「かまくらを作るんだよ。手伝ってくれよ」

「かまくら?」

「そう。雪の家ってな感じかな」

「うむ、面白そうであるな。俺も手伝おう。ここでビバークするようなものだな?」

「そうです。よくご存知でしたね。もう少し居住スペースを大きくとりますけど」

ロッカ達も呼んで来て、雪山を作って固めていき、中を掘って完成させた。

「これで餌も凍え死ぬことはないから、一晩は持つな」

「マッスルパワーをここに入れておくのか?」

「そう。入れた後に牢みたいに柵を付ける。程よく血の臭いと体臭がするし、パラライズを解除したら喚くだろうから、雪熊を帯び寄せるのにうってつけなんだ」

「あいつら、かなり力が強いのだぞ。雪で出来た牢なんか簡単に壊して逃げるぞ」

「強化するから問題ないよ」

「本当におびき寄せる為の餌にするのか?」

「俺ね、火事場泥棒するやつって嫌いなんだよ」

「お前は気に入らないからといって人を殺すのか?」

「殺すのは俺じゃないよ。あいつらを殺すのは魔物か寒さだからな」

ロッカの問いかけに淡々と答えるマーギン。そして荷車からマッスルパワー達を引きずりおろしてここまで連れてきた。

「てっ、てんめぇっ」

「おっ、元気元気。死に餌でもいいけど、活餌の方が効果あるからな」

マーギンはマッスルパワーをカマクラの中にポイポイと投げ入れて雪で柵を作り魔法で強化していく。

「これを壊せたら逃げてもいいからな。頑張って脱出してみせてくれ。パラライズ解除」

パラライズを解除されたマッスルパワー達はまだ痺れているので動けないがだいぶ口はきけるようになった。

「お前の顔を覚えたからなっ。ここから出たら覚悟しやがれ」

「そりゃ楽しみだな。日が暮れたら差し入れに来てやるよ」

そう言い残してから村に戻った。

「ローズ、日が暮れる前にそいつ等を連れて帰ってくれ。俺達が目的を達成したら連絡を入れる」

「マーギン、お前はそんなに冷酷なやつだったのか?罪を犯したとはいえ人を魔物の餌にするようなやつだったのか?」

ローズは今まで接してきたマーギンと全く違う事に信じられないという顔をしている。

「ん?俺は俺だ。元からこんなもんだよ。さ、俺等の事は気にしなくていいから自分の任務を果たしてくれ」

それだけを答えたマーギンはまた何かをするためにその場を離れたのであった。

「ローズ、あいつは何なんだっ。悪魔か?それとも魔人なのかっ」

「余計な口を叩かず任務に戻れ」

ローズは怖い顔をして餌になりかけていた騎士を連れて領都に戻るのだった。