軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ピアス

「うちらも行くのかよ?」

「嫌か?私は旅行代わりに行ってみたいと思ったのだがな。船で違う領に行くなど他国へ行くようで面白いとは思わんか?気候もずいぶんと違うらしいから、見たことのない魔物とかいるやもしれんぞ」

「金とかどーすんだよ?」

「向こうにも組合があるだろうから、足りなくなれば依頼を受ければいい」

「ロッカが決めたなら私は行ってもいいわよ。バネッサは行きたくないなら留守番してればいいじゃない」

「誰も行きたくねぇとか言ってないだろっ。なんでシスコはいつもそんな嫌味な言い方をすんだよっ」

「いつもあなたが先に文句を言うからでしょ。行きたいなら初めから素直に行きたいと言いなさいよっ」

「なんだとてめぇ…」

マーギンがパラライズを掛ける準備をしているのに気付いて止まるバネッサ。

「うちが先に風呂に入るからなっ。干しぶどう全部食うなよっ」

と、言い残して風呂に行った。

「お前らいつもこんなんでよくパーティーやってられんな」

呆れるマーギン。

「バネッサはああ見えて警戒心が強いからな。日頃と違う事が発生するとまず心配から入る。シスコは冷静だが新しい事に躊躇がない」

「端から見てたら雰囲気的には逆なんだけどな」

「ロッカが言い出したら反対しても無駄なんだから、言い争うだけ無駄なのよ。そこそこ付き合いも長いんだからいい加減に理解すればいいのに」

「私も引く所は引いているではないか。マーギン、私にも一杯くれ。割らなくていい」

ロッカはダークラム酒をストレートで飲み、ジャーキーをつまんだ。実に男らしい。

「この酒も干し肉も旨いな。どこで買った?」

「干し肉はマーギンの自作だって。アイリスに渡した携行食も自作らしいわよ」

「ほぅ、飯も作れるし、こういうのも作れるのか。便利だなお前」

「便利言うな。食いたいものが売ってなかったら作るしかないだろうが」

「これはなんの肉だ?」

「オーキャンの腹の肉。程よく脂もあるし、干してもあんまり硬くならないからつまみにちょうどいいだろ?」

「これは調味料に漬けて干しただけか?」

「いや、燻製にしてあるぞ。ソーセージとかベーコンとか燻製だろ。これも同じだ」

「なるほど、売ってる干し肉は携行食だから燻製までしてないな。まずい干し肉も少し手間を掛けると旨いものなんだな」

「売ってるやつは保存性を第一に考えてあるから俺は好きじゃないんだよ。マジックバッグがあればそこまで保存性にこだわる必要もないからな」

「そうか、やはりマジックバッグは1つ手に入れる必要があるな。どうするシスコ、パーティーで1つ買うか?」

「パーティー資金と手持ちのみんなのお金出して買うぐらい必要よ。そこまで価値あるかしら?」

「買わなくていいよ。アイリスに1つ持たせるつもりだから」

「え?」

「マジックバッグってな、容量をデカくして物を詰め込むと魔力を結構使う。魔石使ってるとそこまで便利なものでもないんだ」

「そうなのか?」

「アイリス用に俺が作ってやる。出し入れはお前らのみにする専用バッグだ。予備の魔結晶も入れとくけど通常時はアイリスの魔力を使うからリュックサイズで牛1頭分ぐらいは入って、魔結晶の魔力はほとんど使わんと思うぞ」

「いいのか?」

「アイリスは補佐役だろ? 荷物持ちには必要だ。着替えもテントもそこに入れときゃ遠征も楽だし、狩った獲物も持ち帰れる。一人増えたら収入もそれに合わせて増やさんとダメだからな」

「マーギンさん、私が持つんですか?」

「お前、他に何するつもりなんだよ?ロッカ達の手があいているということは、戦いに有利になるんだぞ。お前、着火と水出せるだけでいいとか勘違いすんなよ?」

「は、はい」

そのうち戦う事にもなるだろうけどな。

「マーギン、マジックバッグって相当高いのよ。しかもお金出しても買えないかもしれないものなのに」

「俺はマジックバッグを作れるから費用はリュック代だけだ。見た目は普通のリュックにするからな。タイベに行く時までに作っておく」

「売ればかなりのお金になるわよ?」

「魔道具で商売するつもりはないよ。そのうち回路の組み方を教えろとか、うちを優先して卸せとかになる。で、そのうち貴族が絡んできて面倒事になるんだよ。魔道具は自分が楽にする為にしか作るつもりはない」

