軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦開始

「空飛ぶチューマンにも名前をつけてくれないか。毎回空飛ぶチューマンと呼ぶのが面倒だ」

と、オルターネンが言うので、トラバチにした。

「城の中にいるトラバチを上に追い立てて、最終的に一斉に外に出して欲しい」

大隊長とオルターネン、そしてトルクにその役を任せた。大隊長が風魔法で毒を防御、オルターネンが討伐、トルクが見えない手で階層下から外に出さないようにブロックをする。

「トラバチがフロアからいなくなったら、執事、カザフ、タジキ、バネッサが隠れている人を救出。救出中に新たなトラバチが出たら見捨てて撤退すること。これが守られなかったら、二度と俺に同行させない。いいな」

「わ、分かった」

バネッサは「二度と同行させない」と言われたのは自分だと理解して、コクコクと頷いた。

「私は突入しなくていいのか?」

「ロッカはローズと共にカタリーナの護衛を頼む。俺はそっちに気が回せないからな」

マーギンは空飛ぶチューマンを倒すための魔法に集中する必要があるとロッカに伝えた。

「私は何をすればいいですか? 中を燃やしましょうか?」

燃やすなら、フェニックスでやってると言いかけるマーギン。

「俺が仕留め切れなかったやつをファイアバレットで落としてくれ。死ななくてもいい。取り敢えず落とせればいい」

アイリスを攻撃の補助に付け、夜明け前に作戦を開始した。先陣を切るのは大隊長。それにオルターネンとトルクが続いた。

「カチカチカチカチ」

侵入者に気付いたトラバチが警戒音を出し、大隊長達を威嚇する。

「俺から少し離れろ」

大隊長がオルターネンとトルクを下がらせたあと、

「ふうんっ!」

ヴィコーレに風魔法を纏わせ振り回す。

ゴウッ。

風がドリルのように吹き、トラバチ達を巻き込み壁にぶち当たる。それを追いかけるようにダッシュしたオルターネンがジェニクスで切り刻んだ。

「僕は何もすることがないねー。このまま全部やっつけられるんじゃない?」

「トルク、それなら苦労はせん。気を抜くな」

もちろん、トルクもそのことは分かっている。あちこちからブーンという羽音が聞こえているのだ。

「見えない手で押し込め」

「うん」

大隊長に指示をされたトルクは前から来るトラバチを奥へ奥へと押し込んでいった。

「あっ……この人達、まだ生きてる」

奥に進むに連れて、倒れている人が増えてきた。

「トルク、人に構うな。俺達はトラバチを上に追い込むのが役割だ」

オルターネンが役割に徹しろと、倒れている人に気を取られたトルクに注意する。

「た……助け……」

トルクに気付いた者が手を伸ばして、助けを求めてきた。

ゴッ。

オルターネンが頭を蹴飛ばし、手を伸ばしてきた者を気絶させる。

「隊長っ!」

トルクがオルターネンを睨む。

「トルク、作戦を失敗させるつもりか。マーギンに人殺しをさせたいなら、そいつを担いで外に出ろ。俺達もここから撤退する」

オルターネンに現実を突き付けられたトルクはギリッと下唇を噛んだあと、先行する大隊長の元へと走った。

「人の救出はカザフ達に任せろ。役割を遂行する方がたくさんの人を助けられる」

「うん……」

「分かったら、さっさとトラバチを追い込め。恐らくこの先は大広間だ。お前の力を見せてみろ」

城の作りはどこの国も似ている。廊下にこれだけのトラバチがいるなら、大広間にはもっといるはずだと、オルターネンはトルクに発破をかけた。

「マーギンの言ったとおりだな」

大広間に出ると、トラバチ達が巣を作り始め、すでに肉団子も運び込まれている。

「トルク、包めるか?」

「やってみる」

カチカチと威嚇してきたトラバチ。

ブワーン。

一斉に飛び、こちらに向かってきた。

ギュムッ。

トルクは大きな見えない手でトラバチ達を包み込むことで、一つの塊にする。

「解除しろ」

トルクが見えない手を解除したところを狙って、大隊長の風魔法を発動し、奥の通路へと吹き飛ばした。

「押し込めっ!」

トルクは両手でその奥へと押し込むようしてトラバチが手から漏れないように耐える。

「そのまま押し込んでいけ。これから複雑なフロアになっていくからもっと難しくなるぞ」

「分かった。頑張る」

トルクはそのあと、見えない手で開いている窓を閉めながら、トラバチを押し込むという複雑な動きをすることになるのであった。

◆◆◆

「こんなにいるのかよ」

倒れている人の多さに驚くカザフ。

「これは痺れ毒か。いや、何か違和感が……」

隠密執事が倒れている人の呼吸と心音を聞いて確認をすると、死んでいるように見えるが、すべて生きていた。

「皆さん、一度陛下の元に戻りましょう」

しかし、皆に撤退を進言する。

「なんでだよ? 取り敢えず一人ずつでも外に出していかねーと」

「いえ、このまま放置して戻ります」

「そんなことをしたら、間に合わねーかもしんねぇだろ」

「これは死んでないだけです。生きているわけではありません」

「はぁ? 意味が分かんねぇぞ、オッサン」

「バネッサ嬢、陛下は新たなトラバチが出たら、見捨てて撤退とおっしゃった言葉を覚えておられますね?」

「あぁ。当たり前だろ」

「では撤退します」

「だから、トラバチはまだ出てねぇだろうが」

「いますよ、ここに」

と、倒れている人を示した。

「こいつがトラバチだと? 何を言ってんだテメー」

と、バネッサが噛みついた。

「ここですよ」

と、隠密執事は倒れている人の腹をズバッと斬った。

「なっ、何しやがんだっ!」

「やはり、いましたね」

「えっ?」

「これです。トラバチは人間に卵を産み付けるようですね。それがもう幼虫になっています。これは恐るべき成長スピードです。早く戻って、陛下に相談せねばなりません」

と、10cmほどの幼虫をナイフで刺し、取り出して見せた。

「こ、ここに倒れているやつらの腹の中にトラバチの幼虫がいるってのか……」

「恐らく。早く戻らないと手遅れになります」

急いでマーギンの元へと戻ったバネッサ達。

「人に卵を産み付けてるだと?」

「はい。倒れているものは生きております。が、すでにトラバチに寄生されていると思っていいでしょう。城を焼き尽くす作戦への切り替えを進言いたします」

「もう幼虫になってるのか?」

「まだ10cm程度ですが、卵を産み付けたのが昨日だとすると、驚異的な成長スピードです。一斉に羽化したら、爆発的に増えるのではないでしょうか」

隠密執事の進言は正しい。常識と異なる成長スピードだとしたら、すぐに羽化して大隊長達が挟み撃ちになる。

「執事、頼めるか?」

「はい」

マーギンは大隊長達に撤退の連絡を頼んだのであった。