軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

剣技会その2

「始めっ」

うっ…

先手必勝とローズは攻めるつもりでいたが、オルターネンの構えと放たれた威圧に一瞬戸惑った。

「やはりちい兄様は威圧を放てるのか…」

小さくそう呟いたローズ。だがマーギン程ではない。そう思い心の中で覚悟を決める。

「はあっ!」

オルターネンの威圧を気合で跳ね飛ばしたローズは集中力が極限にまで高まっていく。

「ほう、さっきの奴はこれで動けなくなったんだがな。しかし、可愛いかった妹から可愛げが無くなるのは残念だ」

シュパッ

オルターネンは先ほどと同じく、先の先、居合でローズの首を狙う。が、集中力の高まったローズは後ろに飛びそれを避けた。

ちっ、避けやがった。ならば…

初太刀を躱したローズはチャンスと思い反撃をしようとした刹那、オルターネンから後の先、カウンター攻撃が繰り出される。

速いっ

ローズは攻撃動作からその場でしゃがんで回避。ブンッとオルターネンの剣が空を切った。

「次はこっちだ」

ローズはしゃがんだ体勢から足を狙って水平斬りを仕掛ける。

「危っ」

あれも避けやがんのかよ。

まさかカウンターまで避けられると思ってなかったオルターネン。そして体勢が整わないままに仕掛けられたローズの水平斬りをなんとか小ジャンプで躱した。

「飛ぶとは愚かなりっ」

ローズは小ジャンプしたオルターネンに向かって連撃をしていく。

「ちいっ 本当に強くなりやがった」

キンキンっ

オルターネンは剣の柄の近くでローズの攻撃を受け体勢を整えた。

「軽いな。お前の剣は軽いぞローズ」

「知ってますよ。だからこそこのスピードが出せます」

ローズは今まで見せたことのない速さの突きを連続で繰り出す。

オルターネンはそれを後ろ飛びで躱すもローズは逃さぬと付いて来る。

チュインっ

チュインっ

オルターネンは速い突きを剣の腹で滑らせる様に受け流す。この剣は攻撃を受けるのには向いていないが、ローズの剣もまた力技で攻撃する剣ではない。

オルターネンのそんな考えとは裏腹にローズは自分の持つ技をありったけの力を込めて攻撃してくる。

こいつ、スピードも力も今までとは段違いじゃねーかよ。マーギンの野郎ローズに何をしやがった。ローズが努力を続けて来たのは知ってるが、こんな短期間でこれほど伸びるとは思えん。

