軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

賠償

マーギンは放棄した町や村に通達を出した。

【ノウブシルクは王都より北側の地を放棄する。移住を希望するものは軍の指示に従い王都に移住せよ。仮の住居及び当面の食糧と衣類は国より支給する】

いきなりの通達に戸惑う住民達。

「こ、これはどういうことでございますか」

移住希望者を募っていた軍人達に尋ねる住民達。

「通達通りだ。ノウブシルクは王都より北の地を放棄した。この町はノウブシルクの元貴族達が移住してきて、独立国家として運営するだろう。どちらの国がいいか選べ」

「そ、そんな突然言われても……」

「戸惑うのは理解する。しかし、もう猶予がないのだ。移住を希望するなら早い方がいいぞ。春になれば移住も認められなくなるかもしれん」

「年寄りや子供をこんな寒い時期に移動させるなんて……」

「軍の馬車で移動する。年寄りや子供がいるなら急げ」

なぜ北の地を放棄したのかは説明しない軍人達。魔物の脅威が増したからだと説明するとパニックになるからだ。

どうする? どうする? と、決めかねる住民達。

「仕事はどうなりますか?」

「それはまだ決まってはおらんが、陛下なら悪いようにはされないはずだ」

「王は今まで何も……」

「ノウブシルクの体制は変わった。新しい王が君臨され、貴族制度も廃止にされた。ノウブシルクは身分差がなくなったのだ」

軍人の言葉を理解できない住民達。身分差があるのは当然だという世界で生きてきたからだ。

「この町が国となれば貴族制度はそのままだろう。どちらがいいのか我々にも想像が付かん。が、我々は新しい王に期待している。ノウブシルクは生まれ変わるのだ」

こうした言葉を聞き、まず移住を希望したのは貧しい人々だった。

大きくて力強いノウブシルクの馬が曳く馬車が年寄りや女子供を運んでいく。

「住民を移住させるだと? 何を勝手なことをっ!」

先にこの町に移住した貴族達は激怒した。民がいなくなっては貴族としての生活ができないからだ。

「軍が移住を支援しているとなると、我々では手の打ちようがありませんぞ。なにか策を練らねばなりませんな」

そして、貴族達は住民に噂を流すことにした。王都に移住したら奴隷にされ、土地開拓の強制労働をさせられると。

住民達は移住派とここに残る派に分かれていく。富裕層は町に残り、貧民層は王都に移住する。もめたのは中間層だ。

「王都に行っても何も保証がないだろ? それに、奴隷にされるっていうじゃないか」

「この町は国になるそうだが、貴族だらけになったみたいだ。きっとろくなことにならねぇって。俺達は移住するからな。ここにいたって生活は苦しいままだ」

「だって奴隷だぜ、奴隷」

「ならお前らは残れよ」

次第に移住希望者が減り、軍の馬車も最終便となった。

「もう、移住希望者はいないな。今後、軍からの迎えはないからな」

軍人達は手分けしてこれが最終だと告知した。

こうして春までに北の地の移住作戦は終了した。小さな村は全員移住し、大きな町は半分程度の移住で完了したのであった。

「陛下、これよりあとに移住を希望してきたものはどうされますか?」

「貴族以外は受け入れてやるが、生活の保証はしない。半年間だけ住む場所を提供するから、仕事は自分で探させろ」

「かしこまりました」

貴族達が使っていた屋敷を国営住宅とし、北の地から避難してきた者達を住まわせていた。1軒に何家族も住んでいるが、元の家より寒さもしのげ、設備も整っていたことから、何も不満はでていない。

移住せずにノウブシルクに残った元貴族達に南側の土地開拓を任せることにした。自分達で開拓した土地は自分達のものになるという条件を付け、北の地から来た者達の中から希望者を募り、開拓をさせていく。貴族ではないが、領主という制度は残しておいた方がいいだろうという判断だ。

