軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

役に立ちたい

あれからアイリスはがんばった。

朝から晩まで魔力が切れて倒れるまで森を燃やし続けた。大隊長が魔法で風を送って延焼速度を上げ、マーギンが歪みと反対側の森にウォーターキャノンで消火する。他のみんなは飛んでくる魔物討伐をした。

パタッ。

「あっ、魔力が切れそうになったら教えろって言っておいたのに」

アイリスは魔力切れで立てなくなるとかではなく、いきなり気を失うまで魔力を使い切る。魔法を覚えたての頃からこうだった。

「マーギン、今日はここまでだな。交代で見張りをするから、お前はアイリスのそばにいてやれ」

オルターネンにそう言われて、アイリスに添い寝をする。この方が魔力の回復が速いのだ。

「ったく、昔から変わらんなお前は」

そう言いながらマーギンが頭を撫でてやると、意識を取り戻したアイリスはギュッとくっついて寝るのであった。

「うむ、これで歪みの場所が特定できたな」

大隊長が腕を組んで頷く。

プロテクションステップの上から見た光景は、歪みを中心にぐるっと円を描いて燃え尽きていた。

「マーギンさん、おんぶして下さい」

アイリスは魔力を使い切っては急速回復を繰り返した影響か、1日で魔力を使い切ることがなくなっていた。しかし、マーギンに優しくされる日が続いていたので、甘えん坊モードが復活している。

「まだ立ててるだろ。そのまま寝りゃ朝には魔力が回復する。それにおんぶしてどこに行くつもりだよ?」

「別にどこにも行きませんよ?」

アイリスはキョトンとした顔でそう答える。まるでマーギンが変なことを言ったかのようだ。

「あーっ、もうっ!」

マーギンがしゃがんでやると、ひょいと背中に乗る。そして全身の力を抜いてマーギンにくっつく。

「はぁ〜、やっぱりマーギンさんの背中は落ち着きますねぇ」

そう言いながら寝てしまうのであった。

夜が明けてから結界石探しを開始した。マーギンはバネッサとカザフを守り、結界石探しに集中させる。

「やはりプロテクションは使えないのか」

「それどころか、ほかの魔法も使えませんよ」

大隊長が様々な魔物と戦いながらマーギンに魔法が発動するか聞く。魔法が発動しないのは他のみんなも同じ。唯一使えるのはパーフォレイトだけだ。

魔法が使えないとアイリスとカタリーナはただの小娘。大隊長とオルターネンがメインに戦い、ロッカたちは2人の護衛に専念する。

「くっ、魔法なしの戦いはけっこうしんどいものだったんだな」

土魔法を使いこなせるようになっていたオルターネンは、そう言いながら少し笑って魔物と戦っている。

「魔法が効かない魔物もいるからね」

マーギンも妖剣ヴァンパイアで戦っている。魔法は発動しないが、剣に魔力を込めることは可能のようだ。

そして、ときおりデカいラプトゥルが出てくる。

「ぐっ、硬いなこいつは!」

大隊長が足を狙って魔斧ヴィコーレで斬りつけたが、皮膚が少し斬れただけだ。

「大隊長、ハンマーで叩いてこかしてください、ちい兄様、ジェニクスに魔力を込めて首を斬って!」

バネッサとカザフを守りながら戦っているマーギンはヘルプに入れない。パーフォレイトで援護しようにも、妖剣ヴァンパイアにその魔力が流れたら暴走する可能性があるので撃てない。

「ふうぅん!」

デカラプトゥルの攻撃を躱してから、足をヴィコーレでぶっ叩く。

ごぉぉんっ。

鈍く大きな音が響き渡り、ズンっ、とデカラプトゥルが倒れた。

「死ねいっ!」

ぶっしゃぁぁあっ。

オルターネンが首を斬ると、おびただしい血が噴き出す。

「オルターネン、もうそいつに構うな。次が来るぞっ!」

デカラプトゥルが出る度に大隊長とオルターネンが連携して倒す。他の魔物はロッカ達が倒し続けた。

「はぁっ、はあっ、はあっ。きりがないな」

夕暮れまで戦い続け、大隊長とオルターネンが肩で息をしている。歪みに向かって進み、結界石を探しているとデカラプトゥルの出現率が高かったのだ。

「一旦、遺跡まで撤退しますか?」

「いや、一度ここから離れるとやり直しになるかもしれん。マーギンがプロテクションを張れる位置まで後退。そこで野営をしたほうがいい」

マーギンが撤退を進言すると、大隊長は近くで野営をしようと言った。

「あー、ぜんぜん見つからねぇ」

カザフが飯を食いながらぼやく。

「あぁ、魔物がこんなに出たら集中できねぇよな」

「まったくだよ。それにどっちかと言うと夜の方が見つけやすいんだけどな」

と、ちらっとカザフはマーギンを見た。

「ダメだ。夜は危険過ぎる。昼間でも2人を守ってるの大変なんだぞ」

「なら、俺1人ならいける?」

「えっ?」

「マーギンが守ってくれるのを信じて石を探す」

「だから危ないって言ってるだろ。プロテクションも治癒魔法も使えないんだぞ」

「でもさ、このまま同じことをしても見つけられねぇもしんねぇじゃん。俺だってマーギンの役に立ちたいんだよ」

と、アイリスの方をちらっと見た。

「役に立つとか……」

「あのなマーギン。俺たちは本当にマーギンに感謝してるんだ。寒くて腹が減って死にそうなときでも誰も助けてくれなかった。だからあのまま貧民街でろくでもない死に方をするもんだと思ってた。生き方からマーギンは俺たちを救ってくれたんだ」

「そんなことは気にしなくていいって言っただろ……」

「違うんだよっ!」

マーギンはカザフ達に死んで欲しくないと願ったが、何かを返してもらおうとは微塵にも思ってなかった。

「俺たちはマーギンが好きなんだよ。だから何かさせてくれよ。このままだと、このままだと……」

カザフはぐしっと、腕で鼻をこすって涙をこらえた。

「分かった。その気持ちを受け取らせてもらう」

マーギンはカザフの気持ちを汲んだ。何かをされっぱなしというのは、心の負担になるのと理解できたからだ。これが本当の親ならそこまで思わないのかもしれない。しかし、マーギンは親代わりであって親ではない。カザフの精神が大人になり、そういう心の負担を感じるようになったのだろうと思った。

「うちも連れてけよ」

「バネッサ、お前は昼間を担当してくれ。夜はカザフに任せる」

「昼も夜も探してちゃ、お前はいつ寝るんだよ?」

マーギンも毎日24時間寝ずに戦えるわけではない。

「マーギン、2時間で戻ってこい。それなら寝られるだろ」

オルターネンが折衷案を提案してくれた。

「そうだね。カザフ、見つけられなくても2時間限定だぞ」

「その時間で絶対に見つけてやるってばよ!」

こうして、マーギンとカザフは夜に結界石を探しにいき、また1つ結界石を見つけたのであった。