作品タイトル不明
最悪だ……
「お前、まだ怒ってんのかよ?」
「怒ってないけど、あの男はいつも人をイライラさせてくれるのが腹立たしいのよ」
「やっぱ、怒ってんじゃんかよ」
久しぶりに、星の導きメンバーが共同生活の家に集合して飲んでいる。バネッサがシスコに酒を注いでやると、グビグビと飲み干した。
「おい、アイリス。寝るなら自分の部屋に行け……まったく、しょうがないやつだな」
酔ったアイリスがリビングで寝てしまい、ロッカが寝室に連れて行った。
「そういうあなたはどうなの? ずいぶんとマーギンにべったりらしいじゃない」
と、シスコに嫌味を言われたバネッサ。
「そうだな」
シスコはてっきり、「そんなんじゃねーよっ!」と言い返してくると思っていたのに、バネッサはあっさりと認めた。
「何よあなた、マーギンに惚れちゃったわけ?」
シスコにそう言われたバネッサは少し間を置き、
「そうかもしんねぇ」
と、バネッサは甘めの酒が入ったグラスを眺めながら認めた。
「えっ? 本気で言ってるの? あなたが誰かに惚れ……てもおかしくないか。もう私たち、結婚しててもおかしくない年齢になってるものね」
バネッサの言葉に驚きはしたが、よく考えると、男っ気がない方がおかしいのかもしれないと思う。
「で、マーギンはあなたの方を向いているのかしら?」
「いや、女として扱ってはくれるが、うちをそういう対象では見てねーよ。まっ裸で隣に寝てても何もしてこねーし」
「えっ? あなた、裸でマーギンと寝てるのっ?」
「たまたまだよ、たまたま。うちが酔って、風呂で寝ちまったときに溺れそうだったから、バスタオルにくるんで寝かせてくれたんだよ」
「何よ、それ? もう家族みたいな感じじゃない」
「家族でもねぇよ。単なる仲間ってやつだ」
と、バネッサが遠い目をしたことで、シスコはバネッサの心情を理解した。
「……あなた、辛くはないの?」
「今は辛くはねぇよ。今はな」
「どういう意味?」
「マーギンが目的を果たすまでは多分一緒にいられると思う。うちはマーギンに色々と大切なものをもらった。だから、目的を果たす手伝いをしてぇ」
「マーギンが目的を果たしたらどうなるって言うの?」
「きっと、自分の人生を歩くんじゃねーか」
「今は自分の人生を歩んでないと言いたいの?」
「うちはそう思う。でも、目的を果たして、自分の人生を歩くときに隣にいるのはうちじゃねーだろうな、と思ってる。辛くなるのはそのときかな」
「あなた……」
シスコは自分たちと一緒にいたころより、バネッサがずっと大人になっている。マーギンがバネッサをここまで変えたのかと驚いた。
「マーギンはあなたのことを気に入ってるでしょ。目的を果たしたあとも蔑ろにしないわよ、きっと」
シスコがそう慰めると、バネッサは少し遠い目をして、そうだといいなと答えたのであった。
◆◆◆
「あった!」
王都に戻ってきてから、ずっと城に保管されている書物を読み漁っていたカタリーナ。
「姫様、何が見つかったのですか?」
ローズはカタリーナの後ろから、本を覗きこむ。
「んーとね、結界に関する本」
「結界? なんのために調べてたんですか?」
「ローズは隠密の里って知ってる?」
「いえ、知りません」
「隠密が住んでる里なんだけど、誰もその場所を知らないの。お父様もお母様も知らないの。多分、結界が張ってあって、誰にも見つからないようにしてるんじゃないかなって思うんだ」
「なぜそれを調べるのです?」
「もしかしたら、マーギンが探している遺跡にも結界が張ってあるから見つけられないんじゃないかと思って」
「それを調べてたんですか」