「もう春だというのに寒いな。毎年こんな感じか?」

「例年と比べて、今年は春の訪れが遅いですな」

ノウブシルクの王都はまだ雪に埋もれていた。

「騎士団長、俺に同行しろ。軍統括と宰相は王都で待機」

「どちらに行かれるのですか?」

「ウエサンプトンだ。戦後の賠償をしてくる」

「賠償?」

「そうだ。兵を引き揚げはしたが、土地を奪ったままだろ? そこに移り住んだ者達を引き揚げさせるのは無理だからな。金でかたをつける」

と、マーギンは言い残し、騎士団長と2人で王都をあとにしたのであった。

◆◆◆

「おいキツネ目」

「はい」

「お前じゃなくてもいいが、シュベタインの王か王妃に手紙を届けられるやつはいるか?」

「王家に直接となれば、少々難しいかもしれません。私ならば可能ですが、今ここを離れるのはまずいかと」

「別に直接でなくてもいい。特務隊という魔物討伐専門の部隊がある。そこの者に俺からの手紙だと言えば王に渡る」

「そうですか。ならば、私の知り合いに任せ……」

シュタッ。

キツネ目と話をしていると、隠密の頭が現れた。

「そのお役目、私が承りましょう」

それを聞いたマーギンはうーんと唸る。

「お前が行くと怪しまれるかもしれん」

「怪しまれるとは?」

「シュベタインにも隠密がいる。かなりの手練れだから、お前の存在に気付くだろう。庶民に変装していくと怪しまれる可能性が高い」

「私の変装がバレると?」

「逆に、どこかの国の隠密が紛れ込んだらお前ならどうする?」

「排除を試みます」

「だろ? 向こうも同じだ。隠密は隠密のことを知るというやつだ。シュベタインの隠密もお前と同等クラスのやつが複数いるからな」

「では使者ということではいかがですかな」

「だから、隠密だとバレるって言ってるだろ。隠密が使者を名乗って来たら警戒されるだろうが」

「使者を名乗っていても隠密とバレるとおっしゃるのですか?」

「バレる。隠密をやってるやつは隠そうとしても隠せない癖があるんだよ」

「癖?」

「まぁ、それは教えないけどな。行ってくれるなら、特務隊のところに行ってくれ。そこなら王家の隠密がお前に気付いても手出しはしてこない」

「なぜでしょうか?」

「特務隊を信用しているからだ。お前を敵だと判断すれば、特務隊が排除するだろうとな」

「それだけ強い部隊ですか?」

「あぁ。ノウブシルクの軍隊だと敵わんな。俺が手伝わなくてもマンモーも倒せるだろう」

と、マーギンは自信満々に答えたのだった。

マーギンと騎士団長は馬車でウエサンプトンに向かった。

「護衛は私だけで問題ないのですか?」

「安全という面では問題ないが、俺が王だと言ってもウエサンプトンは信用しないだろう。お前にはそのために付いて来てもらったんだ」

何日か夜営してウエサンプトンに入る。国境はあってないようなものだ。

「この辺は何もないけど、緩衝地帯なのか?」

「はい。元々はお互いを刺激しないようにと、国境付近には何もないのです」

「明確にウエサンプトンの土地と分かるのはどの辺からだ?」

「集落が見える場所あたりからです」

こんな土地が緩衝地帯とはもったいない。不可侵条約を結べば開発しても大丈夫なのではなかろうか?

こうして、現場を確認しながらウエサンプトンの集落近くまで来たところで、兵士が現れた。

「ノウブシルクの方とお見受けします。どのような用件でしょうか」

「こちらはノウブシルクの新しい王だ。控えよ」

「えっ?」

「団長、別に控えなくていい。それより、ウエサンプトン王と話をしたいから、先導してくれないか。俺達は敵意がないと分かってもらうために2人で来た」

ざわつく兵士達だったが、ノウブシルクに逆らうことはせずに、素直に数人の兵士が王都まで先導するのであった。

「なに? ノウブシルクの新しき王が来ただと」

「はい。今は城の外で待機していただいておりますが、いかが致しましょう」

「お、お招きするに決まっている。早く案内せよ」

ウエサンプトン王は慌てた。王が変わったというのは本当だったのかと……

そして、マーギンがウエサンプトン王の前に現れた。

「こ、これはようこそ……」

見るからに平民な男。新しき王と言われても信じられない。

「お前がウエサンプトンの王か。お互い忙しい身だから用件のみ話す」

マーギンは社交辞令もなしに唐突にそう言った。

「まず、今回ノウブシルクがウエサンプトンに攻め入ったことを詫びさせてもらおう。あまり人的被害は出ていないと聞いているが、一方的に攻め入ったのはこちらだ。その賠償金として100億G払う」

ざわざわざわ。

ウエサンプトン城の玉座の間には他の貴族達も集まって来ていた。

「100億Gですと?」

「少ないかもしれんが、これで手打ちにしてくれると助かる。続いて、こちらが占領した土地に付いては買い上げということにしてもらいたい。これに100億G、最後に緩衝地帯となっている土地をノウブシルクに渡してもらいたい。これに100億G。合計300億Gで手打ちをしたい」

「こ、断ればどうなりますかな?」

今までは武力で飲み込もうとしたノウブシルクが、賠償金や土地の買い上げ金を払うと言ってきたのが信じられないウエサンプトン王。なにか裏があるのではないかと、即答を避けた。

「この条件は飲んでもらう。ウエサンプトンに取って悪い条件ではないはずだからな。手打ちになれば不可侵条約を結びたいと思うがどうだ?」

しかも不可侵条約付きだと?

「しかしいきなりそう言われても、信用できませんな。そもそも、本当にノウブシルクの王かどうかも分かりませぬゆえ」

「確かに俺が王だと証明するものもないから仕方がないけどな。断るなら今までのように武力で従わせてもいいんだが、どうする?」

あまりにも軽いマーギンの話し方にウエサンプトン王は牽制を入れてみることにした。

王が合図をすると、騎士達が槍をマーギンに向けて構えた。

「ほう、敵対することを選ぶか。ウエサンプトン王はもう少し賢いかと思ってたんだがな」

マーギンはいくつもの火の玉を自分の周りに浮かべた。

「では、この国も俺が王になるとしようか」

火の玉を浮かべ威圧を放ったマーギンに、ウエサンプトン王は恐怖した。

「お待ちくだされっ、お待ちくだされ。お前ら、警戒体制をやめよっ!」

騎士達の槍を下げさせる。

「申し訳ござらん。本当に王であられるか試すようなことをして申し訳ござらんかった」

「次はないからな。では今の条件でよければ契約書を書いてくれ」

契約書を作成してもらっている間に、別室で話すことに。

「ことの成り行きを教えていただいてもよろしいですかな?」

マーギンは各地でノウブシルク軍がしてきたことを止めるために国を乗っ取った話をしたのだった。