試合に集中しているローズとは違い、オルターネンはローズの変貌ぶりに驚くばかりだ。

ローズの一方的な攻撃が続き、オルターネンは防戦一方の展開となる。

「おいおいおいおい、ローズの奴、オルターネン小隊長に勝っちまうんじゃねーか」

「おおっ、大隊長自ら第三隊に配属させたのは実力だったってのかよ」

皆がローズの強さに感心し、大隊長に色目を使って昇進したとの疑いを払拭するのには十分な戦い方である。

「ローズ、頑張れーーっ」

「うぉぉぉぉっ、そのまま勝っちまぇぇ」

ローズの戦いを見て騎士達は自然と声を出して応援し始める。そしてローズっ ローズっと大合唱が始まった。

「ちっ、すっかり俺が悪者みてぇじゃねーかよ」

ローズの耳には大合唱は届いていないがオルターネンは聞こえすぎるほど聞こえていた。

「しかし、このままだと本気でやべぇな。ローズも寸止めとか忘れてやがりそうだ」

オルターネンはローズが自らの攻撃に酔ってハイ状態になっているのを見抜いていた。

「いけるっ、いけるぞっ。ちい兄様に勝てるっ」

ローズは勝てると確信し、決めの大振りの攻撃を放った。

ちゅりりーーーぃん

オルターネンはローズの剣を受けるのでは無く、剣で受け流すように滑らせ、その返し刀でローズの首元に剣をあてた。

「あっ…」

それは一瞬の出来事だった。勝てたと思い込んだローズはその場で膝から崩れ落ちる。

「勝者オルターネン」

「ま、負けたのか…」

なぜ負けたかわからないローズ。勝ちは眼の前。この手の中に勝ちがあったはずなのになぜ自分は膝を付いている…

「ローズ、お前本当に強くなったな」

上からオルターネンの手が差し出される。

「ちい兄様…」

「ほら、立て。俺にはまだ勝てなかったが十分強くなったぞ」

そう言って観客席の方を見ろと目線で促す。

「ローズッ強かったぞーーっ」

「あとちょっとだったぞーっ」

「兄貴も負けてやれよっ」

と、ローズの健闘ぶりに皆が大歓声を送っていた。

「ほら、立って皆の声援に答えろ」

ローズはそう言われてオルターネンの手を取る。しかし、足に力が入らない。

「ちっ、しょうがねぇな。ほらよっ」

立ち上がれないローズをグイッと引き起こし、オルターネンはローズを抱き抱えるようにして医務室に連れて行ったのであった。

オルターネンに医務室に運ばれる途中で気を失ったローズはそのままベッドで寝かされていた。

「こいつ、気を失うほど本気でやってやがったのか。本当に強くなりやがって」

オルターネンはローズの奮闘にこれは優勝してやらねぇとな。と呟いて会場に戻っていくのであった。

「勝者オルターネンっ!本年度の優勝者はオルターネンだ」

うぉぉぉっーーっ

準決勝で相手を瞬殺したオルターネンは決勝では相手の剣を斬り、圧倒的強さで優勝したのであった。

「オルターネン、見事な戦いであった。決勝戦でローズと当たるように対戦を組むべきだったな」

対戦を決めるのは抽選ではなく大隊長が決めている。剣技会の対戦1つ1つに意味を持たせてあるようだった。

表彰式の後に大隊長室に来いとオルターネンは呼ばれる。

「大隊長、オルターネン入ります」

「おう、他の奴は部屋から出ろ」

人払いをする大隊長。

「優勝おめでとう」

「はっ、ありがとうございます」

「で、お前の使ってる剣はなんだ?」

来たっとオルターネンは心の中で呟く。

「これはバアム家に伝わる家宝の剣であります」

「家宝ねぇ… ちょっと貸せ」

「はっ」

オルターネンは腰から刀を抜いて鞘ごと渡すと、大隊長はスラッと抜いて刀を傾けたりしながら眺める。

「見事な家宝だな」

「はいっ。この日の為に磨き上げておりました」

「で、この剣はいつからバアム家の家宝になった?」

あー、やっぱり大隊長には誤魔化しはきかんか。

「さる御人から賜ったものであります」

「ローズの剣もか?」

そっちもバレたのか…

「はい」

オルターネンは下手に誤魔化すのは諦めた。スマン、マーギン。やっぱり無理だったわ。と、心の中で呟くオルターネン。

「これは魔剣か?」

「いえ、違います」

とオルターネンが返事をすると大隊長は立ち上がって、机の前から出て来て刀を振った。

ブフォンっ

ドガガガッ

刀から風の刃が出て、部屋の中を斬り裂いた。

「で、これは魔剣か?」

「いえ、違います」

