軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ2

「じゃ、行ってくる」

「その顔に、その服は良くないのではないか?」

「だけど普段着で行く訳にはいかんだろ」

お世話になった人たちに別れを告げた翌日、マーギンは過去の英雄パーティ時代の魔導士服を着ていた。

その姿を見たミスティは魔王が過ぎるぞ、とブツブツ言っていた。

「お待たせ致しました」

ガラガラと馬車が家の近くまでやってきて、メイドが降りてきて頭を下げた。

「アデルさん、お久しぶりです。わざわざお迎えありがとうございます」

「とんでもございません」

アデルはマーギンの容姿に一言も触れず、にこやかに接した。

「では、ご案内させていただきます」

屋敷に到着し、応接室に向かった。

「ご緊張されているようですね」

と、アデルがマーギンの顔を見た。マーギンは緊張してガチガチになり、ロボットみたいな歩き方になっていたのだ。

「そ、そりゃあ、まぁね」

「頑張ってください」

と、アデルは微笑んだ後、

「マーギン様、ご到着されました」

と、応接室の扉の前で声を掛け、扉を開けると、すでに家族全員がマーギンを待っていた。

「ご無沙汰だね」

と、父親が先に挨拶をして、マーギンをソファに座らせた。

「こ、この度はお日柄もよく……」

訳の分からない挨拶を始めるマーギン。

「マーギンさん、そんなに緊張なさらなくてもよろしいですわよ」

母親はクスクスと笑って、マーギンにお茶を勧めた。

ゴッ、ゴッ。

お茶を一気に飲み干したマーギン。フーフーせずに飲んだが、熱いのかどうかすら分かっていないようだ。

「あ、あの……この度は……」

「なんだね?」

「その……」

「早く用件を言いたまえ」

モジモジするマーギンに威圧的な父親。

「おっ、お父さん」

「私がマーギンくんに、お父さんと呼ばれる筋合いはないと思うのだがね」

マーギンに冷ややかな視線を送る父親。

「す、すいません。ローズのお父さん」

「なんだね」

マーギンは少し間を置いて、勇気を振り絞って立ち上がり、頭を下げた。

「お、お嬢さんを僕にくださいっ!!」

頭を下げたまま返答を待つマーギン。

……

…………

………………

ポンっ。

肩を叩かれて顔を上げたマーギン。

「ローズをよろしく頼みます」

父親は涙を溜めた目でマーギンに握手をした。

「あ、ありがとうござ……」

バァンっ!

