軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パンジャの最終日

「たっだいまー!」

マーロックがカタリーナを連れて戻ってきたのは夕暮れ前。すでに皆も水着から服に着替え終わったあとだ。

「お前、顔が真っ赤に焼けてるぞ。痛くないのか?」

「シャランランするから平気」

ローズも真っ赤だ。可哀想に。

「マーロック、出して、出して」

マーロックがマジックコンテナから出したのは大量のキス、メゴチ、ベラ、小型のタコなど。なかなかの良型揃いだ。

「たくさん釣ったな」

「でしょー。これ何にしてくれる?」

「天ぷらが王道だな」

「じゃ、お願いね」

領主邸のキッチンで解体魔法を使い、処理していく。晩飯はこれで十分だ。

天ぷらは揚げたてが一番だから、皆の前で揚げるか。

「ここで揚げるのかね?」

「揚げたての方が旨いですからね。エアリス、油が跳ねるかもしれんから、覗き込むなよ」

「うん」

しょわわわと天ぷらを揚げては皆の前にひょいひょいと置いていく。これをキンキンに冷やした冷酒で楽しみたまへ。

「おいしーーっ! こんなふわふわのお魚初めて食べた」

エアリス大喜び。キス天は旨いからな。

「私が釣ってきたのよ」

とフフンするカタリーナ。

「カタリーナお姉ちゃんすごーい」

カタリーナ、褒められてご満悦。

メゴチの天ぷらも旨いし、タコ天も好評。で、ベラはちょいとクセがあるので、カレー風味にしてある。

「おっ、カレー風味の天ぷらも旨いな」

マーロックはカレー風味で食べるのが初めてのようだ。これはなんかの漫画で読んだやつだ。

「ローズ、キスやメゴチの天ぷらは嫌いか?」

野菜、タコの天ぷらは食べているが、キスやメゴチ、ベラは食べてないのだ。

「き、嫌いというわけではないのだが……」

「ローズはね、これを釣るのに使った虫がダメなんだって」

「マーロック、これは虫餌で釣ったのか?」

「違う、ゴカイだ」

なるほど。ローズがダメなやつだな。

「ローズ、ゴカイを食ってたからといっても、ゴカイを食うわけじゃないぞ」

「分かっている。分かってはいるのだ。しかし、持ったら勝手にプチッと千切れてウニョウニョするし、か、か、か、噛むのだぞ」

カタリーナに餌を付けてと言われたローズは必死に耐えて頑張った。しかし、プチッ、ウニョニョニョと暴れるゴカイに悶絶し、頭を持ったら噛まれて、いやーーーッ! と手を振って海の中に落とすを繰り返したらしい。見かねたマーロックが餌を付け、釣れた魚を外していたようだ。なんちゅう大名釣りだ。

一度ダメと思うと、心理的にダメなのかもしれん。アイテムボックスの中からタイを出してローズ用に天ぷらにしてやる。

「ほら、これなら食えるだろ?」

「これは何の魚だ?」

「タイだよ。俺はキスの天ぷらの方が旨いと思うけどね」

「いや、フワフワで美味しいぞ」

「ローズだけ特別扱いすんのズルいじゃねーかよ」

まったくこいつは……

「まだまだ食えるか?」

「食える」

というので、甘辛味の出汁を作って天丼にしてやる。

「全部食えよ」

「旨えっ!」

全部食えるのか? という心配をよそに、ガツガツと平らげた。

皆が食べ終わったあと、自分用に少し揚げて酒を飲み、シメは天ぷら茶漬けにする。それ食ったあとに、マーロックが中骨をつまみに揚げてくれたので、飲み直し。オルターネンも参加した。

「お疲れさん」

「マーロックこそ、カタリーナのお守りありがとうな」

「ま、あれだけ楽しんでくれりゃ、餌つけた甲斐もあるってもんだ」

と、マーロックとオルターネンと3人で乾杯しようとすると、

「マーギンくん、非常に美味かったぞ」

と、エドモンドも参戦。高そうなウィスキーと水割りのセットを持ってきてくれた。

中骨の唐揚げとウィスキーの水割りって合うんだな。いい組み合わせだ。

「キスの天ぷらって旨いですよね」

「その割にはあまり食べてなかったではないか」

「自分で揚げてると、なんかお腹いっぱいになってくるんですよ。人に作ってもらう方がいいですね」

「そうか、いつも何もかも任せてしまって、すまないね」

「別にいいんですよ。毎回こんなんですし」

と、男同士で飲んでると、カタリーナとバネッサがチラチラ見ている。ちょっと遠慮してるのだろう。

中骨の揚げたやつを甘辛の味付けでフライパンで炒める。子供用のオヤツとして食うがいい。

「アイリス、これをそっちで食え。カルシウムたっぷりだから身体にいいぞ」

「わー、美味しいです」

ダニエラ夫人、シシリー、シスコは仕事の話でもしてるのか、真面目そうな顔で話している。他の女性陣は甘辛中骨をオヤツとして食べている。

男達は酒談義だ。エドモンドが出してくれる酒はいつも旨いので、どこで仕入れてるのかの話になる。と、マーロックが何かを思い出したように、膝を手で叩いた。

「そうだ。今度、海の中で寝かせた酒をもらってきてやる」

「海の中で寝かせた?」

「そうだ。少し離れたところに島があってな。そこの島のやつらが作ってる酒は洞窟の中の海で寝かせてるんだとよ。なんかこう、まったりとした旨い酒だったぞ」

「へぇ、島なんかあるんだな」

「島の中だけでほそぼそと暮らしている連中だからな。島の近くに増えてきたソードフィッシュを俺達が狩ったら、礼だと飲ませてくれたんだ。売るほどはないけど、飲む分ぐらいならくれると言ってたぞ」

