軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

音を増幅する魔法

2日目の就寝は襲撃に備えて、集音器も使いながら、マーギン、大隊長、オルターネンがリーダーになり、3交代で警戒態勢を取った。

一番手はマーギン、バネッサ、アイリス。

「また睡眠魔法を使ってきやがるかな?」

「どうだろうな。自然と眠くなる魔法だから、かけられると意識していればある程度はレジストできる」

マーギンは睡眠魔法を意識していればレジスト可能。バネッサとアイリスは早めに目覚めた。アイリスは闇魔法適性を持ってるからデバフ系の耐性が他のみんなよりある。じゃあバネッサが早く目覚めた理由はなんだ?

「大隊長と隊長はすぐに起きたんだよな? 睡眠魔法に耐性があるのかよ?」

「かもしれん。それか……」

「それか?」

「お前も、比較的早くに目が覚めただろ?」

「まぁな」

「アイリスは魔法適性が関係している。これがハンナリーなら、ほとんど効かなかっただろうな」

「闇魔法ってやつか?」

「そう。で、お前はオスクリタの影響じゃないかと思う。大隊長もちい兄様もそうだ」

「そういや、カタリーナもうちと同じぐらいのタイミングに起きたんだっけ」

「そう。共通点はそれしかない。あとは意識の差かもな」

「意識?」

「俺がプロテクションを張ってると安心しきって寝てたか、そうでないかの差だ。大隊長もちい兄様も、自分がみんなを守るという意識が高い。お前は俺がいたから油断してたろ?」

バネッサは小さく丸まらずに、普通に寝てたからな。

「しょーがねーだろ。森の中とかじゃねーし」

「そうだな。だから昨日襲撃されたことで意識が変わった。恐らく今日は睡眠魔法じゃないものを試してくるか、襲撃してこないかどちらかだ」

「来るとしたら、パラライズか?」

「そうかもしれん。だが、パラライズは結構レア魔法でな。適性を持っていても使えるやつはめったにいない」

「なら、何でくる可能性があるんだ?」

「ストーンバレットは昨日防いだから、火魔法か水魔法かもな。闇属性のスロウできたら、みんな身体強化魔法でレジストできるから問題ない」

敵に魔法の知識があれば、火魔法も水魔法も攻撃的には使ってこない。防がれるのが分かってるからだ。じゃあ何で攻撃してくるつもりだ?

