軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

疲れを癒す

「どうした?」

塀の外にいた兵士達が一斉に中に入ってきた。

「毒が効きにくい化け物がいる。どんどんこっちにきてるから、門を固めろ」

今までは毒ですぐに対抗できていたチューマンの中に、なかなか効かないやつが出てきていた。

「誰か、そのままウエサンプトンに誘導しろ」

今、外に出るのは自殺行為。誰が誘引剤を使って、ここからチューマンを遠ざけるのか揉めている。

「北門から出て、ウエサンプトン方面に誘引剤を撒きにいけ。馬を使えば追い付かれることはない」

上官が数名に命令して、違う門から誘引剤を撒くように指示を出した。

「何の騒ぎだ?」

領主にチューマン騒動の報告が入った。

「化け物の中に毒の効きにくい個体がいます。塀を超えることはございませんので、そのままウエサンプトンに誘導するようにいたしました」

「港街に誘導したのではないのか。なぜこっちにきた?」

「原因不明です」

領主は考える。港街に誘導するのが失敗したのか、それとも違う化け物の集団がこちらに来たのか……

「まぁ、いい。やつらは港街にいる。ここに来た化け物のことは知らぬだろう。化け物を誘導し、そのままウエサンプトンを攻めることを王に進言する」

領主は王に手紙を書いて、早馬を出すのであった。

隠密執事は誘引剤を撒いている部隊の跡を付ける。

「おっ、おい。もっとスピードを上げて進もうぜ」

「ちゃんと効果が出るように撒かないと、化け物が領都付近に留まっちまう。それより化け物が来てないかちゃんと見とけ」

暗闇から化け物が出てこないかビクビクしながら誘引剤を撒く兵士達はそのまま北進していった。

ブーン。

小鳥サイズの虫が領都周辺を飛び回る。その数は一匹ではない。

ギチギチギチギチ。

小鳥サイズの虫に導かれるようにチューマンの集団がどんどんと領都の周りに集まり始めた。

小鳥サイズの虫は領都の各門の近くにとまる。

ガリガリガリガリ。

チューマン達は門に群がり、木製の扉に食い付いてガリガリと音を立てて削っていく。

「ヤバいヤバいヤバい。あいつら扉を食い破ろうとしてやがるぞ」

「毒を撒け、ありったけの毒を撒けっ!」

兵達はここの門を突破されないように、塀の上に登り毒を散布していく。そのことにより、チューマン達の動きが鈍っていった。

「少々まずい状況になっております。念のため、避難をしてください」

想定以上のチューマンが集まり、門を突破しようとしている報告が領主に入る。

「誘引剤はどうした?」

「北門からウエサンプトン方面に向けて撒いておりますが、領都の門からなかなか離れません。侵入しようとする化け物には毒を撒いて応戦中であります」

「毒は効いているのだな?」

「今のところは。しかし、効きにくい個体が増えた場合、門を突破される可能性が出て参りました」

「ええーい、なんとかしろっ!」

「それより早く、避難を」

領主はそう促されて、家族を連れて宝物庫へ向かった。領主邸の中で一番頑丈で安全な場所なのだ。

「さ、少しの辛抱だ。夜が明けるまでこの中で待機すれば化け物はいなくなっている」

1つ目の扉を開け、魔導鍵のある取っ手を握って、中へ入ろうとした。

ガタン。

「うわっ、うわぁぁぁ……」

「きゃぁーーー………」

宝物庫の防犯装置が作動し、領主一族は開いた床の下に落ちていったのであった。

◆◆◆

港街で焼肉を食べ終えたマーギン達。

「ゆっくり寝たいから、このままここで寝ようか」

「そうだな。皆、疲れが出てきているからその方がいいだろう」

さすがの大隊長にも疲れが出ていた。チューマンの警戒に加え、カザフ達の面倒も見ていたからだ。

下に降りてテントを回収し、プロテクションステップの上に設置する。

マーギンはテントの中にトロッコを出し、湯船代わりにして風呂の準備を始めた。疲れを取るのに久しぶりに湯船に浸かりたいのだ。

いそいそとお湯を溜め、服を脱ごうとすると、

「自分だけズルいじゃない」

「うわっ。いきなり入ってくんなよ」

カタリーナがやってきた。

「なんか、ジョボジョボと音がするから、お風呂だと思った。私も入ろうっと」

「あとで代わってやるから」

「一緒に入ればいいじゃない。水着もあるし」

「一人でゆっくりと入りたいんだよ」

「ローズも入るよ?」

一瞬止まるマーギン。

「姫様っ!」

「水着あるからいいじゃない。3人なら一緒に入れるでしょ」

と、カタリーナがいっていると、またテントの入り口が開く。

「なんだよ、疲れてるだろうからと、ほっといてやったのによ」

「わぁ、お風呂入りたかったんですよね」

バネッサとアイリスもやってきた。もうこれ、収拾がつかないわ。

「外にでかいの作るから、そこに入れ」

しょうがないので、大きな湯船を作り、お湯を溜めていく。

「疲れているのに悪いなマーギン。手伝おう」

と、ローズもお湯を出すのを手伝ってくれる。

ジョボボボボ。

「男女に分けた方がいいよね。間に仕切りを作る?」

マーギンのイメージするのは火鍋みたいな湯船で、仕切りを上に伸ばせばいいかとローズに説明した。

「どうせ姫様が乱入することになるのだ。必要ないと思う」

「そう?」

もう色々と工夫するのも面倒なので、仕切りなしのままお湯を溜めた。

「おっ、風呂か。皆で一緒に入るのか?」

と、大隊長もやってきた。

