軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見抜かれる

「陛下は医療の知識に明るいのでございますか?」

「いや、本で少し読んだだけだ。昔の仲間がそういうのに詳しかったらしい」

当時は知らなかったソフィの努力。それを知ったのは最近なので、らしいとしか答えられない。

「ほ、他にも何か教えていただくことはございませんでしょうか」

「だから、そんなに詳しいわけじゃないって。それにお前らが何を知ってて、何を知らないとか分からないんだから、教えようもないだろうが」

と、答えると、こういった場合はとか色々と質問されるがさっぱり分からない。

「知らん」

「で、では黒い魔犬がもたらす疫病の治し方は……」

「あれは噛まれないように予防するしかない。感染したら手の施しようがないからな」

「やはりそうですか……」

あれを治せるのはカタリーナだけだ。

「どこかで蔓延しているのか?」

「はい。魔犬ではなく、黒い魔狼が出ているらしく、村人では対応ができません」

「お前ら、貴族相手の医者だろ? なぜ庶民の村のことまで知ってる?」

「私は身分に関係なく患者を診ております。ただ、医者になるまでにある貴族様に援助を受けておりましたので、その恩を返さねばなりません」

この医者はヘラルドみたいな感じなのか。

マーギンにしつこく色々と聞いてきた医者はここにいる他の医者と少し毛色が違うようだ。

「陛下は暴力でいきなり王になられたと伺いました。それなのになぜ、このように孤児を集められたのですか?」

「この国寒いだろ? まともに住むところもない子供なら、凍え死んでもおかしくないからな。たまたま見付けたから連れてきただけだ」

「何かに利用されるおつもりですか?」

「何かってなんだよ?」

「そ、その実験体とか……」

「そんなことするか。読み書きを教えて、将来やりたい仕事を見付けさせてやるぐらいだ」

「やりたい仕事ですと?」

「子供のうちからやりたいことが見つかれば、それに向かって努力できるだろ? やらされる努力より、やりたい努力をしたほうが幸せだ」

そう答えると医者は黙った。

「私はニコラウスと申します。ニコラとお呼びください」

「そうか。ではニコラ、黒い魔狼が出ている地域を教えてくれ」

マーギンは宰相に地図を持ってこさせ、軍の統括も交えて、黒い魔狼討伐の作戦を練るのであった。

◆◆◆

「我が物顔で好き勝手しおって」

元ノウブシルク王は怒りで震えながら、反発する貴族を集めて、マーギンをどうやって殺すか相談をしていた。

「あやつは恐ろしい力を持っているのは確かですが、誰も殺していないところをみると、甘い者のようですな」

「うむ、特に女子供には甘いようですぞ」

マーギンの特性はあっさりと見抜かれている。殺す、処刑するとは言いながら、誰も殺さず、治癒魔法で助かる程度にしか痛め付けていないのだ。それに、他の王族には何もしておらず、追い出しもしていない。その証拠に打ち合わせをしているのは前王の私室だ。

「スターン、お前のところのやつを使えんのか」

「父上、いきなり切り札を使うものではありませんよ。それにまだ完璧とは言えません。一番才能があったやつがいれば良かったんですがね」

「あれか。結局見つからずじまいであったな」

「えぇ、残念ながら、魔物に食われてしまったのでしょう。あれには劣りますが、数は増えましたので、なんとかなりそうです。それより、使い捨てにできるやつらは他にいるではないですか」

