軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アイリスは大人

夕方にゴイルが帰ってきたので宴会になる。

「突然だったから、こんな料理しかないけど我慢してね」

宴会用のご飯はマーイが作ってくれた。

「おっ、珍しい焼きそばだな。旨いよ」

出された大皿から焼きそばを取り、一口食べて微笑んだ。

「うん、カレー風味の焼きそばって感じ? イルサンで売ってるお気に入りのカレー粉を使ってるの」

麺は米粉の麺。ソースの代わりにカレー粉を使い、隠し味に醤油も入ってるそうだ。具材はシーフードがふんだんに入っている。めちゃくちゃ旨い。

「次は同じ味で悪いんだけど、こっちも食べてみて」

次に出てきたのは、ご飯の上にカレー味の具材がのっている。おうちカレーとはまったく違うものだ。

「ん? これはタマネギがメインか?」

「そう! 辛くて甘くて美味しいの」

タマネギだけのキーマカレーみたいな感じだ。これも旨いと、喜ぶマーギン。

「辛ぇ。水くれよ水」

辛いものが得意ではないバネッサ。

「あ、ごめーん。辛くないのも作れば良かったね。これ飲むと辛いのが収まるよ」

マーイが出してくれた白い飲み物をゴクゴクとバネッサは飲んだ。

「これ、旨ぇ。それに辛いのがなくなったぞ」

すっかりと辛いのが収まったバネッサは飲み干したコップを驚いて見つめた。

「でしょ。水だと辛いのがなくならないけど、これなら辛いのがマシになるの。何か辛くない他のご飯作ろうか?」

「いや、このジュースをもっとくれよ。それならこのカレーも食べられる」

バネッサと同じく、辛さにハヒハヒしていたアイリスとポニーも白い飲み物をもらい、辛さを中和しながらカレーを食べる。マーギンたちはレモンサワーだ。

飯を食いながら、ゴイルにナムや他の集落の近況を教えてもらうと、どの集落も美味しいものが手に入るようになり、生活水準がぐっと上がったとのこと。それは何よりだ。

「マーギンは忙しくしてるんだな」

ゴイルはカレーをおかわりしながら、マーギンの近況を聞く。

「色々とあってね」

「今回、タイベには何をしに来たんだ?」

「王都とタイベの間にある森に、見つかってない遺跡があるんじゃないかと思って探してるんだよ」

「ムーの遺跡か? 荒らされてなくなっただろ」

ゴイルの言う遺跡とは、ガインの亡骸が安置されていた所のことだ。

「他にもあるかもしれないんだよね。他の国で保管されてた地図にそれらしき場所が記されてたんだ」

「そうなのか。で、遺跡を見つけて何をするつもりなんだ?」

ゴイルにそう聞かれて、マーギンは少し間をおいた。

「……興味本位ってのもあるけど、そこに大切なものがあるんじゃないかと思ってな」

「大切なものか。お前のこったから、金目のものじゃなさそうだな」

「まぁね。それが見つかって落ち着いたら、みんなを王都に連れて行くよ。前に約束してたからな」

「おう、そうだったな。楽しみにしてるぞ」

それからは、マーイに踊ってもらったり、みんなに踊ってもらったりして、宴会を楽しみ、タジキは今日食べた料理の作り方をマーイに教えてもらっていた。

宴会が終わったあと、男だけで飲もうとなり、ウィスキーを楽しむマーギン。

マーギンのテントにバネッサ、アイリス、ポニーが寝ているので、自分が寝る場所もないだろうから、このまま外でキンとギンにもたれて寝ればいいと、遅い時間まで飲んだのだった。

「ポニーはデカくなったよな」

先に寝たポニーを見ながら、バネッサが頭を撫でる。

「……そうですね」

バネッサは身長のことを言ったのに、アイリスは自分の胸を見ながらしんみりと返事をする。

「胸じゃねー。身長だ、身長。それより、ひとつ聞いていいか?」

「はい。なんでしょう?」

「お前、マーギンといつまで一緒にいるつもりだ?」

「え?」

バネッサにそんなことを聞かれると思っていなかったアイリスは驚いた返事をする。

「いつまでって……」

「マーギンが使命を果たしたあとも、あいつがうちらと一緒にいる保証はねぇだろ?」

「そんなことない……ことはないでしょうねぇ」

と、アイリスはテントの上を見つめて答えた。

「お前、覚悟してたのか?」

「もちろんです。元々、私の面倒を見てくれるのは、私を星の導きメンバーにしたときに終わりだったんです」

バネッサはアイリスが仲間になったときのことを思い出した。

「そうだったな……」

「はい。結局、それからずっと面倒を見てもらってますけど、それももう少しで終わるんでしょうね。淋しいですけど、仕方がありません。マーギンさんにはマーギンさんの人生がありますから」

「お前……」

「それより、バネッサさんは大丈夫なんですか? マーギンさんのことを好きなんですよね?」

「う、うちは……」

バネッサは、マーギンが自分たちから離れる覚悟をしとけとアドバイスするつもりだった。しかし、アイリスは自分が思っているよりずっと大人で、しかも、自分の心の中を見透しているとは思っていなかったのだ。

「どうなるかは、そのときが来たら分かりますよ。バネッサさんこそ、気持ちの整理をしておいた方がいいですよ」

と、最後はにっこりと微笑みながら、バネッサにとってキツいひと言を残したのだった。

いつの間にかキンとギンに埋もれて寝ていたマーギンは、キンとギンが同時に顔をあげたので起きた。

「どうした?」

マーギンが声をかけると、2匹が顔をペロペロと舐めてきた。何かを警戒したわけではなさそうだなと、上を見るとまん丸お月さんが、自分たちを明るく照らしていた。

「しかし、今日はずいぶんと月が明るいな」

マーギンがそう声をかけると、2匹は同じ方向に顔を向けた。

「ん? 何かいるのか……」

マーギンは2匹と同じ方向を見た。そして、その目に映ったのは

「ミスティ……」

そう呟いて、息を呑んだのだった。