軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仲間

ようやく一箇所目の休憩所の準備が終わり、2箇所目に到着すると、大工達に混じってロッカとタジキが工事をしていた。

「おまえ、工事現場にめっちゃ馴染んでるな」

と、嬉々としてショベルカーで作業をするロッカに、マーギンが声を掛けた。

「はっはっは、そうか? 見てくれマーギン。こんなこともできるようになったのだ」

生き生きとした顔でショベルカーからそう答えるロッカ。

「早掘りでもできるようになったのか?」

「ふふん、見ててくれ」

と、ロッカはショベルカーで水平掘りとでも言うのだろうか? 地面が平らになるように掘っていく。

「見事だな。不器用の塊みたいなお前が、よくそんなことまでできるようになったもんだ」

「誰が不器用の塊だ。大工達から、こう掘ってくれると建物の基礎を作るのに便利だと言われて練習したのだ」

ロッカはかなり練習したようで、平らに掘ったところを、ショベルカーでトントンして固めていく。ハンターよりこの仕事の方が向いてるようだ。

夜は大工達を交えての宴会をすることになったので、準備をしていると、カザフ達の叫ぶ声が聞こえてくる。

「うわーっ、目が回る」

「しっかり掴まっておけよ」

お前ら、なんて危ない遊びをするのだ?

ロッカがショベルカーの掬うところにカザフ達を乗せて、ぐるぐる回転させて遊んでやがる。あんなのが楽しいなら、遊具として何か作ってやった方がいいかもしれんと、マーギンは気付く。

「将来的に宿場街にアトラクションを作ってもいいかもな」

「アトラクションってなぁに?」

宴会の準備を手伝ってくれている、カタリーナが聞き慣れぬ言葉に反応する。

「ロッカがショベルカーでカザフ達を遊ばせてるだろ? あれは危ないから、安全に遊べる魔道具ってのかな? 乗り物みたいな物だよ」

「ふーん。面白いのかな?」

「子供のうちは楽しいんじゃないか?」

「試しにやってみてよ。魔法でもできるんでしょ?」

「まぁ、単純なやつならな」

と、いうことで、準備の休憩がてらやってみることに。カタリーナはちゃんとローズも巻き込み、2人で試すことに。

土魔法でボウル状の土台を作り、そこに2人を立たせた。

《プロテクションボール!》

ボウル状の土台と同じ大きさのプロテクションボールで2人を包み、中で座らせた。

「じゃ、やるからな」

《スリップ!》

少し浮き上がるプロテクションボールをマーギンは横に回転させていく。

「きゃーーっ!」

遠心力でプロテクションボールの中で張り付けになる2人。

「ほーれ、ほれほれ」

回転スピードが上がるに連れて、2人は足が宙に浮いても落ちこないぐらいに張り付けられている。まるで脱水機の中にいるようだ。

「止めて止めて止めてーーっ!」

カタリーナが中から叫ぶので、回転を止めるために、マーギンがプロテクションボールを押さえようとする。

「熱っちぃぃっ!」

摩擦熱で手の皮がめくれそうになったマーギンは棒で回転を止めようと試みた。

「うわぁぁっ!」

「あっ……ヤバい!」

横回転だけだったプロテクションボールが、だんだん斜めや縦に回り始める。

《解除っ!》

慌ててプロテクションボールを解除したら、ローズがこっちに飛んできたので受け止めた。カタリーナは違うところに飛んだのでベチャした。受け身を取れ、受け身を。

「ご、ごめん。大丈夫?」

ローズは真っ青な顔をして、ぐったりしている。どこか打ったのかもしれないと、マーギンは「大丈夫?」と揺さぶって確認した。

「うっ……」

「う?」

「うぇぇぇぇ」

乗り物酔いをするローズは盛大に酔っていたのであった。

「もう、酷いじゃないっ!」

ローズだけを受けとめ、自分はベチャしたカタリーナはお怒りだ。

「あれぐらい受け身を取れよ。散々特訓してやっただろうが」

「ローズは受け止めたじゃない」

「それは仕方がない」

ローズは自分のところに飛んで来たから受け止めたと言い切る。

「マーギン、その……なんと言うか、申し訳ない」

ギャンギャンと怒るカタリーナの横で、マーギンにうぇぇぇぇしてしまったローズは恥ずかしいのと、申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