「いま、俺の剣と同じように風の刃が出たのは気のせいか?ならばお前に向かってもう一度やってみようか」

ギヌロッとオルターネンを睨み付けて凄む大隊長。

「大隊長、それは魔剣ではありません。確かに大隊長の剣と同じような感覚があるのは私にもわかっております。しかし、魔剣ではありません」

「ほう、ならばこれは何だと言うのだ?」

「魔鉄で出来た剣であります。おそらく大隊長の剣も同じかと」

「魔鉄?なんだそれは?」

「魔物から取れる鉄であります。他の素材より魔力の流れがよく、大隊長の風の刃は剣から放たれたものではなく、剣を通して大隊長の魔法から放たれるものと推測されます」

「なんだと?お前はそのような事をなぜ知って… この剣をお前に渡した者がそう言ったのか?」

「…その通りであります…」

少し口籠るオルターネン。

「ローズの剣も同じ奴からもらったのだな?」

「…はい」

「ローズが鍛錬を続けてきて強くなっていたのは理解している。が、今回は善戦しながらも第四小隊長に負けると踏んでいたのだ。そして勝ち上がった第四小隊長はお前に無様に負けて降格させるつもりであったのだがローズが勝った。これは嬉しい誤算ではあったが、お前との対戦では目を疑った。ローズをあそこまで強くしたのはそいつなのだな?」

「恐らく。自分もローズがあそこまで強くなっているとは驚きでした」

「何者だそいつは?」

大隊長にマーギンの事を聞かれて黙るオルターネン。

「俺には言えないようなやつか」

ギヌロッと睨みつける大隊長。

「その人物は王都に住んではいますが異国人であります。私も初めは他国のスパイではないかと疑いました。が、その者には他意も悪意もないと確信しております」

「異国人だと?」

大隊長が訝しがったのを察したオルターネン。

ガバッ

「お前いきなり何をっ」

その場で土下座するオルターネン。

「こいつはいい奴なんです。知識も力も優れた人物で妹とも気心がしれているようです。決してこの国に仇をなすような奴ではありません。もし、こいつが不穏な事をすれば私の首を刎ねて貰っても構いません。何卒、捕まえたり、処分したりしないで下さいっ」

プライドの高いオルターネンが家族でもない人の為に土下座してまで自分に懇願したことに驚く大隊長。

「頭を上げろ。別に捕まえたり処分するとか言ってはおらん」

「それでは…」

「要望は一つだ。俺にも会わせろ」

「えっ?」

「聞こえなかったのか?俺にもそいつに会わせろと言ったんだ」

「会ってどうするおつもりですか?」

「ん?どうするつもりだろうなぁ。まぁ、悪いようにはせん」

大隊長はニヤリと笑ってオルターネンにそう言ったのであった。

ー騎士隊宿舎ー

「はっ、試合はっ、剣技会はどうなったのだっ」

目を覚まさないローズは自分の部屋に運ばれていた。医者からどこにも異常はなく、疲労で眠っているだけと診断された為、オルターネンが部屋まで運んだのであった。

「ようやく目を覚ましたか」

「あっ、ちい兄様… うっ、痛たたたたっ」

「どうした?」

「全身が痛くて… どうやら筋肉痛のようです」

「なんだ筋肉痛かよ。なら心配ねぇな」

「それよりちい兄様、剣技会は、剣技会はどうなりましたかっ」

「ん?結果はこれだ」

と、オルターネンは優勝カップをローズに見せた。

「私は… 私はちい兄様に負けたのですね…」

「当たり前だろ?確かにお前は強くなったとは思うが冷静さを失うとはまだまだ修行が足らん。それに最後に勝ったと慢心して大振りの挙げ句に油断しやがって」

「油断… ではありません」

「じゃあなんだってんだ?」

「恐らく魔力切れです…」

「魔力切れだと?」

ローズは身体強化魔法の事をオルターネンに話した。

「お前、ズルしてたのかよ?」

「ズルではありませんっ。鍛錬を積んだ者は皆使えるはずだとマーギンが言っておりました。ちい兄様も知らずのうちに使っているはずです」

「そうなのか?」

「はい」

「でもお前はマーギンに教えて貰ってたんだよな?」

「はい…」

「やっぱりズルじゃねーかよっ」

「ズルじゃありませんっ」

「口答えすんなっ、こうしてやんぞ」

ローズの太ももの横をぐりっとするオルターネン。

「ぎゃぁぁぁぁ 何をするんですかっ」

「うるさいっ。しつこいとこうしてやる」

「ぎゃぁぁぁぁ」

こうして騎士団の剣技会は幕を閉じたのであった。