「うん。違うかもしれないけど、何かヒントになるかもしれないし。これマーギンのとこに持って行こうっと」
◆◆◆
「カザフ、またその石見てんのか?」
カザフは遺跡探索のときに拾った石を眺めていた。
「これ、やっぱいいよなぁ」
「それ、バネッサ姉が見つけた石とそっくりだよねぇ」
トルクは少しからかい気味でクスクスと笑う。
「ばっか、俺の石の方が綺麗だっての」
カザフはトルクにそう言い返したが、お揃いの石みたいな感じがしていたのだった。
◆◆◆
「やっぱり、これが怪しいな」
ハンター組合の組合長室で、ロドリゲスもまた、なぜ遺跡を見つけられないか色々と調べていた。そして、一つの結論に至る。
「結界か……」
◆◆◆
「おっ、いいねぇ、いいねぇ」
久しぶりのお一人様を満喫するマーギン。
イカを乾燥させてスルメを作り、炙ったものを醤油マヨレモンにつけて食べ、日本酒を飲む。
「天ぷらにもするか」
スルメをかじりながら、さっと揚げていく。
「かーっ、たまらんね」
と、飲んでいるが少し物足りない。1人だと、美味しいを共有することができないのだ。
ガチャガチャガチャガチャ。
そう思っていると、ドアを開けようとする音がしてきた。
「マーギン来てあげたわよ」
入ってきたのは酔ったシスコとバネッサ。
「お前ら2人か?」
「そうよ、悪い」
あ、これはダメなやつだとすぐに理解するマーギン。
「帰れ!」
「そんなこと言うなよ」
と、バネッサが抱きついてきた。
「お前、相当酔ってるだろ?」
「酔ってねーよ。これなんの天ぷらだ?」
「スルメだ。いいから離れろ」
と、バネッサを振りほどくと、
「スルメの天ぷらだってよ。ヒャッヒャッヒャ」
何がおかしいのか、スルメの天ぷらをつまんで笑いだすバネッサ。そして、シスコもつまんで笑いだす。
「最悪だ……」
「マーギンっ!」
そして、カタリーナとローズ参上。
「あーっ、バネッサとシスコを連れ込んでる」
「人聞きの悪いことを言うな。こいつらも今来たんだよ」
と、怒るマーギンを気にせずに、1冊の本を見せる。
「あのね、あのね。この本の内容……」
と、カタリーナが何をしにきたか説明しようとすると、ローズが酔っぱらいに絡まれた。
「ス、スルメ、スルメの天ぷらだってよ。ヒャッヒャッヒャッ」
「な、何だこれは? マーギンは2人に何したのだ?」
バネッサとシスコからスルメの天ぷらを目の前でプラプラされて困惑するローズ。
「マーギン、この2人は相当酔ってるの?」
カタリーナがその様子を見て、マーギンの方へ避難。酔っぱらいの生贄にされるローズ。
「みたいだ。家で飲んでここに突撃してきたんだよ。いい迷惑だよまったく」
と、呆れるマーギンに、カタリーナは結界のことを伝え、本を見せた。
「結界か。この本に描かれている魔法陣だと侵入させないだけだな。これなら、遺跡を見つけられない理由にはならんぞ」
「えー、そうなの? せっかく色々と調べたのに」
「ずっと調べてくれてたのか?」
「うん」
魔導金庫のときもそうだった。カタリーナは戻ってすぐに調べてくれていたようだ。
それを知ったマーギンはカタリーナの頭をくしゃくしゃっと撫でて、
「なんか食うか?」
「うん!」
「あー、カタリーナだけずりぃぞ。うちは甘辛」
と、カタリーナに聞いたのに、バネッサからリクエストが入ったので、スルメの天ぷらを甘辛にして、魚の天ぷらも作る。
「でき……た、最悪だ……」
ローズもカタリーナも酔っぱらい2人に日本酒飲まされている。あんな飲まされ方をしたら酔うに決まってる。
そして、酔っぱらいが4人になり、酔いそびれたマーギンが生贄になるのであった。