「なんか勿体ないわね」

「金はあっても困らんけど、魔法が使えたらなくてもどうとでもなる。このジャーキーみたいにな」

と、マーギンはジャーキーをかじって酒を飲んだ。

「干しぶどう残ってんだろうなっ」

バネッサが短い時間で風呂から出てきた。頭ビチャビチャじゃねーかよ。

「髪の毛をちゃんと拭いてから出てこいよ」

「全部食ったぞ」

干しクランベリーはカザフ達が平らげていた。

「あーーっ、残しとけって言っただろうがっ」

「へへーん、早い者勝ちっ」

「てんめぇぇっ」

「バネッサ、いい加減にしてこっちに座れ」

マーギンに椅子に座れと言われてブツブツというバネッサ。

マーギンはバネッサの頭をバスタオルでクシャクシャと拭き、子供たちにやるように風魔法の温風で乾かしてやる。

「おっ、こんな事も出来るのかよ」

「お前はまだ髪がショートだからすぐに乾くけどな、ロッカとシスコは乾かすの大変だろ?ロッカもドライヤー使えば良かったのに」

「ドライヤー?なんだそれは?」

「風呂場横の洗面所に置いてあっただろ?」

「ん、それは知らぬがドライヤーとはなんだ?」

「髪を乾かす魔道具だよ。寝癖とかもそれで直すんだ。バネッサの毛が跳ねてるのも直るぞ」

「マーギンさん、すいません。お風呂の説明しか説明してませんでした」

「なんだドライヤーの説明してないのか。ロッカ、お前の髪もまだ濡れてるだろ?アイリスに使い方を聞いて試してきたらどうだ?気に入ったなら作ってやるぞ」

「いいのか、この時期は朝まで濡れてたりするから困っていたのだ。アイリス、使い方を教えてくれ」

へぇ、髪が長いと朝まで濡れてるのか。それは嫌だろうな。ならローズも欲しがるかな?今度来た時に渡してあげよう。

「じゃ、私もお風呂入らせて貰おうっと」

シスコも風呂に行った。

「ほら、バネッサ乾いたぞ。干しクランベリーはまだあるから暴れんなよ」

「それを早く言えよっ。あ、頭が軽くなったぜ へへっ」

バネッサは干しクランベリーをガツガツと食いながら酒を飲む。食い方がガキ共と一緒だな。

「マーギン、腹一杯で眠ぃ」

「なら下の部屋で寝ろ。寒かったら暖房のスイッチ入れろよ」

「わかったー」

3人ともお腹一杯で眠くなったようなので寝に行った。後で洗浄魔法をかけておこう。アイリスもロッカにドライヤーの説明をしたあとに眠いというので洗浄魔法をかけてやる。お前もさっさと寝てこい。

「マーギン、宝石どうなってんだよ?」

「あ、そうだったな」

マーギンは宝石の袋を出し、ジャラっとテーブルにひっくり返した。

「すっげぇ、こんなに宝石持ってんのかよ?」

「まだあるけどな。手頃な大きさの方がいいだろ?」

「デカいのもあんのか?」

「あるぞ。でもデカいのは持ってるのがバレるとヤバいみたいだからな。これぐらいのにしとけ」

「ちぇっ、でも全部綺麗だよなぁ」

「何を選んでもいいけど、アクセサリーに加工すんのは自分で金払って作ってもらえよ」

「えーーっ、加工はしてくれねぇのかよ?」

「簡単なものだったらしてやれるけど、そういうのってセンスが必要なんだよ。俺にはどんなデザインがいいとかわからんからな。プロに頼めプロに」

バネッサはこんな時にとかブツブツ言っているが意味がわからん。

「この白い丸いのも宝石か?」

「それか?それは真珠だ。貝から取れるやつだな」

「へぇ、貝から宝石が取れんのかよ?」

「なんか形の悪い奴は安いみたいだけどな、まん丸で形が揃ってると価値が上がるらしい」

「これも綺麗だよな」

「それにするか?ピアスぐらいなら今加工してやれるぞ」

「ピアスってなんだ?」

「耳に穴あけて刺しとくんだよ」

「えっ?耳に穴をあけんのかよ?」

「そうだ。針が通るくらいの小さな穴だ。そんなに痛くないらしいぞ。まぁ、俺ならまったく痛くなく穴をあけてやることも出来る。それにそのまま何にも付けてなかったら穴も塞がるみたいだしな」

