軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

力無き正義は無力

「リボーンの騎士団はやめとけ。なんか怒られそうな気がする」

「そ、そうですか……」

と、なぜかそんな気がしたマーギン。

今後の魔物からの防衛をどうしていくのか後日決めていくことで話がまとまり、今日は解散となった。

夜、

「見てないで降りてこい」

子供達が寝静まったのを見計らって、マーギンは話し掛けた。

シュタッ。

「いつからお気付きでしたか?」

「初めからだ。お前は誰の隠密だ?」

「これはおみそれいたしました。これでも気配断ちには自信があったのですが」

「まぁ、ほぼ完璧に気配を消せてたけどな。で、お前は敵か?」

「失礼ながら、陛下を観察させていただいておりました。今は敵ではないと申し上げます」

そうキツネ目の男はしれっと答えた。

「あのメイドはお前の主とは別の隠密だな?」

「はい。前王家の隠密……いえ、隠密見習いといったところでしょうか」

「そうか。今回の指示は前王か?」

「そうです」

「分かった。で、お前は俺に何を望んでる?」

「我が主にお会いいただけませんでしょうか」

「誰が主だ?」

「それは主から直接お話いただきます。このままご案内させていただいてもよろしいでしょうか?」

「分かった」

そう答えたマーギンはキツネ目と共に気配を絶ち、玉座の間にプロテクションを掛けてから移動した。

「こちらでございます」

真っ暗な城の中をスタスタ歩き、隠し通路へと進んでいく。

「こちらから階段になっておりますので、お気を付けください」

暗視魔法(ナイトスコープ) を使っているマーギンには昼間のように見えている。キツネ目は普通に目を開いている。いつものキツネ目姿は偽装しているようだ。これは見なかったことにしてやろう。

「こちらに我が主がおられます」

キツネ目がコンココンコンと変わったノックをしてから扉を開けた。

扉を開けると薄っすらとお香のような臭いがしている。これは最近嗅いだことのある臭い。そう、木こりの村で重傷者の痛みを止めるために燻した木の根の臭いだ。

「陛下をご案内いたしました」

と、案内されたのは天蓋付きベッドの前。そこにマーギンと同じ歳ぐらいの男が横になっていた。

「ご足労ありがとうございます。本来であればこちらから伺わねばならないところを申し訳ございません」

「いや、かまわんよ。どこか悪いのか?」

「毒の後遺症で上手く身体が動かせませぬ」

「そうか。どこが痛いんだ? これ、痛み止めの木の根を燻した臭いだろ?」

「報告にあった通り博識でございますね。大したことではありませんので、お気になさらず」

近くによると膿んだ臭いもしている。タバサと同じように寝たきりで 褥瘡(じょくそう) ができているのか。

「で、お前は誰だ?」

「私は元第二王子という立場の者で、へルメニスと申します」

「王子か。で、俺になんの用だ?」

マーギンにそう聞かれたヘルメニスは少し間を置いて、切り出した。

「我が父と兄を亡き者にしていただけませんでしょうか。もちろん私も殺していただいて構いません。どうかこの国をお救いくださいませ」

「なぜ殺せと言う? 自分の肉親だろ」

「我らは王族という立場にいたものです。国を誤った道に進ませた責任を取らねばなりません」

「お前は戦争に反対して毒を盛られたのか?」

「遅効性の毒のようです。初めは身体がだるいだけでしたが、徐々に立てなくなり、今に至ります」

「厄介だな。怪我なら治してやれるが、毒はどうしようもない」

「私は父と兄がいる限り、死ねないと思っておりました。しかし、突然陛下が現れ、この国……国民を正しき道に導いてくださると理解いたしました。それならば私は生きている必要がなくなったのです。最後に直接お礼を伝えたく、ここまでお越しいただきました」

「そこまでの覚悟があるなら、なぜ王と第一王子を暗殺しなかった? お前の隠密はかなり腕が立つだろ」

「それも考えましたが、クーデターというものは、ことを起こすより、起こしたあとの方が難しいのです。結局は国が荒れ、内乱が起こるでしょう。それでは本末転倒なのです。しかし、陛下のような圧倒的な力を持った方が現れた。陛下のような方が統治してくださるのであれば、きっと国民が幸せに暮らせる国となりましょう。どうか、どうか、この国をよろしくお願い申し上げます」

目に涙をためながらそう言った元王子。

「お前、身体を治して王をやれよ。身体を治すまでに、他国との後始末を付けておいてやるから」

「残念ながら身体が元に戻ったとしても、私には王として人々を導く力がございません。人を導くには理想だけではなく、力が必要なのです」

力なき正義は無力ってやつか。

「お前の父と兄はその力があったと言うのか?」

「はい。特に兄は非常にキレ者です。戦争を扇動したのも兄です。周りはそれに気付いておりませんが、魔導兵器を開発し、他国を支配できると父や中枢の貴族達に思わせるようにしたのです。他にも何か研究をしているようです」

と、ヘルメニスはマーギンに進言したのであった。

「キツネ目、王子の身体を起こせ」

「陛下、恐れながら、主の身体は……」

「分かってる。痛み止めの魔法を掛けるから心配すんな」

マーギンは痛み止めの魔法を掛けたあと、キツネ目に身体を起こさせ、服を脱がせた。

かなり酷い状態だな。

褥瘡部分をナイフで取り除いてから治癒魔法を掛ける。これはソフィアが残してくれた本に書いてあったものだ。

「これで痛みはなくなった。しかし、寝たきりだとまた同じようになるから、誰か付き人を付けて、体位をこまめに変えてやれ。横向きになったときには抱き枕を抱かせてやるといいぞ」

