軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一歩前進

「おい、タワシイワシ」

「そんな芸人のコンビ名みたいな呼び方しないで」

なぜお前が芸人のことを知ってる?

「とりあえず風呂に入ってこい。身体冷えきってるだろ」

「う、うん……ご飯は?」

「作っておいてやるから早く行け」

キツネ目がメイドに合図して、カタリーナとローズ、ロッカを風呂に案内させた。

「隊長、何があったんです?」

と、カタリーナ達がいなくなったのを見計らってオルターネンに状況を聞いてみた。

「あー、わがまま発動ですか」

「わがままという感じでもなさそうだ。お前が戻って来ないなら、ノウブシルクに残るとまでおっしゃったからな」

「ったく、あいつは何を考えてんだ」

と、マーギンは呆れた。

「で、こっちの状況も聞かせてくれるか?」

マーギンは大隊長にした話をオルターネンにもする。

「で、今朝出るところだったんですよ」

「ギリギリ間に合ったということか」

「一緒に来るつもりですか?」

「チューマンが大量に出たらどうする? 人里離れた場所ならいいが、街中なら戦える人数がいた方がいいんじゃないか?」

まぁ、そうだけど。

「カタリーナはどうします?」

「止めても無駄だと思うぞ」

そうだろな。

「じゃ、出発は明日にしましょうか。騎士団長悪いな。仕切り直すわ」

「いえ、かまいません。あの……聖女というのは……?」

もう隠せないからそれっぽい説明をしておこう。

「あいつは治癒魔法使いなんだよ。それも凄腕のな。だから聖女と呼ばれている」

「シュベタインには凄い人達が集まっているのですね」

「まぁ、そうだな。みんな凄いよ」

と、話をしたあとにコーンスープとサンドイッチを作っておく。

「隊長は肉がいい?」

「いや、同じものをもらおうか」

バネッサと違って風呂から出てくるのが遅いカタリーナ達。

「あー、温かった。ご飯は何?」

「コーンスープとサンドイッチだ」

「マーギン、肉はないのか?」

朝っぱらから肉を所望する一番男らしいロッカ。モモ肉のステーキでも出してやろう。

食べ終わるのを待って、ゴルドバーンに行くことを説明する。

「今からか?」

「出るのは明日だ」

「マーギン、今日出発予定だったのにいいの?」

「お前ら、移動疲れがあるだろ。とりあえず今日は寝とけ。ベッドはあとで運ばせるから、俺らのベッドを使っていいぞ」

「こんなに人がいるところで寝れないわよ」

それもそうかもしれんが、他の部屋は子供達が使ってるしな。それに目の届かない場所で寝かせるのも良くないだろう。しょうがない応接室でいいか。

カタリーナ達は応接室で寝てもらい、オルターネンは寝なくていいとのことだったので、もう少し詳しく話をしておいた。

晩御飯を食べたあと、カタリーナ以外にスリープを掛けたマーギン。

「カタリーナ、起きろ」

「んん、マーギン? 夜這いしにきたの?」

人聞きの悪いことを言うな。

「お前に頼みがある」

「なに?」

「1人、治せるか試して欲しい人がいる」

「どうしてこんな夜に言うの?」

「他の人に知られたくないからだ。おい、キツネ目」

シュタッ。

「お呼びですか」

「王子のところに連れていけ。こいつに王子を治せるか試してもらう」

キツネ目は不思議な顔をしたが、治せる可能性があるのならと、マーギンとカタリーナを連れて行く。

「マーギン、暗くて何も見えない」

「俺に掴まっとけ」

「おんぶ」

こいつ……

コケかけて大きな声を出されるよりマシかと思い、カタリーナをおんぶする。

ムニ……

少しの間に育ったものだ。

変わったノックをして王子の部屋に入る。

「主、夜分に申し訳ございません」

「どうしたんだ?」

「陛下とお客様をお連れいたしました」

薄暗い部屋に明かりが点く。

「よう、ヘルメニス。身体の調子はどうだ?」

「陛下、おかげさまで痛みはありませんので、ちゃんと眠れるようになりました」

この前来たときに充満していた痛み止めの臭いも、膿んだ臭いもしていない。隠密見習いのアーシャがこまめに体位変換をしているのだろう。

「陛下、そのお嬢様は?」

「カタリーナ、あいさつしろ。ノウブシルクの第二王子のヘルメニスだ」

「初めまして殿下。私はシュベタイン王国の第三王女であり、マーギンの力添えにより聖女となりましたカタリーナと申します」

お前、ちゃんとした挨拶ができたんだな。

「姫殿下ですと……?」

カタリーナの素性を聞かされ驚くヘルメニス。

