軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わらない

研究所から港街に戻ってきたマーギン達は大隊長と隠密執事を交えて結果報告をしていた。

「そんなことになっていたのか」

と、驚く大隊長。

「魔法陣を壊したわけではないので、これからも新たなチューマンが呼び出されると思います。一応対策はしてきましたが、それもいつまでもつかも分かりません。すでに呼び出されたやつが巣を作っているでしょうし」

「そうだな。バネッサの話によると、チューマンも前より硬くなってたみたいだから、これからも進化というか、自分達を脅かすものに適応していくのかもしれんな」

マーギンは大隊長の進化というより、適応していくという言葉に嫌な予感を覚える。

ゴルドバーンはチューマンを倒すのに毒、つまり殺虫剤を使っている。それに耐性ができていたら……

マーギンは隠密執事に騎士団長を呼んでこさせた。

「陛下、お呼びですか」

「団長、頼みがある」

「なんなりと」

「この港街の住人をノウブシルクの新領地に移住させたいと思う。住民を説得できるか?」

「全員をですか? ゴルドバーンとまた戦争を?」

「ゴルドバーンはこの港街を見捨てた。本来、国にとって港街はかなり重要な土地だというのにだ。これがどういう意味か分かるか?」

「い、いえ……」

「ここを再建するより、ウエサンプトンの港街を乗っ取る方が安上がりだということだ」

「え?」

「ゴルドバーンはウエサンプトンとノウブシルクに侵攻するつもりだということだ」

マーギンは仮説を話した。ゴルドバーンがチューマンをウエサンプトンに誘導する。国が混乱して弱ったところを軍が攻める。そのままノウブシルクにも同じことをして、大陸西側を掌握する。

「あの化け物がいるなら、ゴルドバーンの兵が攻めても殺られるのでは?」

「チューマンは餌を確保したら、その場に留まらずに巣に持ち帰るんだよ。それに巣はゴルドバーンの南の土地にある。冬になると巣ごもりをして仲間を増やす。冬に軍が攻めれば可能だ」

「なるほど……」

「ゴルドバーンはここを守る気はない。あれだけの騒ぎを起こしても、誰も様子を見に来てないだろ?」

「そう言われてみればそうですね」

「情報収集はしているはずだから、俺たちがここにいることもバレているだろう」

と、マーギンが騎士団長に説明すると、考えごとをしていたオルターネンが顔を上げる。

「そうか、チューマンをここに誘導して、俺達ごと始末する気か」

「俺はその可能性が高いと思う。ただ、俺達はチューマンを倒す力がある。しかし……」

「幻惑粉だな」

と、大隊長もゴルドバーンがやろうとしていることに気付く。

「街中に幻惑粉を撒かれたら、俺達にも手の打ちようがない。住民に襲われる可能性もある。住民を避難させておいた方がいいと思うんだよ」

「分かりました。住民に話をします」

「ノウブシルクには俺が魔法で送る。持っていきたいものがあればまとめさせてくれ。向こうもいきなり人が増えたらどう対応していいか分からないだろうから、お前が仕切れ。支払いは国の金を使え。キツネ目に言えば手配してくれるだろう」

「かしこまりました」

「執事」

「はい」

「お前も手伝え。お前がこっちに付いたこともバレているだろうから、戻れんだろ」

「手伝いはさせて頂きます。が、私はゴルドバーンの影。今までやってきたことを帳消しにするわけには参りません。責任を取る必要があります」

「いらん」

「何が不要なのですか?」

「お前が責任を取る必要なんてない。それでも汚れ仕事をしていた責任を取るというなら、この国とともに死ぬのではなく、生きて償え」

「生きて償え……?」

「新領地はノウブシルクで住処を失ったもの達の寄せ集めだ。そこにゴルドバーンの人がくる。混乱するのは目に見えているから、団長のサポートをしてやってくれ。他の隠密でお前に付いてくるものがいれば全員連れていけばいい」

「陛下……」

隠密執事は困惑する。影に生きるものは不要になれば消されるのが当たり前の世界。その影の者たちに生きろと?

