軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前触れなし

「お母様、なにか言ってた?」

「王妃様には色々と助けてもらって感謝してる」

「お母様、マーギンには優しいもんね」

と、他の人には怖いと想像できる言い方をするカタリーナ。

「明日、知り合いの医者のところに行くから、今日は解散だ」

「えーっ。マーギンと遊べると思って予定入れてないのに」

「遊べるって、何するつもりだったんだよ?」

「魔木の実を採りに行こうよ」

「魔木の実か……」

そう言えば、マギュウのストックもほとんど残ってなかったな。

「特務隊で行ける人を誘って行こうか」

「うん。じゃ、訓練所に行こ♪」

と、訓練所に移動。

特務隊は各地に討伐に出ているらしく、人数が少ないので、訓練所にいたオルターネンとロッカに声を掛けてみる。

「マギュウ狩りか。いいぞ」

「隊長が離れていいの?」

「構わん。冬の討伐で皆もかなり成長したからな。今は落ち着いている」

「ならいいか」

結局、一緒に行くのはオルターネンとロッカだけ。2人にたくさん狩ってもらおう。

マギュウの居場所に階段を作ったままなので、スムーズに現場に到着。

「おー、いるいる」

いつものように、魔木の下に群れているマギュウ。狩り尽くしても、リポップするかのごとく元に戻っている。こんなのを知ったら、畜産している人は馬鹿らしくて廃業するかもしれん。

「好きに狩っていいのか?」

「肉の確保が目的だから、切り刻むなよ」

「うむ、それは心得ている」

ロッカも吹っ切れたのか、前のように落ち込んだ様子はない。オルターネンもいつも通りだ。

オルターネンとロッカは単独、マーギンはカタリーナとローズとセットになり、それぞれ別の群れを狙う。

《パラライズ!》

マーギンは狩りをするというより、作業だ。だいたい魔木1本にマギュウ3匹が着いているので、そっと近づき、痺れさせてから頭をストーンバレッドで撃ち抜く。そのあとは解体魔法で処理してから収納。

「ほら、魔木の実を採ってこい」

カタリーナをヤシの実を取る猿のように扱うマーギン。

最近木登りをしてなかったとはいえ、散々しごかれたカタリーナはひょいひょいと登った。

「えいっ、えいっ!」

聖杖エクレールで魔木の実を突いて落とす。そんな使い方してやるな。

「受け止めてね。エイっ!」

ムササビのような体勢で飛び降りてくるカタリーナ。避けてベチャをするのはさすがに可哀想か。

マーギンはカタリーナを受け止めて、ゴロンゴロンと転がる。飛び降りてきた人を受け止めるのは危ないのだ。

「飛んでくんな。危ないだろうが」

「ケガしたら、シャランランしてあげるから大丈夫」

全くしょうがないやつだ。

クンクンクンクン。カタリーナは魔木の実を拾って、早速嗅ぎだした。マーギンもクンクンしてみる。

「お前がシャランランしたあと、こんな感じの甘い匂いがするんだよ」

「そうなんだ。今は?」

クンクン。

「まぁ、別になんとも」

カタリーナを嗅ぐマーギンに眉を顰めるローズ。

「じゃあ、ロー……」

「嗅がれたくありません」

ローズは嗅げと言いかけたカタリーナに食い気味に断る。誰しも嗅がれたくはないのだ。

落とした魔木の実を全部拾ってから、オルターネン達の方へ移動すると、首を斬られたマギュウが木の近くに倒れている。スパッと斬られているのはオルターネンだな。で、次の木の下は首の骨までぶった斬ってある。これはロッカだろう。

サルリーナに魔木の実を採らせている間にマギュウを処理して収納をするのを夕方まで繰り返していった。

「お前なぁ、帰りのことも考えておけよ」

魔力切れで立てなくなっているロッカ。

「自分の魔力の少なさが恨めしい……」

立ち直ったかのように見えてたけど、そうじゃなかったみたいだな。あの骨までぶった斬る倒し方は、ストレスを発散していたのかもしれん。

「誰がロッカを背負って帰るのだ? マーギンか?」

と、ローズが聞いてくる。

「隊長に決まってんだろ」

と、罰ゲームを押し付けるような感じで言ったが、オルターネンは別に嫌がることもなくロッカを背負い、ロッカも素直に乗る。

「私もおんぶ」

それを見たカタリーナがマーギンに甘える。

「歩きなさい」

「えーっ」

「なら、ローズに頼みなさい」

「姫様、どうぞ」

と、カタリーナをローズに押し付ける。

カタリーナはローズにおんぶしてもらいたかったわけではないのだが、ローズがニコニコしながらしゃがんだので、断れなかった。

ゴシゴシ。

「姫様、何をされているのですか?」

「ローズも甘い匂いにしてあげる」

背中に魔木の実をローズにこすり付けているカタリーナ。

「マーギン、嗅いでみて」

「マーギン嗅ぐなっ」

嫌がるローズを見たマーギンは嗅ぐ真似をすると嫌がって走る。それを追いかけるマーギン。まるで砂浜でキャッキャウフフと追いかけっこをするカップルのようだが、実際にはカタリーナを背負って走らされている訓練のようなものだ。