「気にしないで、俺が悪いんだから。ローズが乗り物酔いするの忘れてたよ。もう気持ち悪くない?」

「姫様に治癒してもらったから、もうなんともない。その……もう汚れは……」

「洗浄魔法で綺麗にしたから大丈夫。本当に気にしないで」

大工達の宴会飯はタジキに任せて、ローズには胃腸に優しいものを作るマーギン。

鯛飯を作って、アラで取った出汁で雑炊にする。

「はい、ローズのご飯。普通に食べられそうなら、タジキ飯を食べてきて」

「せっかく作ってくれたから、これからいただこう」

マーギンは、自分の分は雑炊にせずに、そのままの鯛飯とアラ汁を食べる。

「あっさりしているのに、コクがある。それでいて身体に優しい味がする。うむ、旨い」

食レポが思ったより上手なローズは結構な量の鯛飯雑炊を食べた。食べ過ぎて吐かないよね? と心配になる。

「自分達だけ魚食ってんのか? うちにもくれよ」

うまうまと食べていると、バネッサとアイリスがこっちに来た。

「お前ら、肉食ってただろ? それにこれは塩味だぞ」

「甘辛で作ってくれりゃいいじゃねーかよ」

今から煮付けを作るのかよ? なんて面倒臭いことを……

「私は魚のハンバーグでもいいですよ」

「なら、アイリスにはアラ汁につみれを入れてやる。バネッサの煮付けは少し時間がかかるぞ」

「へへっ、いいぜ」

はぁ、とマーギンはため息をひとつつき、鯛の煮付けとつみれを作る。

「こってりか、あっさりかどっちがいい?」

「うちの好きそうな方で」

なら、こってりだな。と、10匹まとめて煮ていくマーギン。

「そんなに食えねぇぞ」

「ちまちま作るより、まとめて作った方が旨いんだよ」

鯛をコトコト煮ている間に、つみれ汁を作ってアイリスに渡す。

「美味しいですけど、思ってたのと違います」

「これはこういうもんだ。たまにはこういう味付けのものを食え」

ハンバーグのイメージで、つみれ汁を食うなよ。

バネッサに煮汁だけを煮詰めて、さらにこってりにしてかけてやる。

「おっ、旨い」

「鯛だと、あっさりめの煮付けの方が旨いと俺は思うけどな」

と、言いつつ、こってり鯛の煮付けと日本酒を熱燗にして飲むマーギン。

「おっ、旨そうだな。俺も同じものをもらおうか」

と、大隊長がやってきた。あんた、肉を山盛り食ってきたよね? とは言わずに、煮付けと熱燗を渡す。

「ほう、しみじみと旨いな。冷えてきた夜に染みる味だ」

「マーギン、俺達の分もあるか?」

とオルターネンとロッカも来た。もう好きに食べてくれたまへ。

そして、大工達も何を食ってるのか? と集まってきたので、分けて食べてもらった。ストックする分残らなかったじゃんかよ。

さて、お楽しみのほほ肉をいただきましょうかね。

「マーギン、あーん」

隣で口をあけるカタリーナ。ベチャさせたあげくに、冷たいことを言ったマーギンはちょっと悪かったなと思い、仕方がなく、ほほ肉を口に入れてやる。

「美味しい」

「ここは希少部位なんだからな」

「どうして?」

「これはほほ肉と言って一匹から2つしか取れない肉だ」

「へぇ、じゃあもうひとつあるよね?」

「やらんぞ」

「えーっ」

と言ってる間に食ってやった。落ち着いて食わせてくれ。と、思ってるのに、また口を開けやがる。

面倒臭いなと思いながら、骨から身をほぐして取り分けてやる。

「ほら、骨から外してやったから自分で食え」

と、皿を渡すとバクバク食べたのであった。

「マーギン、遺跡には何があるの?」

食べ終わったあとに、カタリーナが遺跡のことに付いて聞いてきた。

「何があるか分からんよ。本当に遺跡があるかどうか分からんしな」

「でも気になるんでしょ?」

「まぁな」

「本当の石像があるかもしれないから?」

カタリーナにミスティ像があるからかと聞かれる。

「そうだな。手掛かりは何もないから、可能性があるなら探したいとは思ってる」

「じゃ、やっぱり一緒に行く」

「石像があったら、呼びに行くからダメだ」

「ほんの少しの差で間に合わなかったらどうするのよ? やっぱり一緒に連れて行けば良かったと後悔すると思うよ」

カタリーナの言うことは一理ある。それなら、冬を待たずに今からでもしらみつぶしに探す方がいいとも思う。

「考えとく」

「考える必要なんてないじゃない。あのときのマーギンは……」

マーギンが、酷く悲しんだのを目の前で見ていたカタリーナは詰め寄る。

「今回、バネッサと大隊長とちい兄様、そして俺の4人でもヤバかったんだよ。お前らをあんまり危険なところに連れていきたくないんだ。ラプトゥルも今までにないパターンで攻撃してきた。何が起こるか分からないからダメだ」

「でも……」

「ま、木々の葉っぱがマシになってから考える」

と、悲しそうな顔をするカタリーナに答えを先延ばしにした。

カタリーナが大人しくなったところで、カザフ達がこっちに来た。

「話は聞かせてもらった。俺達も遺跡を探してやるぜ」

お前はどこぞのヒーローか?

「危ないだろうが」

「俺たちゃ毎日が危ないんだ。今さらってやつだぜマーギン」

「この遺跡探しはお前らの任務に関係のない話だ。お前らは特務隊の仕事をやれ」

「そんなこと言うなよな」

と、カザフが口を尖らせる。

「あのねー、僕達はマーギンに恩返しがしたいの。今までご飯食べさせてくれて、特訓してくれて、こうしてちゃんと生きてこられた恩返しをしたいんだ」

「トルク、お前らに恩なんか返していらん。お前らがちゃんと生きてくれてるだけで十分だ」

「ううん。ちゃんと恩返しできないと僕達の心が苦しいんだ」

「そうだぜ。それに遺跡探しの間にさっき食ってた煮魚の作り方を教えてくれよ」

「マーギン、アイリスも連れていけ。うちらもカザフ達と気持ちは同じだ。お前の力になりてぇと思ってんだよ」

私もと言い出せなかったアイリスの代わりにバネッサが連れていけと言う。

「あのなぁ……」

「関係ないとか言うなよ。 お前がみんなを仲間と思ってないならいいけどよ」

「そんなふうに思ってないけどさ」

「仲間ってのは力を合わせるもんだろ? 確かに足を引っ張るかもしれねぇ。けど、何かを探すときには人が多い方がいい。うちらが気付けなかったことに気付くかもしれねぇじゃねぇか」

と言われたマーギンはやれやれと、呆れるふりをしながら、顔は笑っていたのであった。