と、アドバイスしながら洗浄魔法を掛けておく。身体もちゃんと拭けてなかったみたいだしな。

「へ、陛下。これは……」

「もう痛くないだろ? 今日はゆっくり眠れ」

「あ、ありがとうございます」

キツネ目も主が楽そうになったのを見て、少し涙ぐんだ。いい主従関係のようだ。

「陛下、このご恩は必ず返させていただきます」

「そうか。なら、一つ頼み事をしようか」

「なんなりと」

「あの隠密を助けてやってくれ」

「かしこまりました」

こうしてマーギンは第二王子と接触し、今後のノウブシルクの道筋が見えた気がしたのであった。

◆◆◆

「えーっ、俺達もそっちに参加させてくださいよ」

再びレーキ討伐に向かった討伐隊。今回は魔狼や雪熊などの魔物が出ると予想されており、魔石鉱山側に向かうのはオルターネン達。橋を渡らず、他の魔物に対応するのはハンナリー隊の軍人達の役目となった。文句を言ったのはラリー達。

「馬鹿者っ。お前達にはハンナリー隊の斥候を任せたのだ。キッチリと役目を果たせ」

オルターネンに不満を言ったのに、ロッカに怒られるラリー達。

「ラリー。功を急ぐ者に最前線を任せるわけにはいかん」

いつもカザフ達が最前線を任され、ラリー達は連れて行ってもらえないことに苛立ちを覚えていた。オルターネンはそれを見抜いていたのだ。

「お前らの実力は最前線を任せてもいいぐらいはある。しかし、自分達の力を誇示したい欲が強すぎる。それが死を招くのだ」

「えーっ」

「ま、気持ちは分からんでもないがな。そのうちお前らにも最前線を任せるから、今回は我慢しろ」

「……分かりました」

「ほなラリー、どんな敵が来るかちゃんと見て来てな。毒持ちやったらはよ教えてな。逃げなあかんから」

「特務隊が逃げちゃダメだろ」

「何言うてんねん。姫さん来てへんねんからしゃーないやろ。死んだら元も子もないんやで」

ラリーはハンナリーのヘラヘラした言い方にイラッとしながら、斥候役をするのであった。

オルターネン達は考えてきたレーキ対策を試す。

まず、オルターネンが土魔法で下が抜けている台を作り、その上に乗る。滑って攻撃をしてくるなら、下を抜けるのではないかと想定した作戦。次は穴を掘り、そこに落とす作戦だ。

「おーい、来るぞーっ!」

バネッサとカザフがレーキをおびき寄せてきた。

台の上に乗って、レーキが来るのを待つ。

シュンッ、シュンッ。

一匹目、二匹目が下をすり抜けていった。が、3匹目が目の前でガッとジャンプするように跳んだ。

「うおっ!」

それを避けるオルターネン達。

「ダメだな。穴に落とすぞ」

と、穴の方に移動すると、ロッカとトルクが台に乗ったままだ。

「早くしろ」

「隊長、試したいことがあります。ここに残ってもよろしいでしょうか」

「気を付けろよ」

そして、次々とレーキが現れた。

ガッ。

先程と同じようにジャンプしてくるレーキ。

「ふんっ。葬らん!」

ガキンっ。

ロッカは対レーキ用の武器、すなわち棍棒のようなものでレーキを打った。

打たれたレーキは穴に向かって飛んでいくが、途中で失速する。

「うむ、あそこまで飛ばすには力が足らんか。ではトルク頼む」

「どこで強化すればいいのー?」

「らん、のところだ」

ロッカは葬らん、葬らん、と叫びながら素振りをして見せる。

「分かったー」

そして、

「葬らんっ!」

ガッキーン。

「葬らん、葬らん、葬らんっ!」

ガッキーン、ガッキーン、ガッキーン。

先程のロッカを見ていたオルターネンは穴の後ろに壁を作り、打たれたレーキが穴を飛び越えないように工夫していた。そして、ロッカに打たれたレーキは壁に当たって穴に落ちていく。

「フハハハっ。見たかレーキ。さぁ、どんどん来いっ」

先程バックスクリーン3連発を放ったロッカはまるでバッティングセンターで遊ぶかのように棍棒を振り続けた。

一方、オルターネンはレーキが来たら土魔法で突起を作り、それに当てて穴に向かって滑らせる。大隊長はヴィゴーレでゴン、ゴンと弾いて穴に落としていた。それを見たタジキは盾でレーキを弾き、穴に落とした。

「うむ、タジキのが正解だな。これで対応できるやつが飛躍的に増える」

オルターネンは他の者でもできる対策を見付けたのだ。

「葬らんっ、葬らんっ、葬らんっ!」

それとは関係なく、楽しそうなロッカ。

「オルターネン、あれをできるやつが他にいるのか?」

大隊長はオルターネンに嫌味を言う。

「あれはトルクとの連携練習だと思ってやってください」

と、オルターネンは目を伏せて答えた。

「葬らんっ、葬らんっ、葬らんっ!」

ロッカはまだ楽しそうだった。