軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

舐めたマネしやがって4

「シシリーさん、シスコさん、お父様とお母様、エアリスをお願いします」

「お母様……」

アイリスは何気なくダニエラのことをお母様と呼んだ。それに気付いたダニエラは両手を口の前に組み、私のことを母と……呟いていた。

「ローズさん、姫様と一緒に孤児院で待っててください」

「アイリス、私も行くわよっ!」

「ダメです。戦場でのんびり治癒している暇はありません。私は孤児院で怪我人の受け入れをしていることを伝えて回ります。安全な場所で治癒をしてください」

「でも……」

「戦場で治癒していたら狙われますよ。私が敵ならそうします。倒した相手が復活してくるのを待ってあげるつもりはありませんから」

淡々とそう言い放ったアイリスにカタリーナは信じられないと言う顔をする。

「アイリス、あなたはいつからそんなふうに……」

「私は特務隊です。実戦現場に出ていると、こういうのが普通になるんですよ。今回の相手は人ですけど、いきなり攻撃を仕掛けてきた敵です。軍人同士の戦いならまだ分かりますけど、一般人、ましてや小さな子供まで戦いに巻き込んだんです。魔物と同じですよ」

こそっ。

(ローズさん、怪我人が運ばれてきたら、誰を優先して治癒するか選別してください。ヘラルドさんが教えてくれた方法でお願いします)

