軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

陛下と兵器

「マーギン、すまん。任務失敗だ」

大怪我をしているかと思った大隊長が自分の足で歩いてきた。

「怪我なしですか?」

「肩は外れたぞ。もうはめたがな」

これにはオルターネンも肩をすぼめて苦笑いだ。

「まぁ、無事なら何よりです」

「それよりみんなはどうした?」

「カタリーナの部屋に送りました。ここはもう危険ですからね。大隊長達も送りますので、同じ場所で待っててください」

「お前、何をやるつもりだ?」

「もう、ゴルドバーンの王都防衛は無理みたいなので、作戦を殲滅に切り替えます」

「吹き飛ばすつもりか?」

「フェニックスでやってもいいんですけどね。それをやるとどこまで巻き込むか分からないので、違う方法を試します。それもどれだけ被害が出るか分からないんですけどね。フェニックスよりは可能性があるかなと」

フェニックスというより、水蒸気爆発のことをイメージしているマーギン。

「それをするのに、俺達が邪魔なのだな?」

大隊長はマーギンの言いたいことを察した。

「はい。巻き添えにするかもしれませんので」

マーギンは大隊長達の方を見ずに、トラバチ達が城から離れて飛んで行かないかをずっと見続けている。

「分かった。では俺達を送れ」

「マーギン、お前はまた1人で何もかも背負うつもりかっ!」

自分の意見を飲み込んだ大隊長に対してオルターネンは反発した。

「ちい兄様、戦いは数だとはよく言ったもので、本当にその通りだよね」

「どういう意味だ?」

「トラバチはチューマンより弱いけど、圧倒的に数が多い。いくら個人が強くても圧倒的な物量には手の打ちようがなくなるということ。大隊長、隊長、トルクで挑んで、敵わなかったんだから」

「お前なら1人でなんとかできるというのか」

ギリッと唇を噛むオルターネン。

「みんなはとても強い人間。その点俺は違う」

「何が違う?」

「俺は兵器だ」

それまでずっとトラバチを見ていたマーギンがオルターネンの方を向いて、自分のことを兵器だと言った。

「お前……」

「オルターネン、もういい。マーギン、送るなら早く送れ。それと、中にチューマンがいる。どこから入ったか分からんが、チューマンとトラバチがお互いを牽制していた」

「了解です」

マーギンはそう答えて、皆をシュベタイン城に転移させたのであった。

トラバチの動きをずっと観察していたマーギンは呟く。

「トラバチはここを気に入ったようだな……」

トラバチは他に餌を探しに行くこともなく、城の周りを守るように飛んでいるだけだ。

それを確認したマーギンは窓からファイアボールが出た場所を確認しに行った。

ブワーーン。

マーギンに気付いたトラバチが威嚇して襲ってくるが、プロテクションボールに阻まれている。

窓から中に入ると、隠密執事が倒れていた。

「悪かったな、すぐに来てやれなくて」

執事の遺体を抱きあげたマーギンの魔力がゴルドバーン城を包み込むほど膨れ上がったのっだった。

◆◆◆

大隊長達がカタリーナの部屋に転移してきた。

「マーギンは?」

真っ先にそう声を掛けたカタリーナ。

「ゴルドバーンに残っている。やつにしかできんことをするそうだ」

カタリーナ、バネッサ、アイリスがどうしてマーギンだけを残してきたのかと問い詰めようとしたとき、

「大隊長、お願いがございます」

と、ローズが切り出した。

「なんだ」

「陛下に掛け合って下さい」

「何を掛け合えというのだ?」

「国を復興させる力のあるものをゴルドバーンに派遣して欲しいのです」

「マーギンに頼まれたのか?」

「はい。ゴルドバーンの中枢は滅びるからと。私はゴルドバーン城での出来事は詳細には知りません。大隊長から報告と人の手配を陛下にしてもらってくれと」

「分かった。今から行ってくる。オルターネンも来い」

「はい」

大隊長とオルターネンがすぐさま王の元へと向かった。

「あいつ……何をやるつもりなんだよ」

バネッサが呟く。

「マーギンは人類を救うために力を使うのだ」

ローズもトラバチだけでなく、犠牲者が出ることが分かっている。だからこそ、マーギンの振るう力を正当化したかった。

「そんなこたぁ、分かってんだよっ! あいつが……あいつだけがそんなの背負う必要ねぇじゃねぇかよ……」

◆◆◆

隠密執事の遺体をここでトラバチ達と一緒に焼きたくなかったマーギンは、あとでどこか見晴らしのいい、陽のあたる場所に埋めてやろうと、アイテムボックスに収納しようとした。

「ん?」

なぜか収納されない隠密執事の遺体。

まさか!?

《鑑定!》

【状態】麻痺

【魔力値】3/173

あっ、生きてる!

トラバチの毒は麻痺毒のようだ。それに魔力を使い果たしているから、死んだみたいになってたのかと理解した。それと隠密執事が濡れているのは血ではないと気付き、ガサゴソと胸ポケットを漁ると、穴のあいたボトルが出てきた。

「これ、もしかして殺虫剤が入ってたのか?」

隠密執事が毒攻撃を受け、肉団子にもならず、卵を産み付けられなかったのはこの殺虫剤のおかげのようだ。

これなら助かると思ったマーギンは、「麻痺毒を消せ」と隠密執事の手に書いて、カタリーナの元へと転移させた。

「さて、ケリを付けるか」

と、呟いたマーギンは神経を集中し、魔力を高めていくと、ゴルドバーン城の上空に閃光が音を立てて暴れ始めた。

「まだだ。もっと、もっと……」

今にも落ちそうな雷をコントロールして、力を溜めていく。

ゴロゴロ……

そしてついに限界がきた。

《 雷神ing(ライジング) !!》

カッ。

ゴルドバーン王都が閃光に包まれた。

ドーーン。

その音はまるでシュベタイン王国まで聞こえるかのような大きな音と地響きを生み出したのであった。