「へぇ、飲んでみたいもんだ」

「明日、ここを発つんだろ? ちょいと覗いてみるか?」

「そうだな。それもいいな」

「ロッカ、向こうに行きたいなら行きなさいよ」

オルターネン達の方をチラチラと見ていたロッカ。

「い、いや。男同士で飲みたいみたいだから、遠慮しておこう」

「なら、ロッカが混ざっても問題ないんじゃないかしら?」

しれっと酷いことをいうシスコ。しかし、ロッカは怒らない。

「ロッカの目当ては隊長? それともお酒?」

と、シシリーがどちらが目的か聞く。

「あの酒が美味そうだなと思ってな」

「あー、あのお酒ね。もらってきてあげようか?」

「いいのか?」

「1杯ぐらいなら問題ないと思うわよ」

と、シシリーがロッカの分の酒をもらいにいった。

「1杯いただけないかしら?」

「そちらも飲みたいかね。気付かなくて悪かったね。これで良ければ持って行きなさい」

「よろしいのですか?」

「構わないとも」

と、ボトル半分ほど残ったものを渡したエドモンド。こちらはマーロックが話した酒の方に話題が集中し、焼酎へと酒が切り替わっていたのだ。

「残ってた分、全部いただいちゃった」

と、恐縮気味のシシリー。

「旨いぞ、この酒」

コップにじょぼぼぼといれて、ストレートで飲んだロッカ。

「そうでしょうねぇ」

「ん? これは有名な酒なのか?」

「有名というか、手に入りにくいお酒ね」

「さすがは領主様だな。そんな酒でもポンと飲ませてくれるのだから。高いだろうな」

「そうね。今の1杯で5万Gくらいよ」

「この1杯で……?」

「お店で飲んだら30万Gぐらいは取るかしら。少しずつ味わうように飲むお酒よそれ」

「ほら、やっぱり男らしいじゃない。そんなお酒をあんなにいれて、一気に飲むなんて」

シスコにそう言われて、何も否定できないロッカなのであった。

翌日、シスコとシシリーはエドモンド達と馬車で領都に戻るらしい。仕事の話をするのだろう。残りのメンバーは離れ島に寄ってから領都に戻ることに。

「どれぐらいの距離がある?」

「半日ってところだ」

このスピードを出してて半日か。結構な距離だな。

カタリーナがトローリングしたいと言い出し、マーロックが仕掛けを流してやる。

「マーギン、気持ち悪ぃ」

波が結構高いので、船酔いでバネッサがダウン。ローズも船がダメなはずなのに、カタリーナが大物と戦っているのをサポートしているおかげか、酔ってはいないようだ。ロッカもダウンしてるな。

「隊長は平気?」

「前までは酔ってたが、今は平気だ」

ロッカがオルターネンにもたれ掛かっているからかもしれん。バネッサもマーギンにもたれかかっている。

「ロッカ、バネッサ。うしろを向け」

と、2人をうしろ向かせて、背中に氷水をびしゃっと入れてやる。

「「ぎゃーーっ!」」

「マシになったろ?」

「えっ、あ。本当だ」

「それでしばらく大丈夫だ。船の動きを足で吸収するように立て。それで遠くを見ろ」

と、アドバイスをしたことによって、2人の船酔いはマシになったのであった。

そして、カタリーナがマグロを釣り上げたあと、ローズが船酔いでダウン。

「姫様、シャランランを……シャランランを……ウップ」

「ダメ。マーギンに介抱してもらうチャーンス!」

船酔いしている人にとって、もはやそんなことはもうどうでもいいのだ。

「殺生です……早く、早くシャランランを……」

「マーギン、マーギンっ! ローズが気持ち悪いって」

「シャランランしてやれ」

「効かないの。だから早く!」

シャランラン、シャランランをと手を伸ばすローズ。もう限界が来ているのだ。

「ローズ、大丈夫か?」

真っ青な顔のローズ。

マーギンはローズをぐるっとうしろを向かせて、氷水をジャバジャバジャバー。

「キャーーーっ!」

「それでしばらく大丈夫だ」

カタリーナは釣りをしながら、バネッサがマーギンにもたれ掛かっているところだけを見ていた。それでローズも同じようにと思ったのだ。

「マーギン、酷いではないかっ」

「でも治ったろ?」

「え、あ、本当だ……」

「少しの間だけ効果があるから」

「う、うむ。ありがとう……」

と、言いながら、ローズはモジモジした。

「どうしたの?」

その様子を見たカタリーナ。

(そ、そのパンツまでびしょびしょになったので、その……気持ちが悪く……)

「脱げばいいじゃない」

「姫様っ、声が大きいですっ!」

目の前でやるものだから、なんのことか分かってしまったマーギン。温風を出して乾かしていく。しかし、乾いたころにまた気持ちが悪くなるので、氷水を入れて、また乾かすを繰り返す。

結果、島に到着するまでマーギンはローズに付きっきりになったのだった。