作品タイトル不明
参考にならない討伐方法
「よぅ、久しぶりだなロブスン」
「いいところに来てくれたマーギン」
魔カイコの村に到着すると、ロブスンが指揮を取り、ワー族とタイベのハンターが小型のラプトゥル討伐を行なっていた。
「苦戦してると聞いてな。被害はどれくらい出てる?」
「人的被害はないが、魔カイコが荒らされた。夜間にいつの間にか入り込まれたようだ」
「分かった。とりあえず、ここらにいるラプトゥルを一掃しよう。みんなをこっちに戻してくれるか」
「大魔法を撃つのか?」
ロブスンはマーギンのフェニックスを思い出して苦い顔をした。
「あんなのは使わんよ。せっかく育ってきた魔桑木がなくなるだろ」
フェニックスを使わないと言ったことで、ロブスンはほっとしたようだ。
「アイリス、ラプトゥルだけを焼け。絶対に魔桑木を燃やすなよ」
「フリですか?」
キョトンとした顔でマーギンを見るアイリス。
「違う。ガチだ」
と、マーギンが怖い顔をすると、「冗談ですよ」とアイリスは笑った。
「いいか、絶対に燃やすなよ」
念を押すマーギン。
「大丈夫ですって。ではいきます」
「ま、待て。まだみんなが退避できて……」
《ファイヤスライム!》
ハンターたちが退避していないのに、アイリスが無数のファイヤスライムを出してラプトゥルを狩りにいく。ホーミングさせているから、ハンターを焼くことはなさそうだ。
「しかし、数が多いな」
ファイヤスライムに追われたラプトゥルが飛び跳ねて逃げ回る。これでは一網打尽とはいかなさそうだ。
「囲むぞ。飛び出たやつはバネッサが狩れ」
「了解!」
オルターネンが土魔法で壁を作り、散らばるラプトゥルを囲む。そこから飛び出たやつはオスクリタの餌食になっていく。
「カザフ、タジキ。掴んで投げるから斬って」
「おっしゃ!」
トルクが見えない手でラプトゥルを掴んで、カザフたちの方へポイと投げ、それを2人が斬っていく。すばしっこいラプトゥルも、投げられたら逃げようがないので楽勝だ。
「トルク、こっちにも投げろ」
ロッカはレーキのときと同じく葬らんをしたいようだ。
「葬らんっ!」
投げられたラプトゥルを思い切り打ったロッカ。
ぶちゃっ。
飛んでいかずに、その場で爆発するかのように飛び散ったラプトゥル。まるで血と肉片の花火だ。
「ロッカ。やめろ、グロ過ぎる。やるなら剣で斬れ」
「す、すまん。こいつら柔すぎるぞ」
「レーキと一緒にすんな。もうお前は見とけ」
と、マーギンに怒られてしょんぼりするロッカ。
「ロッカ、連斬りの特訓でもやるか?」
と、大隊長が参戦。
「俺が風魔法で集めてやろう。斬りこぼすなよ」
「わ、分かりました。お願いします」
大隊長が竜巻のような風でラプトゥルを巻き込み、ロッカの上にバラバラと落とす。
「フンフンフンフンっ!」
大量に落ちてくるラプトゥルを斬るロッカ。しかし、全部を斬りきれない。
「斬りこぼしているぞ。もっとスピードを上げろ」
「フンフンフンフンっ。こ、これ以上は……」
スピードより力のロッカに、この数は厳しそうだ。
「ローズ、お前もロッカと共にやれ。競争だ」
「わ、私は姫様の護衛が……」
いきなり討伐に加われと言われたローズはカタリーナの顔を見る。
「ローズ、お前もたまには実戦をしておかねばならん。姫様はマーギンに任せて、参戦せよ」
「ローズ、頑張ってね」
カタリーナにそう背中を押されて、ロッカと共にラプトゥル討伐に参加したローズ。
「フンッ! フンッ!」
「遅いぞローズ。連斬りせよ。いちいち止まるな」
「フンッフンッフンッ!」
「もっと! もっと速くだ。数を増やすぞ」
大隊長は実戦から離れていたローズの感覚を研ぎなおすかのように、無茶な数のラプトゥルを頭上から降らせた。
時折、斬りこぼしたラプトゥルがローズの上に落ち、噛みつかれる。
「クソっ!」
自分に噛みついたラプトゥルの首を掴んで投げて斬る。噛まれたところから血が出るが、痛いという感覚が襲ってくる前に、次々とラプトゥルが自分目掛けて降ってくる。
スパパパパパっ。
だんだんと、ローズの神経が研ぎ澄まされ、落ちてくるラプトゥルがスローモーションのように見え始め、斬りこぼすことがなくなった。
ざわざわ、ざわざわ。
待避してきたワー族とタイベのハンターたちが、マーギン一行の戦いを見てざわついている。
「な、なんだよあの戦い方は……」
「ったく、マーギンたちの戦い方はなんの参考にもならん」
ロブスンは誰の参考にもならない戦い方を見て呆れていた。
「終わったぞ。とりあえずこの周辺にいたのは殲滅した。しばらく大丈夫だろ」
ラプトゥルがいなくなり、マーギンがロブスンのところに来た。
「他のやつらの参考になる戦い方をしてくれた方が良かったんだがな」
「アイリスとトルクのは無理だろうけど、大隊長のやつはできるだろ?」
「誰がやるんだ?」
「もうすぐ来るだろ」
と言ってると、
「酷いでヤンスよ、酷いでヤンスよ!」
と、ピアンが走ってきた。
「何が酷いんだよ? 金はポケットに入れといただろ」
「アッシを置いていったことでヤンスっ!」
「サボったあげく、酒飲んで起きなかったのはお前だろ」
「ピアン、貴様、酒飲んでたのか?」
と、酒を飲んで酔い潰れてたことをバラされたピアンはロブスンに睨みつけられた。
「ちょっとだけでヤンス。オヤビンとの再会の祝杯をちょこーっと、飲んだだけでヤンス」
と、両手を振ってロブスンに言い訳をするピアン。
「お前、俺たちがラプトゥル討伐している間、こっちに来ずに見てたよな?」
「えっ?」
ピアンが近くに来ていたことはマーギンにはバレていた。
「あ、あんな遠くでも気づいてたでヤンスか?」
まさかバレているとは思っていなかったので、つい、自白したも同然のピアン。
「ピアン、貴様というやつは……」
「ちっ、違うでヤンス、違うでヤンス。アッシがいたら邪魔になると思いヤンして……」
「ロブスン、こいつは竜巻を出せるだろ? 大隊長みたいにラプトゥルを巻き上げて、斬るのはハンターにやらせればいい」
「なるほどな。そういうことか」
「ゲッ! 無理でヤンスよ。アッシは自分の周りにしか竜巻を出せないでヤンス」
「なら、明日からお前が森に入り、ラプトゥルを引き連れてこい」
「えっ? そ、そんな役割をするんでヤンスか……」
「お前に、肉片をくくり付けてやればラプトゥルが集まって来るだろう」
こうして、サボりがバレたピアンは、翌日からラプトゥルの撒き餌役をやらされるはめになるのであった。