軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最終決戦2

扉に置いたマーギンの手が止まる。

頭の中では扉を開けようとしているが、身体が動かない。

「くっ……」

期待と不安、そして自らに課せられた使命がマーギンの心臓を鷲掴みにする。

もし……この扉の先にいるのが……あり得る、いや、あり得ない……しかし、あの結界に刻まれた字は……。

マーギンの中でぐるぐると嫌な想像が巡る。

ポン。

「怖いのか?」

と、動けなくなっているマーギンの肩をオルターネンが叩いた。

「怖い?」

マーギンは自分の心情を探る。

「……そうだね、俺は怖いのかもしれない」

マーギンはそう答えた。自分は魔王と対峙するのが怖いのか、それとも……。答えの出ない自問自答を心の中で繰り返す。

「お前は自分を信じればいい。それでも怖いのなら共に行こう。俺たちは仲間、いや……」

オルターネンは少し照れ臭そうな顔をして、マーギンを見つめた。

「お前は俺の友だろ?」

「ちい兄様……」

マーギンもオルターネンの顔を見た。

「ま、俺を兄と呼ぶならそれでもいい。それはそれで悪くない」

と、マーギンの肩をポンポンと叩いた。

「マーギン、お前のやりたいようにやれ。 今(・) 度(・) は(・) 俺たちがサポートをする。成長したお前の姿を拝ませてくれ」

大隊長はヴィコーレをブンッと一回しして、豪快に笑った。

聖剣ジェニクスを持つオルターネン、魔斧ヴィコーレを肩に担いだ大隊長。振り向くと、オスクリタをジャグリングしているバネッサ、聖杖エクレールを振り回しているカタリーナ。みんな笑顔だった。カザフやアイリスたちも気合を入れている。

それを見たマーギンから苦悩の感情が消えていく。

「そうだな。俺はこの世界でやらないといけないことがある。そのためにここに来たんだ。そうだろ?」

マーギンは扉の向こうにいるであろう敵にそう叫んだ。

過去と違い、今の自分は補助役ではない。自分を友と呼んだオルターネン、成長した姿を見せろと言った大隊長。そして、微笑んでくれたバネッサとカタリーナ。それに他のみんなもいる。

「俺たちは強い!」

「「そうだ、俺達は強いっ!」」

マーギンが声を上げると、みんなが呼応した。

「行くぞ!」

「「おうっ!!」」

ギィー。

扉に力を入れて押すと、長い間、開くことのなかった大きな扉がきしむ音を立てて、ゆっくりと開いた。

開いた扉の先には何もない大きな空間が広がっている。ここは本当に建物の中なのかどうかすら分からない。ただ、薄暗く、静かな空気だけが漂っていた。

あまりにも静かな、そして、自分たちを飲み込むような空気に全員が固唾を飲んだ。

コツコツコツコツ……

その空間に響き渡る足音。全員が臨戦態勢を取った。

「久しいのぅ」

そう声を掛けてきた相手にマーギン以外のみんなが目を疑った。

「女……?」

姿を現したのは褐色の肌をあらわに見せた スタイル抜群の美しい女性。

それを見たマーギンが一瞬ホッとしたような表情を見せたことから、みんなは臨戦態勢を解きかけた。しかし、次の瞬間、マーギンの魔力が一気に膨れ上がったことで、こいつが魔王だと悟った。

「貴様、やはり生きてたのか……」

マーギンはギリッと唇を噛んだ。

「生きていたかじゃと?」

マーギンの問いかけに魔王は笑顔を浮かべる。

「そうさなぁ、死んではおらぬと言ったところかのぅ」

こちらの戦力を見ても驚きもしない魔王にマーギンの魔力が益々膨れ上がっていく。

「ミスティはどこだ?」

「ミスティ? 誰じゃそれは」

「あのとき、俺を石にした子供みたいなやつだ」

マーギンが妖刀ヴァンパイアを構えて叫んだ。

「何のことか分からぬの」

と、ニヤッと笑って答えた魔王。

「貴様……」

マーギンが何かを言いかけた瞬間、

「食らえっ!」

オルターネンが魔王に向かって斬り込んだ。

ギンッ。

小さなプロテクションがオルターネンの一撃を防ぐ。

「ぬるい攻撃じゃな」

「何をっ!」

ふんっ、と呆れたように笑った魔王に激怒するオルターネン。

「ふうんっ!」

次は大隊長の攻撃。しかし、オルターネンの攻撃と同じくプロテクションに阻まれた。

「無駄じゃ」

ドンっ。

「ぐふっ」

大隊長は腹を蹴飛ばされて吹っ飛ぶ。

「なるほど……これが魔王か」

すぐに立ち上がった大隊長の口から少し血が出ている。

オルターネンと大隊長の攻撃が口火となり、マーギンも加わって激しい戦闘が始まった。

「カザフ、右だ。タジキはアイリスの盾になれ。ロッカ、トルク行くぞ」

大きな扉を開けて入ったはずなのに、いつの間にかその扉は消え、大型の魔狼が襲いかかってきた。

「オラオラっ、てめえらなんぞ一匹たりとも生きて返さねぇからなっ!」

バネッサが戦闘の指示を出したあと、オスクリタで迫ってくる魔狼の目を潰す。

「葬らんっ! 葬らんっ! 葬らんっ!」

目を潰された魔狼はロッカに頭を砕かれていった。

上空からもハチのような魔物が襲ってくる。

《ファイアバード!》

アイリスはマーギンのフェニックスを模した火の鳥を出し、上空から襲ってきた魔物を飲み込む。

魔王と対峙するオルターネンはスピードを上げて連撃を繰り出す。

ガキンっ、ガキンっ、ガキンっ。

魔王は最小限のプロテクションで軽々と攻撃をいなす。

「くそっ……」

オルターネンは一旦態勢を立て直すために魔王から距離を取ろうとした。

ドンっ。

「ゴフッ」

その隙を狙われ、腹に蹴りを入れられた。

「ぬるいと言った意味が分からなかったのか?」

「うぉぉおっ!」

オルターネンが攻撃をしている間に、大隊長は全身に魔力を込め、魔斧ヴィコーレを魔王の頭目掛けて振り下ろした。

バリンッ。

惜しくも攻撃は魔王に届かなかったものの、プロテクションを砕いた大隊長。

「ふむ、我のプロテクションを砕くとはなかなかの……」

シパッ。

プロテクションが砕けたときに閃光の一撃を放ったオルターネン。

「うむ、良くなってきたではないか」

当たったと思ったオルターネンの一撃は空を斬っていた。

「なんじゃその顔は? プロテクションがなければ我に攻撃が当たるとでも思っていたのか?」

ブンッ。ズババババっ。

「おっと。今回は貴様も攻撃してくるか。面白い」

マーギンが魔力を込めた妖刀ヴァンパイアで斬りつけたことで、魔王の顔付きが変わった。

その魔王の様子を見たオルターネンと大隊長はこれからが本番なのだと理解したのだった。