「元気なやつらだ。ま、姫様は軽いからローズにはちょうどいい訓練だな」

「私は重くて申し訳ありません」

カタリーナと比較されたと思ったロッカ。

「重くなどないぞ」

「し、しかし……」

「では、こっちも走ろう」

と、オルターネンも走った。

むにょんむにょんむにょん。

お互いそれに気付いているが、前ほど照れることもなく、そのまま走るのであった。

「えー、今日マギュウ狩りに行ってたのかよ。それなら言っといてくれよな」

訓練所に戻るとカザフ達も戻ってきていた。自分達もマギュウ狩りに行きたかったらしい。

「なんだよ、シスコも連れてきたのか?」

「悪い?」

バネッサにツンするシスコ。

焼肉パーティになるだろうから、訓練所に戻る前にシスコも誘ってきたのだ。

「タジキ、これは隊長とロッカが狩った分だ。お前が持っとけ」

と、大量のマギュウを渡しておく。

ハンナリー軍団は早速ラリパッパを掛けてもらったのか、揃って歌いだしてしている。

「うぃーうぃーうぃーうぃー、マッギュウッ♪」

ドンドンパッ、ドンドンパッと足踏みをして手を叩く軍人達。数カ月ぶりのマギュウパーティーにテンションマックスだ。

マーギンは大隊長とオルターネンと食うことに。

「マーギン、ロッカの魔力はもうどうにもならんのだな?」

ジュウジュウとマギュウから滴り落ちる脂が旨そうな匂いと音を奏でるなか、オルターネンは渋い顔だ。

「ロッカ自身の魔力はね。それと、魔力を節約するのも下手なんだと思う。要所要所で使えば、今日ぐらいの狩りで立てなくなるほど魔力は使わないと思うんだよね」

「ロッカは器用な方ではないからな」

不器用をソフトに言い換えるオルターネン。

「マーギン、ロッカに教えてやらんのか?」

ソースに感謝しながら、大隊長が他の人に身体強化を掛けてもらう方法のことを言う。

「隊長が必要だと思うのなら、それとなく教えてあげたら?」

「トルクとコンビを組ませる方法か」

「そう。俺は個人で強くなりたいと言ったロッカには向かない方法だから言わないけどね」

「お前はおせっかい焼きのくせに、ときどき変なこだわりを持ち込むな?」

そんな言い方すんなよ。

「個人で強くなりたいというのは自己満足の世界だろ? 強くなりたい目的が敵を倒すためとかなら教えてもいいんだよ。というか、それならもう教えてる。でもそれじゃ自己満足の欲求が満たされないと思うんだよね。ま、これは俺の考え方だからロッカは違うかもしれない。どうするかは隊長が判断して。トルクにはゴルドバーン遠征で、やり方を教えてあるから」

「そうか。なら俺が話をしよう」

オルターネンが真剣な顔をしている隙にバクバクと食っていくマーギンと大隊長。肉を赤ワインで胃に流し込んでいく。

「俺にも寄越せ」

「セルフサービス。好きな部位を自分で焼いてください」

マーギンは今、タンとハラミを塩ニンニクで焼いている。大隊長はカルビのタレだ。

「それはなんだ?」

「秘密」

ごま油で和えた白髪ネギをタン塩で巻いて食う。たまらんねこれ。

見よう見まねで同じものを焼きはじめたオルターネン。そんなに焼いたら旨さ半減だぞ。

次は甘醤油に漬けた薄切り肉を炙り、溶き卵にからめて食べる。すき焼き風焼肉だ。これもたまらんね。

「うちにもそれくれよ」

「わぁぁぁっ。驚かせるな」

油断してウマウマと食ってたら、いつの間にかバネッサがうしろにいた。

「ほら、これを持ってけ」

甘醤油に漬けた薄切り肉と卵を渡す。

「焼いてくれねぇのかよ?」

「ロッカとシスコと食え。揃って食うの久しぶりだろ?」

「ちぇっ」

そう言うとバネッサはマーギンに焼いてもらうのを諦めて、ロッカ達のところに戻った。

さて、もう一度白髪ネギのごま油和えをタンで……あれ?

「白髪ネギは?」

「食ったぞ」

貴様……

バネッサをかまっている間に食われてしまった。もう白髪ネギを作るの面倒だな。シマチョウでも焼くか。

どっちゃりと網にのせると、もうもうと煙を上げるホルモン。

「ゲーホッゲホゲホ。マーギン、煙いぞ」

白髪ネギを食い尽くされた仕返しに、こっそりと風魔法でオルターネンの方に煙をやるマーギン。大隊長も無意識で煙を自分の方へ来ないように風魔法を使っているので、全ての煙がオルターネン方に行くのだ。

「こうやって煙まみれで焼くのが旨いんだよ」

これはハイボールで頂きましょう。

「旨いっ!」

大隊長も濃い目のハイボールとホルモンを気に入り、オルターネンもこの組み合わせを気に入ったようで、自分のところに煙がくるのも気にせずに追加を焼き、男3人でワイワイ喋りながら食って飲んでをしたのだった。

そして、宴会も終わり解散となったあと、

「ちい兄様、勇者になる?」

マーギンは何の前触れもなく、オルターネンにそう聞いたのだった。