そのときに扉が派手な音を立てて開いた。

「きゃーっ! おめでとうローズっ!!」

飛び込んで来たのはカタリーナ。

「なっ、何やってんだよお前っ!」

「何って、イベントを見に来たんだけど?」

驚いたマーギンとは裏腹に、ローズの父親は落ち着いていた。

「姫様、今のような感じでよろしかったでしょうか?」

ローズの父親は跪いてそう言った。どうやら、カタリーナがいらぬことを吹き込んでいたらしい。

「うーん、70点。「どこの馬の骨とも分からんやつに娘をやれるか!」と、「まだ早いっ!」が抜けてたのよね」

マーギンのことを知ってるどころか、助けてもらった恩人にそれは言えなかった父親。それにローズが嫁に行くには少々遅いぐらいなのだ。

「お前が余計なことをやらせてたのか?」

「だって、こんなの見る機会ないじゃない?」

相変わらず欲望に忠実なカタリーナ。

「あっ、マーギン。こんなのやってみて。今なら絶対に似合うと思うの」

そして、寸劇に付き合わされるマーギンはコショコショと耳打ちされる。

「なんでそんなことをしなくちゃダメなんだよっ!」

怒るマーギン。

「見たいから」

キョトンとするカタリーナ。

「お前なぁ……」

「だって、これが最後になるじゃない……」

と、淋しそうにうつむいてポソっと呟く。

マーギンは心の中で、「あーっ、もうっ!」と叫んだ。ローズがカタリーナの護衛をするのはもう終わりなのだ。

「えー、ゴホン」

マーギンは一つ咳払いをして、ポーズを取る。そして片手でバッとマントを翻した。

「ふははは、娘を我に差し出せ。さもなくばこの世界を滅ぼしてやる」

ビクッ。

演技だと分かっていても顔が引き攣る父親。

「あっ、すいません」

父親が怯えたのを見て謝るマーギン。

「い、いえ……実にお似合いのセリフ……いや、失敬」

「父上、マーギンの見た目が変わっても、中身はそのままです。マーギン、ローズをよろしく頼む」

と、笑いながらオルターネンが間に入った。

「ちい兄……いや、ありがとう兄上」

「別にちい兄様で構わん。ローズも、とっととマーギンの胸に飛び込め。他の女に負けるなよ」

オルターネンよ、そんな言い方をしないでくれ。

「お父様、お母様、ここまで育てていただきありがとうございました。フェアリーローズ……ローズはマーギンと共に参ります」

「元気でね、ローズ。他の女に負けちゃダメよ」

母親からもいらぬ言葉を贈られるローズ。父親は目に涙を貯めながらも苦々しい表情だ。どうやら、すべての事情を聞かされているようだった。

涙のお別れが済んだあと、

「じゃ、みんなのところにいきましょう」

と、一撃でしんみりとした雰囲気を終わらせるカタリーナ。

転移魔法で、マーギンの家を経由してから訓練所に移動したのであった。

訓練所では、関わりのあった人たちを呼んでお別れ会が開かれた。戦いあり、笑いあり、涙ありのお別れ会。飯や酒を用意してくれたのは、タジキとハンナリー隊。

途中で王と王妃も参加したときはちょっと皆が引いていた。

「マーギン、これからすぐに建国を始めるのか?」

大隊長が予定を聞いてくる。

「いえ、このあとはタイベに行って、ノウブシルク、ゴルドバーンに行こうと思います。建国を始めるのはそのあとですね」

「では、俺も同行しよう」

「えっ?」

付いて来ると言った大隊長に驚くマーギン。

「俺は現役を引退する。最後に各地を見回っておきたいのだ。それとも邪魔か?」

「いや、邪魔だとかそんなことはないですけど。引退するには早くないですか?」

「俺がいると、次の者が上がれんだろ? 近々、オルターネンが大隊長に昇格、ホープ、サリドンが隊長に昇格する。カザフたちにも隊長昇格の話があったんだが断った。俺は育成の方に回る予定だ」

カザフたちはやりたいことがある、と、隊長職を断ったようだ。ハンナリーも商会長と兼務は無理と言ったらしい。商会長業務なんてやってないだろうと思ったのは内緒だと言われた。

「これからは本当の意味でオルターネンが中心になっていくことになるだろう」

と、大隊長は笑った。

「じゃあ、一緒に来ます?」

「助かる」

大隊長は意味深なお礼をマーギンに言った。

「えーっ、ずっるーい。私も行く」

いつの間にか話を聞いていたカタリーナ。

「なんでお前も来るんだよ?」

「ほら、私がいた方が便利じゃない? 転移魔法でいけるわよ」

確かにそれはそうだけど。

「じゃあ、僕も行かないとダメだねー」

ローズがカタリーナの護衛を辞めたことにより、新しく護衛担当になったトルクも来るようだ。

「じゃあ、私も行かないとダメですね」

アイリスも付いてくると言い出す。

「なんでだよ?」

「ノイエクスさんがハンバーグの作り方をマスターしないとダメだからです」

アイリスとノイエクスも来ることになってしまった。ちなみに、ノイエクスの昇格はなかったらしい。それなのに一緒に来て大丈夫なのか?

「他にも来るやついるか?」

こうなれば何人増えようが同じだ。

「マーギン……」

カザフがマーギンの前に来た。

「一緒に行くか?」

そう聞くと、頭を横に振った。

「マーギンは魔王になるんだよな……?」

「そうだな。そうなると思う」

「分かった。俺はもっともっと強くなって、魔王を倒しに行く」

カザフは真っ直ぐにマーギンを見つめてそう言った。

「そうか。なら、俺は全力で防衛手段を取らないとな。頑張って俺の元に辿り着けよ」

「えっ?」

てっきり受けて立つ、と言われると思っていたカザフ。

「当たり前だろ? 戦いの基本は防衛だ。俺に辿り着く前に死ぬなよ」

「しっ、死ぬような仕掛けを作るつもりかよ……」

「当然」

と、マーギンは笑って答えた。

「少年」

今まで無言で飯をガツガツと食っていたミスティがカザフに話しかける。

「なんだよ」

「お前にこれをやろう」

と、指輪を渡された。

「指輪?」

「いらぬなら捨ててもいい。好きにしろ」

「なんだよこれ? なんで俺にこんなものを渡すんだよっ! ちゃんと説明しろよ」

「魔王に辿り着きたいんじゃろ? それなら強くなる以外にも必要なことがあると知れ」

ミスティは詳しく説明せず、そのままふいっとその場を離れたのであった。