軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

使う人しだい

マーギン達は隠密執事に別れを告げて、ノウブシルクに戻った。

「マーギン、俺をシュベタインに戻してくれないか」

大隊長はゴルドバーンのことを王に報告するために戻るようだ。

「いいですよ。どこに送ればいいですか?」

「宿舎でいい。カザフらも連れて行く」

「カザフ達を?」

自分達を連れて行くと言われて、えっ?という顔をするカザフ達。

「マーギンはしばらくノウブシルクにいるのだろ? 次に来るときは大陸中央を通ってウエサンプトン経由で戻る。カザフ達の修行を兼ねてな」

「危ないですよ? 本当に砂漠ですから」

「だからこそだ。この中で砂漠を経験したものはマーギンだけだろ? 他の者も経験しておくべきだと思う」

「別に経験する必要ないじゃないですか」

「色々な魔物に慣れておく必要がある。砂漠の魔物がシュベタインに出ないとは限らんからな」

大隊長だけならともかく、カザフ達の面倒を見ながら砂漠を抜けるのは危険すぎる。と、言いかけたとき、

「街道があるのは知ってるな?」

「聞いたことはあります」

「その街道が使えるか確認しておきたいというのもある。砂漠の中を通るわけではない」

「まさか、シュベタインから陸路でゴルドバーンへの物資を運ぶことを想定しているのですか?」

「ハンターの護衛付き程度で通れるようならな。ゴルドバーンに金銀の財宝が残っていても物がなければ意味を成さないとは思わんか? ノウブシルクは北の地を放棄し、南側での建築ラッシュが始まっている。ウエサンプトンもノウブシルクとゴルドバーン両方に物資を提供するのは無理だろう。その点、シュベタインには余裕がある」

「もし、運べても凄く割高になりそうですね」

「ないよりマシだ。王にも支援を依頼しておく」

「受ける商会ありますかね?」

「シスコはまぁ、大変だと思うがな」

マーギンは思わずほっぺたを押さえた。

「俺は関係ないですからね」

「ゴルドバーンを破壊したのは誰だ?」

「いや、それはそうなんですけど……」

痛いところを突かれるマーギン。

「冗談だ。お前の尻拭いではなく、少しでも執事の助けになればいいと思っただけだ。ハンナリー商会は魔導コンテナを持っているだろ? 大掛かりなキャラバンを組まずに済む」

大隊長も隠密執事のことを認めているようで、何かしてやれることはないかと考えたようだ。

「分かりました。街道が使えるようなら、魔導コンテナを増やしますよ」

「そうしてくれると助かる」

こうして、大隊長とカザフ達を宿舎に送ったのだった。

マーギンはノウブシルク王都の防衛機能の強化、オルターネンとロッカは軍と一緒に近隣の魔物討伐。カタリーナとローズはその治癒担当をしてくれるようだ。バネッサとアイリスはマーギンの手伝いをする。

「こんな堀を作るの無理だろ?」

マンモーが集団で来たとき用の堀を張り巡らせるのだが、バネッサの言うとおり、人力でやるには何年も掛かりそうだ。マーギンの魔法でやるにも限界がある。

「重機を作った方が早いかもな」

「重機ってなんだ?」

マーギンは乗り物関係を作る気はなかった。乗り物は戦争の道具になり得るからだ。これは勇者パーティ時代でもミスティにやめろと言われた物の一つでもある。しかし、現状では戦争より先に魔物に滅ぼされるかもしれない。この時代は人が強くなるスピードより、魔物が強くなるスピードの方が早いのだ。

「キツネ目、兵器の開発していたやつらを集めてくれ。それと鍛冶師も」

ノウブシルクの開発者達は優秀だ。魔導回路だけでなく、機械関係の開発設計にも優れていた。

「なるほど。このような物があれば土を掘るのも、運ぶのも格段に早くなりますね」

「人を殺す物より、こうして人の役に立つ物を作る方がいいだろ?」

と、マーギンが言うと、開発者達は手を止めて、マーギンの顔を見た。

「陛下、お言葉ですが、全ての物は使う人しだいなのです。我々が作った物は確かに戦争に利用されました。しかし、それは料理に使う包丁でも同じことが言えます。人を刺せば死にますからね。ご理解いただきたいのは、我々は人を殺す目的で開発をしているわけではありません」

「そうか。悪かったな」

「この重機も戦争に利用しようと思えば利用できます。それでもお作りになりますか?」

「確かに戦争に利用できるものだ。それにこれがヒントになり、次々と戦争に使える物が開発されていくだろう」

「陛下は戦争を止めるためにノウブシルクの王となられたのですよね? ではなぜ、戦争利用が可能なものを開発しろとおっしゃるのですか?」

「なぜそれを聞く?」

「我々は同じ過ちを繰り返したくはないからです」

開発者達は魔物討伐のための武器を開発しろと言われて、古代の物を調べて兵器を開発した。それが人殺しの道具を作ったやつらだと言われたのだ。

「もうどこの国も戦争をしている暇がないからだ。このままだと、次に戦争が起こる前に魔物に滅ぼされる。これを作っても戦争にはならんよ」

「どこの国も?」

「そう。ゴルドバーンは壊滅状態。ウエサンプトンは強力な魔道具を開発する能力がない。シュベタインは離れている。だから、これを作っても問題ないんだ」

と、マーギンが説明をした。

「分かりました。全力で開発させてもらいます」

「そうしてくれ。あと、人殺しの道具を作ったと言って悪かったな」

「いえ、そのことは我々の戒めとして心に刻んでおきます」

こうして、急ピッチで重機の開発をすることになったのだった。

◆◆◆

「そうか、ゴルドバーンへの派遣はなしになったのだな」

大隊長はさっそく王に報告をしていた。

「はい。あの状態では行っても無駄です。その代わり、物資を運べるようになれば、補助金を出してほしいと思います」

「分かった。ゲオルクはどうなった?」

「兵士達は無傷で領に戻らせました。ゲオルクは国家反乱罪で斬りました。後任を誰にされるか早急に手配をお願いします」

「あやつも愚かなことをしたものじゃ。国家反乱罪ともなれば、一族全てが処分対象となるというのに」

「そちらもお任せいたします」

大隊長は報告が終わると、翌朝ゴルドバーンへ向けて出発した。

西へ西へとひたすら走る。

「大隊長、休憩、休憩しようぜ」

「ふむ、ここが休憩ポイントだな」

大隊長は荷馬車が走るスピードで走り、休憩ポイント、野営ポイントと記録をとっていく。

「寒っみぃぃ」

砂漠の夜は冷える。テントを張り、焚き火で暖をとっていた。

「野営ポイントに宿場町があるといいな」

「こんなところに町なんて誰が作るんだ?」

「町は将来的なことだ。それまでは見張りを立てずに寝られる建物があれば、商人達は助かるだろう」

こうして、大隊長達は出る魔物を調べたり、休憩、野営ポイントをメモにしながら進んだのであった。