アイリスはローズにそう耳打ちして、戦場へと走っていった。

港街では衛兵やハンターが敵に押されている。魔導銃での攻撃だけでなく、攻撃魔法部隊までいるようだ。

「ファイヤボール!」

パンパンと魔導銃の攻撃に混じってファイヤボールが飛んでいる。

「大丈夫ですか?」

「誰だお前?」

瓦礫の陰で攻撃をしのいでいるハンターらしき男達のところに走り込む。

「私は特務隊のアイリスといいます。怪我した人がいるなら、孤児院で治療しますから、そこに行ってください。場所は分かりますか?」

「あぁ、分かる。しかし、ここから出たら狙い撃ちされちまうぞ」

「私が援護しますから、早く」

「お前が援護って……」

「いたぞっ! ファイヤボール!!」

ぼひゅっ。

瓦礫の裏に隠れているのを見付けた敵兵がファイヤボールを撃ってきた。

《ファイアバレット!》

ズババババ。

敵のファイアボールをファイアバレットで迎撃するアイリス。

「さ、今のうちです」

「わ、分かった」

怪我人を担いで移動する男達を見届けたあと、

「敵兵さん、間違っていますよ。さっきのはファイアボールじゃなくて、ただの着火魔法です」

「なんだとっ!」

「火魔法での攻撃はこうするんですよ」

《ファイアスライム!》

ボホボボボボと、バレーボールほどの大きさのファイアスライムを大量に出した。

「なっ、なんだこいつは……」

「ファイアスライムちゃん、やっておしまいなさい」

地面をずぞぞぞぞと這うファイアスライム。

「うわっ、うわぁぁぁ」

《カエンホウシャ》

ゴゥゥゥッゥッ。

ファイアスライムを従え、ドラゴンがファイヤブレスを吐くような感じでカエンホウシャを出して敵に向かって歩くアイリス。

「ばっ、化け物だぁぁ、逃げろおぉ。こんなのがいるなんて聞いてねぇぞっ」

《スリップ!》

ズルん、ベシャっ。

慌てて逃げようとした敵兵をスリップでこかせてから、ファイアスライムを足に纏わりつかせる。

「うぎゃぁぁぁっ」

その場でゴロゴロと転げて火を消そうとするが、ファイアスライムは離れも消えもしない。

「キャーハッハッハ。そんな簡単に消えるわけがないのです」

逃げ惑う敵兵を笑いながら次々と同じ目に合わせていくアイリス。

「お前、中身マーギンじゃねぇだろうな?」

スッと背後からきたバネッサ。

「バネッサさんは戦ってないんですか?」

「うちは隊長とロッカの援護を任されてたんだけどよ、必要ねぇわ」

「じゃ、共闘します?」

「そうだな。敵が散らばってんのが面倒だからよ。海の方に集められるか?」

「了解です。地引き網みたいな感じでいいですか? バネッサさんは味方や一般の人をその網から逃がしてください」

「は? どういう意味だ?」

「はい、こうするんです」

《ファイアウォール!》

ゴゥゥゥッゥッと、1mほどの高さの炎の壁を漁船が網を広げるように伸ばしていく。

「これで追い込みます。隊長達はどの辺にいますか」

「海の方だ」

「じゃ、そっちに追い込んだら、始末してくれますね。この炎は見た目ほど熱くないので、急いですり抜けてもらってください。孤児院で姫様が治癒してくれますから」

「わ、分かった」

こうしてアイリスは敵兵を一網打尽にするためにファイアウォールを広げていくのであった。

◆◆◆

「魔導砲の操作方法を教えろ」

「ヒッ……」

マーギンは大型船の魔導砲のところで、砲兵に扱い方を尋ねる。

「早く言え」

ガタガタガタ。

「ちっ」

ボキッ。

「うぎゃぁぁっ」

怯えて動けない砲兵の肩に手を置き、親指で鎖骨を折る。

「お前は喋れるな?」

「ヒィィィ」

ボキッ。

軽くパラライズを掛けられているので、その場から逃げ出すことはできない砲兵達。操作方法を説明できる者が出てくるまで、順番に鎖骨を折られていく。

そして5人目がなんとか説明できた。

「あとどれぐらい撃てる?」

「あと、10発ずつは大丈夫かと」

砲身は20発ぐらいで限界がくるらしい。バカスカ撃ってこないのはそのせいか。

ここの用事は済んだので、次は船長室に向かった。

パンパンパンっ。

船長室の扉を開けるなり魔導銃を撃ってくるが、当然プロテクションに阻まれる。

ガチっ、ガチっ、ガチッ。

弾切れをおこしても、引き金を引き続ける船長。

バキっ。

マーギンは無言で殴る。

「ぐふっ」

倒れた船長の顔を思いっ切り蹴り上げ、ヒールを掛ける。それを何度も繰り返した。

「た、たふけてふだふぁい……」

ガッ。

折れた歯は治癒魔法では元に戻らない。顔面を蹴られた激しい痛みが何度も襲うが、気絶もさせてもらえず、治癒されては蹴られが続き、船長の心は折れた。

「海図を持ってこい」

全く抵抗せずに海図を持ってくる船長。

渡された海図はかなり詳しい。シュベタインより、ノウブシルクの方が文明が進んでいるのがこれだけでも分かる。

なるほど、ノウブシルクの王都から海側に流れる大きな河があるのか。そして、王都近くに港がある。

「この船はこの河の港に入港できるのか?」

「ほぉおほは商船用の港でふ」

「ということは軍港があるのか?」

と、聞くと、地図には載ってない場所を示した。

「ここには軍港以外に何がある」

「研究所がありまふ」

「兵器のか?」

と聞くと、頷いた。

「しばらくここで寝てろ」

マーギンは船長にパラライズを掛けて、大型船をあとにする。マーロック達のことが気になっているのだ。

海面をホバー移動して、貨物船まで飛ばし、プロテクション階段を使って乗り込んだ。

「なっ、なんだてめぇ……って、マーギンか?」

マチョウマントと顔を隠している得体のしれない者がマーギンと気付いたマーロック。

「知られちゃいけないから、気付かなかったことにしといてくれ。それより戦況は?」

「膠着してる。まだ向こうの船にたんまりと敵が残ってるぞ」

「了解。とりあえずこの船を敵船から離すから、クックに船の操船を頼んでくれ。マーロック達はアニカディア号に戻って小型船の始末を頼む。俺は今から敵船に乗り込んでくる」

「1人でか?」

「人間なんか何人いても相手にならんよ。それより、お前、肩をやられてんじゃねーか。弾は抜けてるか?」

「どうだろうな」

マーギンは痛み止め魔法を掛けてから、傷口に指を突っ込む。

ゴリ……

「弾がここにあるな。ちょっと切るぞ」

ナイフで傷口を切って広げて弾を取り出す。ジョボボボと水でしばらく傷口を洗ってから治癒魔法を掛けた。

「もう大丈夫だ。じゃ、頼んだぞ」

そう言って敵船に乗り込んでいった。魔導銃の音がしばらく続いたあと、静けさが戻る。

「頭……さっきのは親分で……」

「誰も知らない、知られちゃいけないってやつだ。あれは魔王ということにしとけ。クックにもう少ししたら強風が吹くから、船を後退させるチャンスだと伝えてこい。お前が戻ってきたら、俺達はここから退避する」

「了解っす」

マーギンは敵にパラライズを掛け終わったあと、強風を吹かせて、元貨物船を引き剥がしたのであった。