軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結界が解ける

結界石を探す日々が続き、昼間にバネッサが一つ、夜にカザフが一つ見つけ、合計6個の結界石を手に入れたときに異変が起こった。

「ひっ、歪みが消えて……」

全員が森の異変を見て固唾を飲んだ。

ざわざわざわざわ。

歪みが消えて、現れたのは大きな魔木の森だった。

ゾクッ。

マーギンに悪寒が走る。

「退避っ。ここから全力離脱しろっ!」

マーギンが叫ぶ。気配がほとんどないはずの爬虫類系魔物が圧倒的な威圧を放つ。

ギャァァァオンっ。

その存在は咆哮を上げ、みんなに襲いかかってきた。その数は1匹ではなく、群れていた。

「こいつらは……」

かつて勇者パーティー時代に遭遇した巨大なラプトゥルと同じ魔物であった。

マーギンは魔力を込めて、妖剣ヴァンパイアを振り回す。

「マーギンっ、何やってんだよ。お前も逃げろっ!」

バネッサがマーギンを連れて行こうとする。

「馬鹿野郎っ、とっとと逃げろってんだろっ! 俺が時間を稼いでいる間に魔法が使えるところまで逃げろ。そこでカタリーナにプロテクションを張らせるんだ」

「クソっ!」

バネッサはマーギンに怒鳴られ、その場から離脱した。

ザシュっ、ザシュっ。

「ちい兄様も逃げろっ!」

オルターネンが聖剣ジェニクスで巨大ラプトゥルの足の腱を斬り、動きを止める。

「2人いた方が時間が稼げる。みんなは大隊長が何とかしてくれるだろう」

そう言ったオルターネンは、笑顔でマーギンと背中を合わせ、次々と襲ってくる巨大ラプトゥルと対峙する。

「死んでも知らねーからな」

「俺がこんなところで死ぬか」

2人は巨大ラプトゥルを倒していく、オルターネンがズバッと足を斬り、マーギンが倒れてくる巨大ラプトゥルの首を斬る。

◆◆◆

「雷魔法を試すのじゃっ!」

《サンダーボルト!》

ビッシャーん。

「おっ、効いた」

マーギンが放った電撃魔法で、巨大ラプトゥルの動きが止まった。それを見たガインがぶっ叩き、マーベリックがスパッと斬って倒していく。

「よし、俺も行ってくる」

マーギンも刀を持って向かおうとする。

「バカモノっ。お前はここから電撃魔法を放っておればいいのじゃ」

「えーっ」

ミスティから補佐役は補佐に務めろと言われて不貞腐れたマーギンは、ヤケクソのように電撃魔法をバンバンと放ったのであった。

◆◆◆

ズバッ、ズバッ、ズバッ!

マーギンとオルターネンは息の合ったコンビネーションで巨大ラプトゥルを倒していく。非常にまずい状況であるにもかかわらす、ときおり目線を合わせる2人は笑顔だった。

「なぁ、大隊長。結界石を取っちゃ不味かったんじゃねーかな?」

カザフが自分のせいでこんなことになったんじゃないかと心配する。

「うむ、その可能性はなくもない。何かを隠している結界だと思っていたが、あの巨大なラプトゥルを閉じ込めていた結界だったかもしれん。が、お前が気に病むことはない」

「だってさ……」

「幸いなことに、今のところはここまで来ようとはしていない。マーギンたちが戻ってきたら対策を練ろう」

アイリスが魔法で焼いた場所よりも外側の森まで退避した大隊長たち。近くに巨大なラプトゥルがうようよといるが、焼けた場所より外に出ようとはしていない。

「おっせーんだよっ!」

バネッサは指の爪を噛みながら、マーギンがいるであろう方向に向かって叫ぶ。

「イライラしている暇はないぞ。マーギンたちより他の魔物に気を配れ。来てるぞ」

巨大ラプトゥルはこっちには来ないが、ほかの魔物が周りを囲んでいる。昨日までと比べて、明らかに魔物の数と強さが増しているのであった。

「マーギン、そろそろこっちも退避するぞ」

もうみんなが逃げられだろうと判断したオルターネンが、自分たちもここから退避しようと言う。

「いや、俺はこの先に進む。ちい兄様は退避して」

「進むだと……?」

「うん、俺は昔に似た光景を見たことがある。この先に、この先に……」

どぉぉぉんっ!