「マーギン、俺達も入るぜ。水着もあるし」

「皆で入るなら水着が必要か。持ってきておらんぞ」

「大隊長はタオル巻いときゃいいですよ。暗いし、ほとんど見えませんから」

オルターネンとロッカにも声を掛けて、結局全員で風呂に入ることに。

「あれ? 水着入んねぇ」

カザフはギリ着れそうだが、トルクとタジキは前に買った水着が入らなかった。

「お前ら、デカくなってきてるからな。タオル巻いとけ」

「じゃ、一番乗りだぜ!」

ジャボン。

「あっちぃぃっ!」

飛び込んだカザフは飛び出してきた。冷えた身体に熱く感じたようだ。

げしっ。

「ふぉぉぉっ」

悶絶するカザフ。

「隠せっ! セクハラ野郎」

飛び出した拍子にタオルが取れたカザフの大事なところを蹴るバネッサ。

「おまえなぁ……」

「うちの前に丸出しで飛び出してくるからだろ?」

と、ああなるのは当然だと、水着姿で腕を組むバネッサ。相変わらず迫力満点ボディだ。

「なっ、なんだよ?」

「お前も少しは隠せ」

「みっ、水着を着てんだろうがっ!」

「カザフ達の目に毒なんだよ」

と、タオルを巻かせたら、巻かせたでよろしくない気がする。水着の方がマシだな。

「もうっ、あんなの先に見せたら、じゃーんしても意味なくなっちゃたじゃない。ローズ、対抗してきて」

パンジャのビーチ再びである。

「姫様。マーギンは疲れているのです。そっとしておいてあげてください」

「もうっ!」

《シャランランッ!》

カタリーナはマーギンの疲れが取れるようにシャランランを掛ける。

「カタリーナ、この疲れは大量に魔力を使った疲れだ。シャランランでは回復しないぞ」

「そうなの?」

しかし、カタリーナの癒しの魔力が湯に溶け込み、皆の体力が回復することになる。

「うむ、空で風呂に入るというのはいいものだな」

皆を癒す鰯の……癒しの湯。それに大隊長は空中風呂が気に入ったようだ。

「レモンチューハイでも飲みますか?」

「おっ、もらおうか」

と、希望者に出していく。

「うちのは甘くしてくれよ」

バネッサはいつものごとく甘めの酒を要求してきた。

「お前は完全回復してないから、カザフ達と同じノンアルコールだぞ」

「えーっ。そんなことを言うなよ」

「骨折ったときに酒飲むと治りが遅くなるんだよ。治るまで我慢しろ」

「ちょっとぐらいいいじゃねーかよ」

「ダメ」

「もう治ったって。それでいいから寄越せよ」

と、マーギンが持っていたチューハイを取ろうとする。

ムニョン。

「抱きつくな。当たってる」

「そんなの気にするかよ。寄越しやがれ」

このままだと、胸を顔に押し付けられてしまうので、仕方がなく渡した。

「ローズ、今の見た?」

「ま、まぁ……」

「やって、あれやって」

「しませんっ!」

そうこうしているうちに、マーギンの隣はバネッサとアイリスが陣取る。出遅れるカタリーナとローズ。

「マーギン、楽しそうだな」

「そうですね」

オルターネンとロッカが隣に座り、いつものようにマーギン達がぎゃいぎゃいと騒ぐのを見ていた。

「少しぬるくなってきましたね」

アイリスが顔近くまでお湯に浸かって、ぬるいと言う。

「気温が低いからな」

「では温めなおしましょう」

「えっ? ちょっ、やめろ」

《バーナー!》

お湯の中でバーナーを出したアイリス。

グボボボボボボボ。

「熱っちぃぃっ!」

高火力のバーナーがカザフまで届き、湯船から飛び出した。まるで剣を刺された黒ヒゲのようだ。

「テメーっ、なにしやがんだっ!」

仕返しにバチャバチャとこっちにお湯を掛けてくるカザフ。

「ぶっ、なにしやがんだテメーっ!」

バチャバチャバチャっ。

巻き添えを食らったバネッサが反撃。

「ぶっ。こっちにも掛かるじゃない」

その巻き添えを食らったカタリーナが反撃。

段々と全員を巻き込んで、お湯の掛け合いになる。

スススっとそれから逃げたマーギン。

トンっ。

「あっ、ごめん」

「大丈夫だ」

ローズもお湯の掛け合いから逃げたようで、マーギンが移動した先にいた。その隣はオルターネン、ロッカ、大隊長が並んでいる。

ビキニ姿だというのに、恥ずかしがらないローズ。

「子供は元気だな」

「そうだね」

お湯の掛け合いで一歩リードしているバネッサ。対抗はカタリーナ。全員から狙いうちされるカザフ。

「ったく、バネッサは子供に交じって大人気がないな」

それを見たロッカが笑っている。

「いい息抜きになっているようだな」

と、大隊長も笑っていた。

「ローズ、お前はマーギンに水着姿を見られても平気なのだな」

と、オルターネンが言うと、

「さすがにこれだけ暗いと気になりません」

ローズがそう答えたときにマーギンはさっと横を向く。

「何を言っている? マーギンに暗さなど関係ないのは知っているだろ。俺も暗闇でも見えるようしてもらったのだ。今も昼間のように見えているぞ」

「えっ?」

と、ローズがマーギンの方を向くと、目を逸らしていた。

かぁぁっと、赤くなるローズ。

「見るなーーっ!」

バチャバチャバチャ。

「ぶっ、見てない見てない……ちらっとしか」

「やはり見てたではないかっ!」

と、ローズは真っ赤な顔して、胸を腕で隠す。

うむ、このような顔を見れて幸せである。

と、ニヤけた顔でガン見すると、ローズはべーっとしたのだった。

そして、オルターネンが昼間のように見えてると知ったロッカはムッキリ上腕を掴んで隠していたのだった。