軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過呼吸

朝起きるとバネッサは昨日のことを覚えていなかった。そんなに酔ってたのだろうか?

エドモンド達はまだ到着しないので、海の家で飯食ったりカキ氷を食ってまったりする。

「頭がキーンってするっ」

カタリーナがカキ氷をがっついてやられている。

「ぬるい水飲め」

と、マーギンがぬるま湯を出してやり、それを飲んでまたがっつく。

「ねぇ、マーギン。冷たい食べ物って、カキ氷ぐらいしかない?」

と、シシリーが新商品に何かないか聞いてくる。

「うーん、アイスやソフトクリームとかになるけど、ソフトクリームの魔道具は作ったことないな」

「アイスかぁ。なんかいい方法ないかしら?」

「即席で作るやつなら何とかなるぞ」

「どうやるの?」

「鉄板焼の鉄板はあるか?」

「それがあるとできる?」

「仕組みは簡単だからな。試しにフライパンで作ってみようか?」

と、大きめのフライパンを魔道具に加工していく。鉄板がマイナス30度ぐらいになる仕組みだ。

「ここに砂糖を溶かした牛乳と刻んだフルーツを入れて、コテ……ヘラか、まぁいい。こいつでこうしてな」

と、チャッチャッと刻みながら混ぜていく。そして固まってきたら、こそいでくるくっとな。

「はい完成」

と、シシリーに試食させる。

「あ、美味しい」

「コクが欲しけりゃ生クリームと卵黄を加えればいいけど、手間暇と時間が掛かるからな。海の家ならこれでいいんじゃないか」

「そうね。これなら原価も安いし」

「うちにも作ってくれよ」

と、バネッサが希望すると、皆食べたいと言い出した。

「フルーツは何がいい?」

「うちの好きそうなので」

パイナップルと……あ、あれを入れてやろう。

前にピアンが教えてくれたチョコみたいな味のする実を出して混ぜていく。

「ほらよ」

「なんか茶色いの入ってるぞ」

「それも果物だ。嫌いなら抜いてやる」

「おっ、旨ぇ」

「次は私っ!」

「カタリーナはあとだ。さっきカキ氷をがっついただろ。お腹痛くなるぞ」

「シャランランするから平気」

ったく、そんな使い方すんな。

カタリーナにはサモワンとバナナ。ローズも同じものでいいか。

「アイリスはハンバーグを入れてやろうか?」

「いいですよ」

やめろ。ハンバーグにもアイスにも失礼だ。

アイリスにはバナナとチョコみたいな実。

「ロッカはどうする?」

「そうだな。変わった味のものがいい」

ウイスキーとシナモンパウダーを加えて大人味で作る。オルターネンも同じものだ。

「私は……」

「シスコのはこれだな」

と、スーッとする草を混ぜる。

「あ、スッキリして美味しい」

「マーロックも食うか?」

「もらうぞ」

バナナでいいか。

と、全員分作り終えた。

「なるほどね。混ぜるものを選んでもらえばいいのね」

「ミルクだけを基本にして、オプションで好きな具を選んでもらえばいいんじゃないか」

「分かったわ。鉄板用意するからよろしくね」

こうして海の家が充実していくのである。

エドモンド達が夕方前に到着したとの知らせが入り、とりあえずマーギンだけが会いに行った。

「マーギンくん、アイリスを連れて来てくれてありがとう」

「一応、会うとは言ってますけど、どんな態度を取るかは分かりません。ダニエラ夫人。アイリスが失礼な態度を取るかもしれませんがよろしいですか?」

「それは覚悟をしております」

「マーギンっ!」

応接室に入ってきたのはエアリスだ。

「おう、元気してたか?」

「うんっ。もらったこれで色んなものを見てた」

と、単眼鏡を見せてくる。

「そうか。でも海でそれを使うなよ。目が焼けるぞ」

「そうなの?」

「海は日差しが強いからな。森の中とかで使え」

「はーい」

と、返事したあと、ちらっと上目遣いになる。

「ねぇ、お姉ちゃんが来てるって本当?」

もう話したのかと確認する意味でエドモンドを見ると頷いた。

「来てるぞ。会いたいか?」

「うんっ。お姉ちゃんがいるなんて知らなかったから、すっごく楽しみ」

エアリスは複雑な事情を知らない。一人っ子だと思ってたのが、姉がいると聞かされて素直に喜んだのだ。

アイリスは義母を見たら顔がこわばるかもしれない。それを何も知らないエアリスに見せていいものだろうか?