「ゴルドバーンが魔物や他国に備えるための力を持とうとしたことは理解する。しかし、国民を餌にしたり、丸ごと見捨てるようなやり方は間違ってる。そんな国はなくなってもいい」

「ゴルドバーンに滅びろとおっしゃるのですね」

「そうだ。しかし、何も知らない住民を巻き込む必要はない。色々と片付いたあと、復興するのにお前らの力を生かせ。俺はここまで手が回らん。生かしておく必要のある貴族とか選んでおいてくれ」

「かしこまりました」

話は終わり、研究所から回収してきた資料を調べて、召喚の魔法陣に何か仕掛けがないか確認しようとすると、アイリスがテントの中にひょいと顔を突っ込んできた。

「マーギンさん、ハンバーグはどうしますか?」

どうしますかとはなんだ?

「アイリス、意味が分からんぞ」

「作りますか? それとも作ります?」

イエス、オア、イエスじゃねぇかよ。

「俺はこれからやることが……」

ぐぅぅ。と、言いかけたマーギンのお腹が鳴る。

「ほら、マーギンさんのお腹も早くしろって言ってますよ」

そういえば、ご飯を全く食べてなかったな。

「他には誰が食べるんだ?」

「他のみんなは晩御飯食べました」

「お前は食ってなかったのか?」

「食べましたよ」

こいつ……

まぁ、いいかと、自分の分も作っていると、

「マーギン、少し飲まな……アイリスもいたのか」

オルターネンが酒を持ってやってきた。

「ちい兄様もハンバーグ食べる?」

「いいのか?」

オルターネンも何も食べてなかっただろうからな。

「味付けはどうする?」

「私はデミ……」

一番に答えるアイリス。

「却下だ。時間が掛かる」

「……ケチャップソース」

「ちい兄様は?」

「塩コショウで頼む」

焼けたハンバーグをそれぞれに味付けをしていく。自分のはテリヤキだ。

「バネッサさんのですか?」

「俺のだけど?」

と、言うと一口食べて、ケチャップソースと交換しやがった。なんてやつだ。

オルターネンが薄めの水割りを作ってくれる。これならテリヤキよりケチャップソースの方が合うかもしれん。塩コショウが一番合うだろうけど。

「戦地みたいな場所で飲むとか珍しいね」

「なんかこう、イラついた気分が収まらなくてな」

オルターネンもゴルドバーンがやっていることに嫌悪感を覚えていたようだ。

「飲んでもイラつきは収まらないんじゃない?」

「そりゃそうだな」

と、飲んでいると、アイリスはテリヤキハンバーグを全部食べられずギブしていた。

「お前、全部食えよ」

「眠いです」

「お前なぁ」

と、怒る前にマーギンにもたれて寝てしまったので、マットレスを敷いて寝かせておく。

「アイリスも疲れているのだな」

「そうだね」

ハンバーグも腹が減って食いたいというわけじゃなかったようだ。こいつにとって、ハンバーグは精神安定剤みたいな役割もあるからな。

スースーと穏やかに寝るアイリスを見てオルターネンはくいと水割りを飲み干す。

「アイリスは特務隊でよくやってる。こんな少女が最前線で戦力となっているのが信じられん」

「俺もだよ」

と、マーギンも水割りを飲み干した。

「じゃ、ご馳走。お前も早く寝ろよ」

と、本当に軽く一杯だけ飲んで自分のテントに戻っていった。

マーギンはアイリスの横に寝転び、資料を確認していると、召喚の魔法陣が描かれた台座の設計図を発見した。

「やはり、魔素を吸収する装置と自爆装置がセットになってたか」

自爆装置をセットしたのは他国に情報が渡らないようにするため。研究員ごと閉じ込めたのもそのためだ。しかし、資料を残したまま封鎖したということは……

「召喚の魔法陣を描いた者か、資料は別にあるということだな」

マーギンはその人物か資料もどうにかしないとダメだと気付くのであった。