マーギンは頭の中でシミュレーションをする。

「最悪はスタン系だな」

「あんなの他にできるやつがいるのかよ?」

「それも分からん。だから、警戒し続けるしかない。交代したらちゃんと寝ろよ」

そして、その晩は警戒しているのが相手にも伝わったのか、襲撃はなかった。

翌日は領主邸の中と外で分かれて捜索する。

「ここで生活をしているなら、何か形跡が残っていても良さそうなのだがな」

大隊長は使われた形跡のない家を見てそう呟く。

「ねー、大隊長。やっぱり領主邸に住んでるんじゃない?」

「領主邸はマーギンが探してますから、我々はこのまましらみつぶしに探しましょう」

「ロッカ、その石の下には何もなかったか」

「ないですね。トルク、そっちはどうだ?」

「こっちも何もないよー」

オルターネンとロッカ、トルクの組み合わせは領主邸の外を捜索。隠し通路の入口がないか探している。

オルターネンが襲撃に備え、ロッカとトルクが岩などを動かして探していた。

「マーギン、探さねーのかよ?」

バネッサが周囲を警戒しながら、ブツブツと言ったまま捜索しようとしないマーギンに文句を言う。

「普通に探しても見つからんだろうからな。やっぱり、音に頼る方がいいと思うんだよ」

マーギンは集音の魔道具をどうにかして魔法化できないかを考えていた。

「マーギンさん、ご飯できましたよ」

いつの間にか昼飯の時間になっていたようで、アイリスが昼飯を持ってきてくれた。

「おっ、ありがとう」

ハンバーグ丼……いや、ロコモコ丼か。

「目玉焼きも半熟にしたんだな。旨いぞ」

「目玉焼きはバネッサさんが焼いてくれました」

ハンバーグはマーギンが作ってあったタネを焼いたものなので、カタリーナ飯と違ってまともな飯だ。2人で分担して作ってくれたらしい。

「分担作業か……」

バネッサとアイリスが作ってくれたロコモコ丼を食べながら、ふとヒントを思いつく。

「ひとつの魔法にしなければいけるか」

「なんかいい方法を思いついたのかよ?」

ロコモコ丼をむぐむぐしながら、バネッサが近寄ってきた。

「ほっぺに米粒が付いてるぞ。がっついて食うな。子供かお前は」

と、ひょいと取って、そのまま食べるマーギン。そして、仮の魔法陣を描いていく。

「魔法陣って難しいんだな」

「そうだな。理屈を理解してれば、難しくてもこうして描ける。丸暗記でしか描けないと間違うこともある」

「お前、頭いいんだな」

「俺は天才だからな」

「自分で言うなってんだ」

と、バネッサは言ったが、マーギンってやっぱり凄いんだなと感心していた。

マーギンが工夫した魔法陣は、複数の魔法陣に分けて魔法化すること。通常聞こえない周波数の音を聞こえる周波数への変換。音の増幅。鼓膜が破けるほどの音量になる前に増幅するのをカット。この組み合わせだ。

自分で作った魔法陣を魔力で自分に描いて付与する。

「できたのかよ?」

「多分な。今から試してみるから、離れたところから小声で何か話してみてくれるか?」

「了解」

マーギンとバネッサは広間の壁と壁のところまで離れる。

「いいぞー!」

と、マーギンが大声で叫んで、実験開始。

バネッサは何か言っているようだが、ノーマル状態だと何も聞こえない。

《 地獄耳(デビルイヤー) !》

マーギンは音を増幅する魔法を唱えた。

「いつもありがとう」

お前、聞こえないと思って何を言ってやがんだ……照れるだろうが。

マーギンは手で大きな丸を作って、バネッサに聞こえたことを伝えた。

「ほ、本当に聞こえたのかよ?」

と、照れた様子で聞くバネッサ。

「あぁ、ちゃんと聞こえたぞ」

と、答えると赤くなっていた。

「マーギンさん、大好きですっ!」

キーンキーンキーン。

いきなり近くで大きな声で叫んだアイリス。

「鼓膜が破けるだろうがっ!」

「でも大丈夫だったてことは、問題ないってことですよね?」

それはまぁ、そうだが……。

と、思ったが、ゲンコツを食らわせておいた。

実験は成功のようなので、2人にも静かにさせて、魔法で音を増幅させて意識を集中すると、今まで意識してなかったからなのか、単に聞こえていなかったかは分からないが、風が部屋を通る音、どこかで水がぽちょっと落ちる音などが聞こえてくる。それに、バネッサとアイリスの息使い。

「お前ら、ちょっと離れてろ」

「なんでだよ?」

「息する音が聞こえてきて、耳がくすぐったいんだよ」

そう言うと、アイリスが面白がって耳にふーふーしてきやがる。

「やめろってんだよ」

と、傍から見たら、キャッキャウフフしているように見えるマーギンとアイリス。ついでにバネッサにもふーふーするので、ギャーハッハと大声で笑っていた。

「お前らは何を遊んでるんだ。みんな必死に捜索をしているというのに」

と、オルターネン達が戻ってきた。

「あ、お帰りー。遊んでたわけじゃないよ。庭とかはどうだった?」

「何も形跡なしだ。草も踏まれた様子はない。魔狼もこの屋敷の庭には入ってなかったみたいだな」

そこに大隊長達も戻ってきた。

「どうでした? 庭は何もありませんでした」

「人が住んでいた形跡は何もない。全部の家を見て回れたわけではないから、確定ではないがな。ただ……」

「人が食われた形跡はあったぜ」

と、カザフがジャラっと貴金属を出してきた。

「どうしたんだそれ?」

「多分、盗みを働いてたやつが食われたんだと思う。血の跡もあったし」

「魔狼がここに溜まっていたのは、こういう盗人が残ってたからだろう」

と、大隊長が補足した。

「で、マーギンの方はどうだ?」

「今日は実験に時間を使いました。音を増幅する魔法が使えるようになりましたので、それで探ります」

「そうか。上手くいったのだな。では俺にも使えるようにしてくれ。というか、ここにいる全員に使えるようにできるか?」

音を増幅する魔法は無属性のものだから、全員が使える。

「了解です」

と、マーギンは全員に《 地獄耳(デビルイヤー) !》 を付与したのであった。