「そうじゃな。ではあいつにやらせるか。おい、一番若い女を連れてこい」

そして呼び出されたのは、幼さの残る少女の隠密。

「あのケダモノを始末してこい」

「はっ」

「失敗は許さんぞ。失敗したら貴様の命はおろか……」

「心得ております」

そう言った少女の隠密はメイドに化けて、マーギンに接触を試みるのであった。

◆◆◆

「ロッカ、あなた、いつまで現場をやるつもり?」

星の導き達がカニドゥラックでご飯を食べている。そして、シスコが暗にオルターネンとどうなってるのかを聞き出そうとしていた。

「うむ、トルクとの連携も少し慣れてきてな。本番には間に合いそうだ。レーキ用の武器も親父に作ってもらったからな」

ロッカは次の北の街での大討伐のことを聞かれていると思い、楽しそうに答えた。

「はぁ……花の命は短いのよ」

「どういう意味だ?」

「硬い蕾は咲かぬまま枯れるんじゃないかしら?」

シスコの嫌味の意味が分からないロッカ。

「そうか。この冬は特に寒いからな。春に咲かぬ花も多いのかもしれん」

そして、あまり食べずにチビチビと酒を飲んでいるバネッサ。

「マヨいる?」

三杯酢だから食べないのかと思ったシスコはバネッサ用にマヨネーズを頼んだ。

「これ、甘辛にしたら旨ぇかな?」

「そんな味付けないわよ。マヨも嫌ならそのまま食べなさいよ。塩味付いてるから、カニの甘さだけでも十分でしょ」

「私はカニグラタンをいただきます」

アイリスは我が道を行く。

「で、まだ拗ねてるのあなたは?」

「拗ねてなんかねーよ」

「そのうち戻ってくるでしょ。タイベには顔を出したみたいだけど、そのあとはどこに行ったかマーロック達も知らないみたいだけど」

「タイベにはなにしに行ったんだ?」

「戦艦の軍人達がどうなったか確認しに行ったみたい。軍人達は全員セイレーンに食われたらしいわ」

「全員死んだのか……」

「みたいね。自業自得ってやつよ。気にする必要はないわ」

「茶碗蒸しもお願いします」

アイリスは今日もアイリスだった。

◆◆◆

「お母様、マーギンはいつ帰ってくると思う?」

「どうかしらね。特務隊はスタームとオルターネンに、あなたは信用できる医者のところに預けた。ハンナリー商会は順調、タイベも復興が進んでいる。マーギンさんはこの国でやることを全て済ませてしまったのよ」

「帰ってこないってこと?」

「今は自分にしかできないことをされているんじゃないかしら。そうであれば移動だけでも時間が掛かるでしょ」

「私を連れて行けば、どこにでもすぐに行って帰ってこれるのに……」

「あなたも自分のやるべきことをやりなさい。マーギンさんに甘えてばかりじゃいけませんよ」

「甘えてなんかないもん」

と、カタリーナはぷーっと膨れて王妃の部屋を出て行った。

今年の社交会はあまり盛り上がらなかった。マーギンがいないことで新ネタもなく、王妃の気合も入ってなかったことに加え、戦争準備に入ったからだ。

この数年でマーギンの影響が大きくなったシュベタイン王国。

「お戻りにならないつもりかしらね……」

と、王妃も憂鬱になるのであった。

◆◆◆

「ぶつぶつぶつぶつ……」

ローズは医学の本をずっと読んでいる。どのような症状だと危ないのか、きちんと学んでおかないと治癒する順番を見誤るからだ。

「なるほど。怪我でも見た目だけで判断してはいけないのか」

コンコン。

ドアをノックされても気付かないローズ。

「まだやっているのか?」

「隊長、いきなり入ってこないでください」

「何度もノックしたのに、気付かなかったのはお前だろ? ほら、これでも飲め」

と、オルターネンがハチミツ入りのホットミルクを持ってきてくれた。

「あ、ありがとうございます」

ふーっ、ふーっ。

甘くて温かいミルクが身体と心を癒してくれる。

「美味しいです」

「お前、目の下のクマが酷いぞ。ちゃんと寝ろ」

早朝から剣の稽古、それからカタリーナの護衛と医療関係の手伝い、戻ってからはずっと医療や薬の勉強をしていた。

「いつ何があるか分かりませんから、私は勉強しなければならないのです。私の判断ミスで姫様を悲しませるようなことがあってはなりません」

「そんな調子じゃ、いざというときに役に立たないから寝ろと言っているのだ」

「しかし……」

「お前、マーギンとの護衛訓練を覚えているか?」

マーギンの名前を出されて動揺するローズ。

「ど、どの訓練でしょう?」

「姫様をお守りしながら、西の街に向かった訓練だ。あのとき、マーギンは何をした?」

「こちらを休ませないように、チマチマと嫌がらせを……」

「そうだ。あいつはたった数人で騎士全員を倒すために、俺達に休憩と睡眠を取らせなかった。結果どうなった?」

「……任務失敗に終わりました」

「お前はそれから学んでないのか? 寝不足というのは任務失敗の原因になる。それに勉強しているつもりでも頭に入ってこなくなってるのではないのか? きちんと寝て、頭と身体をスッキリさせた方が勉強もはかどるというものだ」

「しかし……」

「もし、このままの状態だと、姫様が手練れに襲われたら、寝不足のお前は反応が鈍って対応できんぞ。それでもいいのか?」

「よ、よくありません……」

「ではもう寝ろ」

「はい」

オルターネンに説得されてベッドに入るローズ。

「……マーギンは必ず戻ってくる」

部屋を去るときにオルターネンがそう言った。

「えっ?」

「あいつがお前に何も伝えずに消えてしまうとは思えん。きっと厄介なことに首を突っ込んで、抜き差しならんようになってるだけだろう」

「ちい兄様……」

「だから、そう気を張るな。姫様にもそう言って安心させろ。私に何も言わずに消えるはずがないとな」

「はい……ありがとうございます」

オルターネンはローズの部屋を出た。

「はぁ、まったく世話のかかる妹だ」

と、呟いてから自分の部屋に戻ったのであった。