「ヘルメニス、そこは気にすんな。今日は姫として連れてきたわけじゃない。聖女カタリーナとして連れてきた。こいつならお前の身体を治せるかもしれんと思ってな」

「えっ?」

「まぁ、ダメ元だ。やれることはやっておいた方がいいだろ?」

よく意味が分かってないヘルメニス。

「カタリーナ、ヘルメニスは遅効性の毒で身体が動かなくなったらしい。治せるか試してみてくれ」

「うん」

カタリーナは聖杖エクレールを掲げる。

「私は癒しを与える聖女カタリーナ。聖杖エクレールよ、我が魔力をもって、この者の身体に残る毒を消し去り、健康な身体に戻したまえ《シャランラン》」

ふわぁっと優しい光がヘルメニスの身体を包む。

「どう?」

ヘルメニスの顔を見るカタリーナ。

「身体が温かくなったような気がします。少し身体に力が……」

ピクっ。

「主っ! 今指がっ、指が動きました」

おい、キツネ目。目が開いてるぞ目が。

ヘルメニスが指に力を入れると少しずつ動いていく。そしてゆっくりとグーパーグーパーしてみせた。

「主っ!」

「ドックス……」

「上手くいったみたいだな。でかしたカタリーナ」

「えへへへ」

マーギンはカタリーナの頭を撫でてやる。

ゴンッ。

「痛っ。杖が当たってる。しまっとけ」

「あ、あれ?」

カタリーナだけを褒めたマーギンは聖杖エクレールで頭を打った。

「キツネ目、ヘルメニスは寝たきりの期間が長かったから筋力が衰えている。すぐに元通りとはいかんが、リハビリしていけば元に戻るんじゃないか」

「リハビリとは?」

「元の身体に戻すための訓練だ。初めはものを握る。身体を起こして座る、立ち上がるとか、できることを少しずつ増やしていくんだ。いきなり全部をするんじゃなしに、やれることを少しずつ増やしていけばいい」

「主は元のように歩いたりできるのですかっ?」

「いずれな。今日明日に歩けるようになるわけじゃない。1年とか2年とか時間を掛けて、ゆっくりと元の身体に戻す必要があるんだよ」

「聖女様……」

「なぁに?」

「奇跡です。元の身体に戻れる可能性なんてないと思っておりました」

「へへん。私は聖女だからね!」

育ってきた胸を自慢気に反らすカタリーナ。

「このお礼は何をして返していけばいいのでしょうか」

ヘルメニスは涙ながらにカタリーナに何かお礼ができないかと聞く。

「別にお礼なんていらないわよ。あなたは、マーギンが助けてあげてと言った人なんだから」

「陛下の……」

「そう。私はマーギンの役に立ちたいの。だから、お礼なんて不要なの。マーギン、私が来て良かった?」

「まぁな」

そう答えるとカタリーナは嬉しそうな顔をしたのだった。

翌朝、とっても機嫌がいいカタリーナ。

「姫様、何かいいことがありました?」

「べっつにー」

ローズは少しホッとした。マーギンがいなくなってから、カタリーナの機嫌が良くなかったのだ。

身支度をして玉座の間に行くと、すでに朝食の準備ができていた。

「どれ食べたらいいの?」

「姫様、どれも同じだから好きなの取って」

と、タジキが返事をする。定番の目玉焼きとベーコンとトーストだ。

「じゃ、私はこれ。ローズは?」

「では隣のをいただきます」

「私はこれにするか」

ん?

「マーギンのは?」

皆がそれぞれ皿を選んで食べ始めたが、マーギンの前には皿もない。

「焼けたぜ」

と、バネッサが自分のとマーギンのセットをもってきた。

「マーギンと自分のをバネッサが作ったの?」

「悪ぃかよ?」

「べ、別に……」

(ローズ、負けてるっ!)

(姫様、いらぬことを言わないでください)

(だって……)

(いいからっ!)

カタリーナに圧を掛けるローズ。マーギンとバネッサの距離が縮まっていることを自分でも分かっているのだ。

「大隊長、マーギンとバネッサはどうなってるんですかね? なんか前と雰囲気が違うような……」

「まぁ、今のマーギンに一番近しいのはバネッサで間違いないな」

と、大隊長はそっけなく答えた。

「マーギンさんはお出かけ前にハンバーグを作っておきたくなる、作っておきたくなーるー」

先に食べ終わったアイリスが、まだ食べているマーギンのうしろから抱きつき、呪文を囁く。

「耳元でやめろ。俺はまだ食ってるだろうが」

「ふーっ、ふーっ」

くすぐったがったマーギンに追加で耳にフーフーするアイリス。

「やめろって言ってるだろうが」

コショコショコショコショ。

「キャーハッハッハ」

アイリスの脇腹をくすぐり返し、いちゃつく2人。

「いや、一番近しいのはアイリスかもしれん」

と、それを見た大隊長は訂正したのであった。