「えっ?マジかよ。ならやってみてくれよ」

「わかったよ。他にはいいのか?」

「いくつも選んでいいのかっ」

「欲しかったら好きなの選べ。俺には金の代わりにしかならん」

「へへっ、やったぜ。ならこの真珠ってやつと、後はどうしよっかなぁ」

バネッサは1つ1つ手に持って明かりに透かして眺めている。

「おっ、それが宝石か」

「ロッカも欲しかったら選んでいいぞ」

「いいのか?売ればかなりの金になるぞ」

「他にもあるからいいよ」

ロッカもやっぱり女なんだな。嬉しそうに宝石を見だした。

「シスコは?」

「髪を乾かしているからもう少ししたら来ると思うぞ」

「マーギン、決めたっ。うちはこれにする。太陽みたいでめっちゃ綺麗だ」

バネッサが選んだのはオレンジがかった黄色い宝石。

「私はこれがいいな」

ロッカはブルーの宝石。

「あら、先に選んじゃったの?ズルいわよ」

「へへーん、早い者勝ちだ」

「バネッサは何を選んだのかしら?」

「うちはこれ。後は真珠だ」

「あら、いい真珠ね。少し小粒だけれどここまで形の綺麗な真珠は初めて見たわ」

「こ、これはうちのだからなっ」

真珠を握って後ろに手を回すバネッサ。

「取らないわよ。じゃあ私はこれにしよっと」

シスコが選んだのは透明な宝石。多分ダイヤモンドだろう。宝石の名前でわかるのは数種類しかないけどダイヤモンドぐらいは知ってる。

「加工はどこかに頼んでくれ。バネッサ、真珠をかせ。いまやってやる」

マーギンはバネッサから真珠を受取り、手持ちのアリストリア王国の金貨を錬金魔法で溶かして細工をしていく。

「今何をやったのかしら?金貨が溶けたみたいなんだけど」

「錬金魔法ってやつだ。金属の形を変える魔法だね。あんまり細かい作業には向いてないけど、これぐらいなら出来る」

真珠を台座で留めて、ピンの形にする。

「こんなもんか。バネッサ、ここに座れ。動くなよ」

マーギンは痛み止めの魔法を耳にかけ、穴をあける場所を親指と人差し指で挟んだ。

パチッ

指と指の間に高出力の魔力を流して穴をあける。反対の耳も同様にし、そこに真珠のピアスを着けた。

「もう終わったのか?」

「痛くなかっただろ?洗面所の鏡を見てこいよ。もうピアスが着いてるぞ」

「マジかっ 見てくるっ」

「イヤリングじゃなしに、直接耳に穴をあけて着けたの?」

驚くシスコ。

「バネッサがイヤリングしたら落っことすだろ?あれはピアスというアクセサリーだ。耳にあけた穴にピンを通して、反対側を留め具で留めたから落ちにくいんだよ。穴の場所が気に入らなければ、ピアスを着けなかったらそのうち塞がる。俺がやれば穴をあけるのも痛くないからバネッサにはちょうどいいだろ」

そしてむふふふっと笑いながら戻ってくるバネッサ。

「ど、どうだ?似合うかっ 似合うだろ。なっ、なっ どうだ?」

想像していたより似合ってるな。ショートヘアだから耳も見えてるのでピアスがよく映える。

「おぉ、似合ってんぞ。めっちゃ可愛いわ」

可愛いを付け加えた事で真っ赤になるバネッサ。

「てっ、てっ、照れるじゃねーかよっ。マーギンの癖にお世辞を言いやがって」

「いやぁ、我ながら良く出来たピアスだ。めっちゃ可愛いわ、ピアスが」

「てっ、てっ、てんめぇぇっっ。からかいやがったなぁぁっ」

自分がからかわれたと分かったバネッサはマーギンを羽交い締めにして怒っていたのであった。