マーギンが退避せずに魔木の森の中に入ると言った瞬間に、後方から大きな爆発音が聞こえた。

「ちっ!」

マーギンは舌打ちをして振り返る。

「戻るぞ」

もう一度オルターネンが退避を促すと、マーギンは無言で爆発音がした方向に走った。

ゴンッ。

みんなの元に戻ってきたマーギンにゲンコツを食らうアイリス。

「考えて魔法を使えっ!」

「ごっ、ごめんなさい……」

さっきの爆発音は、アイリスがビッグモスキートの大群にファイアボールを撃ったのが原因だった。

退避していた場所の木々が爆風で吹き飛んでいるのを見て、マーギンはアイリスにゲンコツを食らわせたのだ。

「マーギン、頭ごなしに怒ってやるなよ」

バネッサがアイリスを庇う。

「一歩間違えればみんなヤバかっただろこれ」

「アイリスがやらなきゃもっとヤバかったんだよ。森から大量に魔物が来てて、後ろから来てたビッグモスキートの群れに気付くのが遅れちまったんだ。アイリスがやらなきゃ、全員ビッグモスキートの群れに飲まれてたかもしんねぇだろ」

どうやら、アイリスがカタリーナにプロテクションを張らせて防御態勢を整えてから、ファイアボールを撃ってわざと爆発させたようだった。

涙目でマーギンを見るアイリス。

アイリスのことだから、てっきり考えなしに魔法を使ったのだと思ったマーギン。

「……悪かった」

「ハンバーグをあーんしてくれたら許してあげますよ」

マーギンはプロテクションを張り、無言でハンバーグ作りを始める。

「焼けたぞ」

「あーん」

ニコニコしながら口を開けたアイリスの何とも呑気な顔に、マーギンの早く遺跡に行きたいという焦った心が落ち着いていく。

じゅっ。

「熱いですっ、熱いですっ!」

ハンバーグを冷まさずにアイリスの口に押し付けたマーギン。

「ちゃんとふーふーしてから食え」

「ふ、ふーふーしてからあーんして下さい」

とアイリスが言っているのにそのまま押し付けてくるので、結局、アイリスは自分で食べたのだった。

「お前、あの爆発わざとやったのか?」

「何がですか?」

バネッサとアイリスが同じテントで寝ていると、バネッサが今日の爆発のことを聞いてきた。

「あれ、マーギンを呼び戻すのにわざとやったのかと聞いてんだよ」

「……えっ、あーまぁ、そうかもしれないですね」

アイリスは言葉を濁す。

「ほら、マーギンさんって、1人でなんでもしようとしちゃうじゃないですか」

「まぁな」

「なんか、あのまま1人で奥まで行っちゃうんじゃないかと思ったんですよ。私は魔法が使えなかったら邪魔なだけじゃないですか」

自分がこの森で足手まといになっているのを自覚しているアイリス。

「足手まといなのは分かってるんですけど、見届けたいんです」

「見届ける?」

「はい」

アイリスはバネッサの目を見て答えた。

「何を?」

と、バネッサに何を見届けるのか聞かれたアイリスはキョトンとした顔をする。

「何をでしょうね?」

「はぁーっ? お前が言い出したんだろうが。うちに聞かれても知るかよっ!」

「そうですね。私にもよく分かりません。でも見届けたいんです」

「だから何をだよっ!」

「さあ?」

こうしてテントのなかで堂々巡りをするバネッサとアイリスなのであった。