「領主様。エアリスと一緒にアイリスを迎えに行ってきます」

「エアリスを連れて行くのかね?」

「ダメですか?」

と、マーギンがエドモンドを見つめると、思惑を理解したようだ。

「では頼みます」

「はい。じや、エアリス、肩車してやろうか?」

「肩車?」

肩車をしてもらったことがないエアリスは不思議そうな顔をする。

「肩車ってのは、こうするんだ」

マーギンはエアリスをひょいと持ち上げて肩に乗せる。

「わぁーっ、たかーい」

「落ちないように頭に掴まっとけ」

エアリスはキャッキャとはしゃいでマーギンの頭にしがみついた。

「しゅっぱーつ!」

「おー!」

エアリスを連れて出ていくのを見送ったエドモンドとダニエラ。

「エアリスがあんなにはしゃいで大丈夫かしら?」

「マーギンくんなら大丈夫だろう。しかし、彼はすぐに子供に好かれるのだな」

「え、えぇ。いつもは大人しいエアリスがあんなに嬉しそうにするなんて」

「マーギン、どこまで行くの?」

「海の家に皆がいる。そこに向かってるぞ」

「皆? お姉ちゃんってたくさんいるの?」

「本当のお姉ちゃんは1人だけだ」

「偽物のお姉ちゃんっているの?」

「偽物というわけじゃないぞ。血の繋がりがあるお姉ちゃんが1人だけということだ」

まだ小さいエアリスには意味がよく分からなかった。

「アイリス、連れてきたぞ。お前の弟だ」

「あっ、はい……」

「マーギン、あの人がお姉ちゃん?」

「そうだ。アイリス姉ちゃんだ」

肩車からおろしてもらったエアリスは、アイリスに初めましてお姉ちゃん、と挨拶をしていた。

「アイリスです。よろしくね、エアリス」

「なんだよ。アイリスに弟なんていたのかよ?」

「離れて暮らしてたから、初めて会うんだ」

「バネッサ、ちょっとこっちにきなさい」

シスコに呼ばれて、邪魔するなと言われる。

「アイリス、エアリスはお前に会うのが楽しみだったんだとよ」

「えっ? 楽しみにしていたんですか……」

戸惑うアイリス。

「そうだ。家には大人しかいないんだろ。一緒に遊んでやれ」

エアリスもアイリスが戸惑っているのを感じ取り、マーギンの顔を見上げる。

「ったく、しょうがないな。エアリス、お前冷たいお菓子は好きか?」

「冷たいお菓子?」

「そうだ。食ったことないなら作ってやろうか?」

「た、食べたいです」

「だとよ。アイリス手伝え」

と、アイリスに作らせることに。具材は王道のパイナップルとバナナだ。

材料はマーギンが投入し、アイリスがカチャカチャと混ぜていく。

「わぁ、固まっていく」

「もう少しで食べられるからな。アイリス、具材をもう少し細かく刻め」

そしてできたものを食べさせてみる。

「つめたーい。あまーい」

喜ぶエアリス。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

屈託のない笑顔でお礼を言われたアイリスの心がアイスのように溶けていく。

「どういたしまして」

「じゃ、それ食ったら領主様のところに戻るぞ」

「マーギン、晩ごはんはどうするつもり?」

「コテージで食うか。領主夫妻も連れてくるから」

「じゃ、用意しておくわね」

と、シシリーに手配を頼んだ。エアリスを肩車してやろうかと思ったら、アイリスと手をつないで行くらしい。

「2人で行くか?」

「ダメですよ。マーギンさんも来て下さい」

と、エアリスの反対の手を繋がされる。2人に手を繋いでもらったエアリスはとても嬉しそうだった。

「戻りました」

「お父様、お母様、お姉ちゃんを連れて来たよ」

と、エアリスが叫ぶ。

「アイリス。よく来てくれた。これが妻のダニエラだ」

「アイリスさん、ダニエラです。いつぞやは申し訳ありませんでした。本当に申し訳ないことを……」

謝罪から入ったダニエラ夫人。

しかし、アイリスはあのときのことがフラッシュバックして、過呼吸気味になる。

「大丈夫かアイリス」

それに気付いたマーギンはアイリスに近寄る。するとアイリスはマーギンにしがみついて息をはーっはーっとした。

「ア、アイリス」

スーハー、スーハー。

そして、深呼吸代わりにマーギンの匂いを嗅いで落ち着こうとする。

「ハンバーグ……ハンバーグ……ハンバーグ……」

アイリスはあの日の夜、マーギンが作ってくれたハンバーグの美味しさを頭の中で鮮明に蘇らせる。

そして、心が壊れかけたときからずっと自分を支えてくれたマーギン。あのベッドで眠ると、自分を包みこんで守ってくれているように感じて安らぎを覚え、安心して眠れる感覚を身体に巡らせた。

「ありがとうございます。もう大丈夫です」

と、マーギンを見上げて微笑んだ。

「無理すんな」

「本当に大丈夫です」

「しんどくなったらちゃんと言えよ」

「はい。ありがとうございます」

と、落ち着きを取り戻したアイリスは、ダニエラにちゃんと挨拶ができたのだった。