軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

叩かれてさざ波

「マーギン、あれはどうやって倒す?」

プロテクションにドンっ、ベチャと体当たりをしているサラマンダーを見ながら、オルターネンと倒し方を相談する。

「俺がやるならパーフォレイトで倒せると思うけど、あいつは毒持ちみたいだから、遠距離攻撃の方がいいね」

「アイリスの炎攻撃は毒が気化してダメなんだな。俺のストーンバレットで倒せそうか?」

「あの手のやつをストーンバレットで倒そうと思うと、かなりの威力と弾数が必要だと思う」

ヌルヌルのブヨっとした感じの皮膚だとストーンバレットは効きにくいだろう。

「俺の風魔法なら倒せるか?」

大隊長はヴィコーレをサラマンダーに向けてそう言う。

「毒をこっちに来ないようにするには効果があると思うけど、倒せないと思う」

「厄介な敵だな」

あとは氷魔法で動きが鈍くなる可能性はあるが、水生タイプに同系統の魔法は効果が薄いのが定番だ。だが、ここにいるメンバーで試すにはそれしかない。

「ローズ、氷魔法で試そうか」

「わっ、私がやるのか?」

ぬるんぬるんのサラマンダーはローズの苦手なタイプなので、嫌そうな顔をした。

「マーギン、僕が見えない手で掴んでみるー」

と、トルクがやってみると言い出した。

「掴んでどうするつもりだ?」

「掴んで固定してたら、隊長のストーンバレットで倒せないかな?」

多分無理だろうなとマーギンは思ったが、いろいろと試して経験値を貯めた方がいいと思い、やらせてみることに。

「じゃ、プロテクションを解除するからな。大隊長は風魔法で毒がこっちに来ないように援護をお願いします」

「トルク、いいぞ」

オルターネンもストーンバレットの弾を浮かべてスタンバイ。トルクは両手で掴むつもりのようで、両手を前に出してイメージを固めた。

《解除!》

マーギンがプロテクションを解除すると、トルクが暴れているサラマンダーをぐっと掴んだ。

「捕まえ……あっ……」

ぬるん。

見えない手からぬるんと抜け出すサラマンダー。

「このっ、このっ、このっ!」

ぬるん、ぬるん、ぬるん。

見えない手でのサラマンダーの捕獲はまるでドジョウ掴みのようだ。

「トルク、顎を掴め」

マーギンはトルクに胴体ではなく、下顎を掴ませた。

グルン、ぬちゃっ、グルン、ぬちゃっ。

ワニのようにデスロールするサラマンダーから粘液があちこちに飛び散る。

「大隊長っ!」

「フンッ!」

風魔法でぬちゃぬちゃがこっちに飛んで来ないようにコントロールする大隊長。

《穿てっ。ストーンバレット》

オルターネンがスタンバイさせていたストーンバレットを乱れ撃ちする。

シュバババっ。にゅるるるるん。

しかし、体表の粘液で阻まれ、すべてのストーンバレットが無効化されてしまった。

「くそっ、ダメか」

悔しそうな顔をするオルターネン。マーギンはだいたい想定してた通りになったなと、その様子を見ていた。

「トルク、まだいけるか?」

「結構キツイー」

このサラマンダーはぬちゃぬちゃしている上に、パワーもかなりある。見えない手で抑えているのも神経と魔力をかなり使っているだろう。

「ローズ、氷の刃で攻撃してくれ」

「しっ、しかし」

ぬちゃぬちゃと暴れているサラマンダーに腰が引けているローズは青ざめている。

「早くしないと、見えない手を抜けてこっちに来るぞ」

「くっ……」

「ピーマンに詰めてやろうか?」

「嫌だーーーっ!」

ミミズピーマンが脳裏によぎったローズは、サラマンダーを自分に近づけまいと氷の刃を大量に出した。

「大隊長、あの氷の刃ごと、竜巻で包んで」

「任せろ」

ヒュゴォォォ。

竜巻が氷の刃を巻き込んでサラマンダーを包んだ。

「マーギン、この魔法って……あのときの?」

と、カタリーナがこの魔法を見て気づいたようだ。これは前に見せたことがある《ブリザードカッター》だ。

「そう。大隊長の風魔法とローズの氷の刃の複合魔法で再現してもらった」

「倒せそう?」

「ローズの氷魔法しだいだな。もっと温度を下げられたら、倒せるんじゃないか?」

氷の刃もあまり効果を出してないように思えるが、サラマンダーの動きが鈍ってきた。極低温では活動ができないのだろう。

「ローズに温度を下げさせればいいのね?」

「そうだ。今は自分に近づけたくなくて、必死だから、そこまで集中できてなさそうだ」

そう聞いたカタリーナはローズのそばに行き、耳打ちをする。

「もっと温度を下げないとダメだって」

「今も必死なんですっ!」

「でも下げないと、ローズの所に来るかもだって。ほら、ぬちゃぬちゃぬちゃ……」

耳元でぬちゃぬちゃと言われたローズは全身に鳥肌が立つ。

「ひぃぃぃ」

そのことで一気に温度が下がり、サラマンダーの体表の粘液が凍り始めると同時に、硬度を増した氷の刃が斬り刻んだ。

ザシュ、ザシュ、ザシュ……。

どんどんと切り刻まれていくサラマンダー。

そして、細切れになったところでローズの足元がふらつく。

「おっと。魔力切れだね。大丈夫?」

ふらついたローズを支えるマーギン。必死に氷魔法を使っていたローズはサラマンダーを倒せたことに気づいていない。

「来るっ。ぬちゃぬちゃが私の所に来る!」

と、マーギンにしがみついてきた。

うむ、役得役得♪

「ヤバい。こっちに来た」

と、囁くマーギン。

「いやぁぁぁ」

意地悪を言って、さらに強く抱きついてもらうことに成功したマーギンはご満悦だ。

ゴンっ。

「何をやってるのだ」

マーギンを軽く小突いたオルターネンはローズを呆れた顔で見る。

「ちっ、ちい兄様……」

「お前と大隊長でもう倒したぞ」

「マーギンがこっちに来ると……」

自分のストーンバレットでは倒せなかったサラマンダーをローズが倒したことが少し悔しいのか、フンッと鼻を鳴らして、ローズの頭を掴んでぐりっと細切れになったサラマンダーの方へ向けた。

「あのとおりだ」

「えっ、マーギン……こっちに来ると言ったのは嘘なのか?」

まだ抱きついたままのローズはマーギンの顔を見た。

「うん。お疲れ様。無事に倒せたよ」

と、本当のことを言うと、お前と言うやつは、お前と言うやつは、とポカポカされた。

うむ、幸せである。

子供達が兵器化されていたことで、荒ぶっていたマーギンの心は、ローズのポカポカで穏やかになっていくのであった。