軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

違和感のある気配

ぐきゅ、ぐきゅるる。

《地獄耳》を使用してると聞こえてくる腹の音。人の身体は意外と音を発している。

「誰の音だ?」

「わ、私かもしれません」

オルターネンが眉をひそめてそう言うと、ロッカが恥ずかしそうな顔をして手を上げた。

「ちい兄様、余計な音を気にしないで、遠方の方に集中して」

と、マーギンに言われるが、一度気になると、その音を追ってしまうのは人の性。

「俺は気配と目で警戒をする」

と、地獄耳を解除した。

「あっ……」

「どうしたカザフ?」

「しっ!」

カザフが何かの音を捉えたようだ。そして、タジキとトルクに合図をして、気配を消しながらスッと動いていく。マーギンはその様子を見つめていた。

カザフがハンドサインで指示を出すと、タジキとトルクは二手に分かれて待機。そして……。

バッ!

3人は同じ方向に飛んだ。

「ヂーーーっ!」

「捕まえたっ! デケェっ!」

何をやってるんだお前らは?

カザフ達が捕まえたのは大きなネズミだった。そのネズミの尻尾を持って振り回し、柱にビタンとぶつけて止めをさす。

「マーギン、ここのネズミ見てくれよ。大物だ!」

そんな大きな声を出さなくても聞こえてる。

地獄耳を解除して、そのネズミを確認した。

「お前ら、よくやったと言ってやりたいが、今することか?」

と、マーギンは小言を言う。しかし、大隊長はそのネズミを「うむ」と頷いて見つめた。

「なぁ、大隊長。すげぇよな」

「丸々と太ったネズミだな」

「最近食ってなかったけど、これなら旨いんじゃね?」

「こいつら、何を食ったらこんなに丸々と太るんだろうな?」

「さぁ?」

「あ、そういうことか」

と、マーギンも何かに気づいた。

「なんかあんのかよ?」

「この屋敷に何か食べ物があるってことだ。部屋をくまなく探したけど、食べられるような物は残ってなかった。しかし、どこかに食料があるんじゃないかな」

「人の死体でも食ってたんじゃないのか?」

と、オルターネンが言うと、ネズミを食べようと思っていたカザフ達は嫌な顔をした。

「オルターネン、死体を食ってるとしても、どこかにその死体があるということだ。屋敷の中に死体があったか?」

「いえ、見かけておりません」

「そうだ。食べ物も死体もなかった。ということはどこかに地下室でもあるのだろう」

こうして、地下室がないか探すことになった。

「マーギン、可能性が高いのは領主の私室だ」

と、大隊長に言われ、私室を調べていく。

よくあるのは本棚が扉になっているとかだが、普通には動きそうにもない。絨毯をめくっても何もない。

そして、再び地獄耳で音を拾ってみる。

ヒュー。

どこかから、風の通る音が聞こえる。

「ここか」

と、音がどこから聞こえてくるか探っていくと、トイレに行き着いた。かなりゆったりした作りのトイレ。壁に掛かっている絵をずらすとスイッチがあった。

「わー、こんなところにボタンがあったのね」

マーギンの後ろからひょいと覗き込むカタリーナ。

「押すなよ?」

「どうして?」

「罠だったらどうすんだよ?」

「そんなの押してみないと分かんないじゃない」

「下に落ちたらどうすんだよ」

「プロテクションステップに乗ってから押せばいいじゃない」

ボタンを押してみたくて仕方がないカタリーナ。しかし、プロテクションステップに乗ってれば落ちることもないか。

「危ないから、外に出とけ」

「えー、私が押したい」

ったく、こいつは……。

みんなも集まってきて、外から様子を見ている。

「プロテクションステップを出すから、みんな乗って」

念の為、全員をプロテクションステップに乗せてから、カタリーナにボタンを押させた。

「ポチッとな!」

カチ。

ガシャンっ!

いきなりトイレの前の床が開き、落とし穴のようになった。

「わー、やっぱり罠だったね。あの遺跡みたい」

カタリーナがガインの遺体が眠っていた遺跡のことのように言う。

穴の下を暗視魔法で見るバネッサ。

「マーギン、殺す気満々の仕掛けだぞこれ。下に槍みたいなのがいっぱい刺さってやがる」

どうやら、刺客が来たらトイレに逃げ込み、その刺客を落とし穴にはめる仕掛けのようだ。

「誰か落ちたような形跡はあるか?」

「ねぇよ」

もう一度ボタンを押しても床が元に戻らない。刺客を落としたあと、自分はどうやって逃げるつもりだったのだろうか?

「マーギン、その壁を押してみてくれ」

と、大隊長が言うので、マーギンはボタンのある壁を押してみた。

「動きませんよ」

「ボタンを押したまま、壁を押せ」

言われた通りにすると壁が動き、奥まで押し込むと横に窪んだ取っ手のような場所が現れた。

「ここか」

と、扉をスライドさせると、下に降りる階段があった。

「ありましたね」

「どこも似たような仕掛けだな」

「大隊長はこういうのを知ってたんですか?」

「古いタイプの逃げ道だ」

「知ってたなら、初めから言ってくださいよ」

「すまん、この規模の領主邸ごときにあるとは思ってなかったのだ」

大隊長によると、城にはこのような仕掛けがあるらしい。

階段を慎重に降りていくと、地下室があり、そこからまだ先に続いていた。先に進む前に地獄耳で音を確認する。

「空気の通る音がしてますね。どこかに続いているみたいです」

「罠に気を付けて進もう」

敵がいるとしても、すでに気づいているだろうから、プロテクションを前面に出して、明かり魔法で照らしながら進む。

道は少し下っているようで、先に進むと水が溜まっている。その水が溜まった場所を過ぎると、今度は登りになった。

「この先が広場になってるようですね」

全員が警戒しながら、その広場に入ったところでマーギンが足を止めた。

「どうした?」

「人がいる」

「なんだと?」

あのとき感じた人のような気配。しかし、人でもないようにも感じたマーギンは、ハンドサインでみんなを待機させ、1人で先に進んだ。

逃げようともしない、殺意も感じない、怯えもしない。こっちに気づいてないわけでもなさそうだ。なんだこの違和感は?

慎重にその気配に近づくマーギン。あの岩陰にいる。

「おい、出てこい」

と、声をかけた。

少し間をおいて、フードを被った小柄な人影が出てきた。

「お前はここで何をしている?」

と、聞くと両手を上げて攻撃する意思はないといった感じで立ち止まった。そして、両手を上げた人影は顔を上げた。

違和感のある気配は10歳前後の子供。こんなところに隠れて住んでいたのか?

「お前、こんなところに隠れて生きてきたのか?」

と、マーギンが子供に近付いた。

ズガガガガがっ。

「しまっ……」

マーギンはプロテクションを張る間もなく、至近距離からストーンバレットを食らったのであった。